2026.10.10

年齢とともにイライラが増えたのはなぜ?男性更年期とテストステロンの関係

カテゴリ: 健康通信
年齢とともにイライラが増えたのはなぜ?男性更年期とテストステロンの関係

「以前なら気にならなかったことに、なぜかイライラしてしまう。」
「家族や職場の人に強く当たってしまい、後になって自己嫌悪になる。」
「最近は何をするにも意欲が湧かず、自分でも以前とは違うように感じる。」

年齢を重ねるにつれて、このような感情の変化を感じる男性がいます。単に「短気になった」「性格が変わった」と考えてしまいがちですが、その背景には身体の変化が関係していることがあります。

その一つが、男性ホルモンであるテストステロンの変化です。

テストステロンというと、筋肉や骨格、男性らしい身体をつくるためのホルモンというイメージが強いかもしれません。しかし、その働きは身体的な特徴だけに限らず、意欲や気分、認知機能、性機能など、男性の心身に幅広く関係しています。

男性では加齢などに伴ってテストステロンが低下することがあり、それに関連してさまざまな身体的・精神的症状が現れる状態は、一般に男性更年期障害と呼ばれています。

ただし、年齢を重ねたすべての男性に同じ変化が起こるわけではありません。また、イライラや意欲低下、疲労感、睡眠の問題などは、テストステロンだけで説明できるものでもありません。

私たちの身体では、脳と内分泌系が連携しながらホルモン分泌を調節しており、その働きには年齢だけでなく、睡眠やストレス、身体活動などさまざまな要素が関係しています。

では、男性の身体ではテストステロンがどのように分泌され、年齢とともにどのような変化が起こるのでしょうか。そして、なぜホルモンの変化がイライラや意欲といった「感情」にまで関係するのでしょうか。

このコラムでは、男性更年期を入り口に、テストステロンの働きと男性の心身に起こる変化について解説していきます。

■テストステロンは男性の身体でどのような働きをしているのでしょうか?

テストステロンは、男性の身体で重要な役割を担っている男性ホルモンの一つです。男性では主に精巣でつくられており、筋肉や骨、生殖機能など、さまざまな身体機能に関係しています。

その分泌を調節しているのは、精巣だけではありません。脳にある視床下部と下垂体、そして精巣が連携しながらテストステロンの分泌量を調節しています。

まず視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されると、それを受けた下垂体からLH(黄体形成ホルモン)などが分泌されます。LHが血液を通して精巣へ届くと、精巣のライディッヒ細胞が刺激され、テストステロンがつくられます。

一方、血液中のテストステロンが増加すると、その情報が視床下部や下垂体へ伝わり、GnRHやLHの分泌が調節されます。このように脳と精巣が互いに情報をやり取りすることで、テストステロンの分泌は一定の範囲に保たれています。

この仕組みは「視床下部-下垂体-性腺系」と呼ばれています。つまり、テストステロンは精巣だけで独立してつくられているのではなく、脳を含めた内分泌系の連携によって調節されているのです。

テストステロンは、思春期になると分泌量が増加し、筋肉や骨格の発達、体毛や声の変化など、男性の身体的特徴の形成に関わります。しかし、その役割は成長期だけで終わるわけではありません。

成人になってからも、筋肉量や骨量の維持、造血、脂質や糖の代謝、性欲や性機能など、さまざまな身体機能に関係しています。また、テストステロンの作用は身体だけに限らず、脳にも及びます。

脳には男性ホルモンの作用を受ける受容体が存在しており、テストステロンは意欲や気分、認知機能などにも関係しています。そのため、テストステロンの状態が変化したときには、身体的な変化だけではなく、精神面にも変化が現れることがあります。

男性では加齢に伴ってテストステロンが低下する傾向がありますが、その程度には大きな個人差があります。さらに、テストステロンの状態には年齢だけではなく、肥満や睡眠、ストレス、身体活動、さまざまな疾患なども関係します。

そのため、「年齢を重ねたからテストステロンが低下する」「テストステロンが低いからイライラする」という単純な関係ではありません。男性更年期にみられる変化を理解するためには、一つのホルモンの数値だけを見るのではなく、テストステロンがどのような仕組みで調節され、身体や脳とどのように関わっているのかを知ることが大切なのです。

■なぜ男性更年期ではイライラや意欲低下が起こるのでしょうか?

