インスリン注射をしても血糖値が安定しないのはなぜ?2型糖尿病と血糖調節の仕組み
「インスリン注射を始めれば、血糖値は安定すると思っていた。」
「食事にも気をつけているのに、血糖値が上がったり下がったりする。」
「そもそも、自分の身体ではインスリンがどのように働いているのだろう。」
2型糖尿病と診断され、食事や運動に気をつけながら薬物療法を続けていても、思うように血糖値が安定しないことがあります。さらに血糖コントロールのためにインスリン注射を始めても、血糖値の変動に悩む人もいます。
インスリンには血糖値を下げる重要な働きがあります。そのため、「血糖値が高いのであれば、インスリンを補えば下がる」と考えるのは自然なことかもしれません。
しかし、私たちの身体に備わっている血糖調節の仕組みは、それほど単純ではありません。
食事によって血液中に入ったブドウ糖は、インスリンの働きによって筋肉や脂肪などの細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されたり蓄えられたりします。一方、食事をしていない時間には、肝臓に蓄えられている糖を利用するなどして、血糖値が下がりすぎないよう調節されています。
つまり、血糖値は「インスリンがどれだけあるか」だけで決まっているわけではありません。膵臓からのインスリン分泌だけでなく、筋肉や脂肪、肝臓などがインスリンにどのように反応するのか、食事や運動、体重、身体活動など、さまざまな要素が関係しながら一定の範囲に保たれています。2型糖尿病では、インスリンの分泌が十分でなくなることに加えて、身体がインスリンに反応しにくくなる「インスリン抵抗性」も血糖値の上昇に関係します。
そのため、2型糖尿病の治療ではインスリン注射だけですべてを解決しようとするのではなく、その人の病態に応じた薬物療法とともに、食事や運動、体重管理などを含めて血糖を管理していくことが重要になります。
では、私たちの身体はどのように血糖値を調節しているのでしょうか。そして、血糖値を下げるインスリンを使用していても、なぜ血糖値が安定しないことがあるのでしょうか。
このコラムでは、2型糖尿病を入り口に、インスリンの役割と私たちの身体に備わっている血糖調節の仕組みについて解説していきます。
■血糖値はどのように調節されているのでしょうか?
私たちが食事から摂取した炭水化物は、消化によってブドウ糖などに分解され、小腸から吸収されて血液中へ入ります。食後に血糖値が上昇するのは、このブドウ糖が血液中に増えるためです。
しかし、血液中のブドウ糖は、ただ血液の中を流れているだけでは身体のエネルギーとして十分に利用できません。筋肉をはじめとする組織へ取り込まれ、細胞の活動に利用される必要があります。この血糖調節に重要な役割を果たしているホルモンの一つが、膵臓から分泌されるインスリンです。
食事によって血糖値が上昇すると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。インスリンは筋肉や脂肪組織などに働きかけ、血液中のブドウ糖が細胞へ取り込まれるのを促します。また、肝臓に対しても働き、ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えることを促すとともに、肝臓から血液中へ新たに糖が送り出される働きを抑えます。
こうした働きによって、食後に上昇した血糖値は徐々に下がっていきます。つまりインスリンは、単に血液中の糖を減らしているのではなく、身体の各組織がブドウ糖を利用したり蓄えたりするための調節に関わっています。
一方で、私たちは食事をしていない時間にも脳や筋肉、さまざまな臓器を働かせ続けなければなりません。そのため、空腹時には血糖値が下がりすぎないよう、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解したり、必要に応じて新たにブドウ糖をつくったりして、血液中へ供給しています。
このときには、膵臓から分泌されるグルカゴンをはじめ、複数のホルモンが血糖調節に関わります。私たちの身体は「血糖値を下げる仕組み」だけを持っているのではなく、必要に応じて血糖値を維持したり上げたりする仕組みも備えているのです。
2型糖尿病では、この精密な血糖調節の仕組みに変化が生じます。その中心となるのが、「インスリン分泌の低下」と「インスリン抵抗性」です。
インスリン抵抗性とは、インスリンが存在していても、筋肉や肝臓、脂肪組織などがその作用に十分反応しにくくなった状態を指します。すると膵臓は、血糖値を一定の範囲に保つために、より多くのインスリンを分泌して対応しようとします。
しかし、この状態が続き、さらに膵臓からのインスリン分泌能力も低下してくると、身体が必要とするだけのインスリン作用を確保することが難しくなります。その結果、血液中のブドウ糖を適切に処理できなくなり、血糖値が高い状態が続くようになります。
重要なのは、2型糖尿病を単純に「インスリンが足りない病気」とだけ捉えないことです。どれだけインスリンを分泌できているのかという問題と、そのインスリンに身体の組織がどれだけ反応できているのかという問題の両方が関係しています。
だからこそ、同じ2型糖尿病であっても身体の状態は一人ひとり異なります。血糖値という一つの数値の背景には、膵臓、肝臓、筋肉、脂肪組織などが互いに関わりながら行っている複雑な血糖調節の仕組みがあるのです。
■血糖調節は膵臓とインスリンだけで行われているのでしょうか?
血糖値という数字を見ると、どうしても「インスリンが足りているか」「インスリンが効いているか」という点に目が向きやすくなります。しかし、血糖値を一定の範囲に保つために働いているのは、膵臓とインスリンだけではありません。
私たちの身体では、食事によって入ってきたブドウ糖をどこで使い、どこに蓄え、必要になったときにどこから供給するのかを絶えず調節しています。そのためには、膵臓だけでなく、肝臓、筋肉、脂肪組織、消化管、脳など、さまざまな組織が互いに連携する必要があります。
たとえば骨格筋は、身体の中でもブドウ糖を利用する大きな組織です。食後にはインスリンの作用によって血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギーとして利用したり、グリコーゲンとして蓄えたりします。そのため、身体活動によって筋肉でエネルギーが消費されることも、血糖調節と深く関係しています。
肝臓は、食後には余ったブドウ糖を蓄える一方、食事をしていない時間には必要に応じてブドウ糖を血液中へ供給します。つまり肝臓は、血糖値が高くなりすぎないようにする働きと、低くなりすぎないようにする働きの両方に関わっています。
さらに、脂肪組織も単なるエネルギーの貯蔵庫ではありません。脂肪組織からはさまざまな生理活性物質が分泌されており、過剰な内臓脂肪の蓄積などは、インスリンに対する身体の反応性にも影響します。肥満が2型糖尿病の重要なリスク因子の一つとされている背景には、こうした代謝機能の変化も関係しています。
そして、これらの臓器や組織は、それぞれが勝手に血糖値を調節しているわけではありません。脳も身体のエネルギー状態に関する情報を受け取り、自律神経系や内分泌系などを介して、摂食行動やエネルギー消費、肝臓での糖代謝などの調節に関わっています。
また、身体が強いストレスにさらされたときには、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンも血糖調節に影響します。身体がすぐにエネルギーを利用できるようにするため、肝臓からの糖の供給が促されるなど、血糖値を上昇させる方向に働くことがあります。これは本来、環境の変化に対応するために備わっている正常な身体反応です。
このように考えると、血糖値とは単に「食べた糖の量」や「インスリンの量」を示している数字ではありません。食事、身体活動、肝臓での糖の産生と貯蔵、筋肉での利用、脂肪組織の状態、ホルモン、神経系など、全身のさまざまな働きが関係した結果として現れている数値です。
カイロプラクティックでは、2型糖尿病そのものや血糖値を直接治療することを目的としているわけではありません。また、サブラクセーションが糖尿病の原因であると考えるものでもありません。
前田カイロプラクティック藤沢院では、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査を通して、神経機能を妨げるサブラクセーション(神経伝達の阻害)が生じていないかを評価します。
神経系は、身体の状態を感知し、それぞれの組織や器官が置かれている状況に応じて働くための情報伝達に関わっています。カイロプラクティックのアジャストメントは、血糖値を直接下げるために行うものではなく、神経機能を妨げている要因に対してアプローチすることで、身体が本来持っている調節機能や「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えることを目的としています。
血糖値だけを見るのではなく、その数値が全身のさまざまな働きの結果として現れていることを理解することが大切です。身体は一つの数値だけを調節しているのではなく、常に全身の状態を変化させながら、そのときの環境に適応し続けているのです。
■インスリン注射を続けても血糖値が安定しなかった40代男性
2型糖尿病では、血糖値だけを見ていると、その背景にある身体の変化を見落としてしまうことがあります。血糖値は、膵臓から分泌されるインスリンだけではなく、肝臓や筋肉、脂肪組織をはじめとする全身の働きが関係した結果として現れる数値だからです。
前田カイロプラクティック藤沢院に来院された40代男性も、2型糖尿病と診断され、最終的にはインスリン注射を続けていましたが、思うように血糖値が安定しない状態が続いていました。
20代の頃から営業職として外回りが多く、昼はコンビニ弁当、夜は接待や会食という生活が続いていました。運動習慣もなくなり、40代に入る頃には体重が10キロ以上増加。健康診断で血糖値の高さを指摘されながら再検査を受けず、やがてHbA1c7.3%を指摘され、再検査で2型糖尿病と診断されました。
診断後は食事制限や運動にも取り組みましたが、仕事柄、外食を避けることは難しく、強い空腹感から甘いものを口にしたり、ストレスから食べ過ぎたりすることもありました。その後インスリン注射を開始しても血糖値は思うように安定せず、倦怠感や集中力の低下なども続いていました。
この男性の経過から考えたいのは、2型糖尿病を「血糖値だけの問題」として捉えないということです。長年の食生活や運動不足、体重増加など、身体を取り巻く環境は時間をかけて積み重なっています。そして、血糖調節には膵臓だけではなく、肝臓、筋肉、脂肪組織、神経系など、さまざまな働きが関係しています。
前田カイロプラクティック藤沢院では、糖尿病や血糖値そのものを直接治療しようとするのではなく、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査から身体の状態を確認し、神経機能を妨げるサブラクセーションが生じていないかを評価しました。
その後、身体の状態には少しずつ変化がみられました。ここで重要なのは、その変化を単純に「カイロプラクティックによって糖尿病が治った」と捉えないことです。2型糖尿病には食事、運動、体重、インスリン分泌、インスリン抵抗性など多くの要素が関係しており、医療機関での継続的な管理も重要です。
血糖値という数字だけを見るのではなく、その背景で身体がどのようにエネルギーを取り込み、利用し、蓄え、必要に応じて供給しているのかという視点を持つことで、2型糖尿病という状態をより広く理解することができます。
▶インスリン注射を続けても血糖値が安定しなかった40代男性の詳しい症例報告はこちら
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。
シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。