男性更年期というと、性欲の低下や性機能の変化をイメージする人も多いかもしれません。しかし、実際には疲労感や意欲低下、集中力の低下、気分の落ち込み、イライラ、睡眠の問題など、心身のさまざまな変化がみられることがあります。

こうした変化を理解するうえで重要なのは、テストステロンを単なる「男性らしさをつくるホルモン」として捉えないことです。テストステロンは身体のさまざまな組織に作用するとともに、脳の働きとも関係しています。

私たちの感情や意欲は、一つのホルモンだけによって生み出されているわけではありません。脳では神経細胞同士が複雑なネットワークを形成し、さまざまな神経伝達物質やホルモンからの情報を受け取りながら、気分や意欲、注意、睡眠などを調節しています。

そのため、テストステロンの状態が変化したときにも、「テストステロンが減ったからイライラする」という単純な反応が起きているわけではありません。ホルモン環境の変化が脳を含む全身の調節に関わり、その人の睡眠や疲労、ストレス、生活環境などさまざまな要素と重なりながら、精神面の変化として現れることがあります。

特に睡眠とホルモンには密接な関係があります。テストステロンの分泌には一日の中で変動があり、睡眠もその分泌状態に関係しています。一方で、睡眠不足が続けば、日中の疲労感や集中力低下、感情のコントロールにも影響します。

また、慢性的なストレスにさらされているときには、身体ではストレスに適応するためのさまざまな反応が起こります。仕事上の責任、人間関係、睡眠不足、運動不足などが重なれば、「ホルモン」「神経」「生活環境」をそれぞれ切り離して考えることは難しくなります。

つまり、男性更年期にみられるイライラや意欲低下を理解するときには、感情だけを切り取って「性格の問題」と考えるのでも、反対にすべてを「テストステロンの問題」と考えるのでもなく、身体全体で何が起きているのかという視点が重要になります。

前田カイロプラクティック藤沢院でも、男性更年期そのものやテストステロン値を直接治療することを目的としているわけではありません。

当院では、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査を通して、神経機能を妨げるサブラクセーション(神経伝達の阻害)が生じていないかを評価します。

神経系は、身体の内外で起きている変化を受け取り、それぞれの器官や組織がその状況に応じて働くための情報伝達に関わっています。カイロプラクティックのアジャストメントは、テストステロンを増やしたり、イライラを直接取り除いたりするために行うものではありません。神経機能を妨げている要因に対してアプローチすることで、身体が本来持っている調節機能や「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えることを目的としています。

年齢とともに以前とは違う自分を感じたとき、その変化を単に「年齢のせい」「性格のせい」と片づけるのではなく、身体の中で起きている変化にも目を向けることが大切です。男性の心と身体は別々に存在しているのではなく、ホルモンや神経系を含むさまざまな仕組みが互いに関わりながら、一つの身体として働いているのです。

■自分でも抑えられないイライラに悩んでいた50代男性

年齢とともにイライラすることが増えたり、以前は楽しめていたことに意欲が湧かなくなったりすると、「自分の性格が変わってしまったのではないか」と考えてしまうことがあります。しかし、感情や意欲の変化には、身体の状態が関係している場合もあります。

前田カイロプラクティック藤沢院に来院された50代男性も、近年、些細なことに強い苛立ちを感じるようになり、自分でも感情を抑えることが難しくなっていました。相手の言葉に過敏に反応して口調がきつくなり、冷静になった後には後悔し、自分を責めることも増えていました。

長年営業部門で働き、周囲から頼られる立場にあった男性は、部下の前では常に冷静であろうと努め、自分の感情を抑えることが習慣のようになっていました。その変化は職場だけにとどまらず、家庭でも妻や子どもに穏やかに接する余裕がなくなり、以前は楽しみだった家族との外出にも意欲が湧かなくなっていました。

さらに、寝つきの悪さや朝の身体の重さ、首や肩の強い緊張、浅い呼吸、慢性的な腰の張りなど、感情以外にもさまざまな変化が重なっていました。病院で検査を受けても異常は見つからず、「年齢的なものかもしれない」と言われたものの、本人には心と身体の何かがうまく噛み合っていないような感覚が残っていました。

こうした状態を「イライラ」という一つの感情だけで捉えてしまうと、身体に同時に起きている変化は見えにくくなります。テストステロンをはじめとするホルモンの状態、睡眠、ストレス、神経系などは、それぞれ完全に独立しているわけではありません。男性更年期にみられる心身の変化を考えるときにも、一つの症状だけではなく、身体全体を捉える視点が大切になります。

前田カイロプラクティック藤沢院では、イライラや男性更年期そのものを直接治療するのではなく、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査から身体の状態を確認し、神経機能を妨げるサブラクセーションが生じていないかを評価しました。

その後、男性の心身の状態には少しずつ変化がみられました。ただし、その変化を「アジャストメントによってテストステロンが増えた」「男性更年期が治った」と単純に捉えるものではありません。

イライラや意欲低下を単なる性格の変化として片づけるのでも、一つのホルモンだけですべてを説明するのでもなく、その背景にある身体の変化にも目を向けることが大切です。感情もまた、身体から完全に切り離されたものではなく、私たちの身体全体の働きと関係しながら生まれているのです。

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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