2026.10.24

子宮内膜症で生理痛がひどくなるのはなぜ?慢性的な痛みと炎症の仕組み

カテゴリ: 健康通信
子宮内膜症で生理痛がひどくなるのはなぜ?慢性的な痛みと炎症の仕組み

「毎月の生理が近づくたびに、下腹部や腰の痛みが憂うつになる。」
「痛み止めを飲んでいても、生理痛がなかなか改善しない。」
「生理が終わったはずなのに、下腹部の重だるさや疲労感が続いている。」

このような悩みを抱えながら、毎月の生理を迎えている女性は少なくありません。生理痛は多くの女性が経験する身近な症状ですが、痛みが強くなることで仕事や家事に集中できなくなったり、休日の予定を変更せざるを得なくなったりすることもあります。

特に、鎮痛薬を服用しても痛みが十分に軽減しない場合や、生理期間以外にも下腹部や腰の痛みが続く場合には、単なる生理痛ではなく、子宮内膜症などの婦人科疾患が関係している可能性があります。

子宮内膜症は、子宮の内側を覆っている子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など、本来とは異なる場所に存在する病気です。女性ホルモンの働きに影響を受けながら、周囲の組織に炎症や癒着を引き起こすことがあり、強い生理痛や慢性的な骨盤内の痛みにつながります。

しかし、子宮内膜症による痛みは、病変が存在しているという理由だけで説明できるものではありません。

私たちの身体には、炎症や組織への刺激を感知し、その情報を神経を通じて脳へ伝える仕組みがあります。痛みは、こうした神経からの情報を脳が処理することで生じる感覚です。そのため、同じような病変があっても痛みの程度には個人差があり、病変の大きさと痛みの強さが必ずしも一致するわけではありません。

また、子宮内膜症では、炎症に関わる物質が痛みを感じ取る神経を刺激し、痛みに敏感な状態をつくることがあります。こうした状態が長く続くと、月経時だけでなく、月経のない時期にも下腹部の違和感や腰の痛みが現れる場合があります。

さらに、慢性的な痛みは睡眠や疲労感、精神的な負担とも深く関係しています。痛みが気になって十分に眠れなくなったり、日常生活で常に身体の不調を意識するようになったりすると、心身を休める時間が少なくなってしまいます。

ここで重要なのは、子宮内膜症による痛みを、子宮や卵巣だけの問題として捉えないことです。

女性の身体では、月経周期に伴うホルモンの変化、炎症反応、痛みを伝える神経系の働きなどが複雑に関係しています。さらに、長期間にわたって痛みが続くことで、神経系が刺激に敏感になることもあり、痛みが慢性化する背景を理解するには、こうした身体の仕組みを知ることが大切です。

もちろん、子宮内膜症が疑われる場合には婦人科での診断が重要であり、薬物療法や手術など、病状に応じた治療が必要になることもあります。そのうえで、なぜ痛みが強くなるのか、なぜ生理期間以外にも不調が続くのかを理解することは、自分自身の身体と向き合うための大切な第一歩になります。

では、子宮内膜症ではなぜ強い生理痛が起こるのでしょうか。そして、炎症や神経系の働きは、慢性的な痛みとどのように関係しているのでしょうか。

このコラムでは、子宮内膜症による生理痛が生じる仕組みを入り口に、女性ホルモンや炎症反応、神経系と慢性的な痛みの関係について解説していきます。

■子宮内膜症ではなぜ生理痛が強くなるのでしょうか?

生理痛は、月経に伴って子宮が収縮することで生じる痛みです。月経が始まると、子宮内膜からプロスタグランジンと呼ばれる物質が分泌され、子宮の筋肉を収縮させる働きが強まります。この収縮によって子宮内膜が血液とともに体外へ排出されますが、収縮が強くなると子宮への血流が一時的に減少し、下腹部や腰に痛みを感じることがあります。

しかし、子宮内膜症による生理痛には、通常の月経に伴う子宮の収縮だけでは説明できない仕組みが関係しています。

子宮内膜症は、子宮の内側に存在する子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜、子宮と直腸の間など、本来とは異なる場所に発生する病気です。これらの組織はエストロゲンなどの女性ホルモンの影響を受けながら活動し、周囲の組織に慢性的な炎症を引き起こすことがあります。

本来、子宮の内側にある子宮内膜は、月経周期に伴って厚くなり、妊娠が成立しなかった場合には剥がれ落ちて月経血として排出されます。一方、子宮内膜症の病変は子宮の外側などに存在しているため、通常の子宮内膜とは異なる環境で炎症や出血を繰り返すことがあります。

こうした炎症が続くと、周囲の組織ではプロスタグランジンやサイトカインなど、炎症に関係する物質が増加します。これらの物質は痛みを感じ取る神経の末端を刺激したり、刺激に対する反応を強めたりするため、通常であればそれほど強く感じない刺激でも、痛みとして認識されやすくなることがあります。

さらに、炎症が長期間続くことで、骨盤内の組織同士が癒着する場合もあります。癒着とは、本来は別々に動くことのできる組織が、炎症などの影響によって互いにくっついてしまう状態です。

例えば、卵巣や子宮、腸などの周囲に癒着が生じると、身体を動かしたときや排便時などに痛みを感じることがあります。ただし、癒着の程度と痛みの強さが必ずしも一致するわけではなく、病変の位置や炎症の状態などによって症状には個人差があります。

また、子宮内膜症では卵巣に病変が生じ、内部に古い血液がたまった嚢胞を形成することがあります。これは卵巣チョコレート嚢胞と呼ばれ、子宮内膜症に特徴的な病変の一つです。こうした病変が存在する場合には、月経痛だけでなく、慢性的な下腹部痛や骨盤内の違和感を伴うこともあります。

子宮内膜症の特徴として知っておきたいのは、必ずしも病変が大きいほど痛みが強くなるわけではないという点です。

比較的小さな病変であっても、炎症が強かったり、神経が豊富に分布する場所に病変が存在したりすれば、強い痛みを感じることがあります。反対に、病変が広がっていても、自覚症状がそれほど強くない人もいます。

さらに、子宮内膜症による痛みは、月経のときだけに現れるとは限りません。病変の周囲で慢性的な炎症が続くことで、月経期間以外にも下腹部や腰に痛みを感じたり、性交時や排便時に痛みが生じたりすることがあります。

このように、子宮内膜症による生理痛には、女性ホルモンの働き、炎症反応、プロスタグランジンの産生、周囲の組織への影響など、複数の要因が関係しています。

大切なのは、生理痛を単なる子宮の収縮による痛みとして捉えるのではなく、骨盤内でどのような変化が起きているのかを理解することです。特に、年々生理痛が強くなっている場合や、鎮痛薬を服用しても日常生活に支障が出る場合には、婦人科で原因を確認することが重要です。

そして、子宮内膜症による痛みをさらに深く理解するためには、炎症が起きている場所だけでなく、その刺激を受け取って脳へ伝える神経系の働きにも目を向ける必要があります。

■なぜ子宮内膜症の痛みは慢性化するのでしょうか?神経系との深い関係

子宮内膜症による痛みを理解するうえで重要なのは、炎症が起きている場所だけでなく、その刺激を受け取る神経系の働きです。私たちが感じる痛みは、単に組織が傷ついていることを知らせる反応ではありません。身体の各部から伝えられる情報を脊髄や脳が処理することで、初めて痛みとして認識されます。

例えば、下腹部や骨盤内で炎症が生じると、その周囲に存在する感覚神経の末端が刺激されます。この情報は末梢神経を通って脊髄へ伝わり、さらに脳へ届けられます。脳は受け取った情報を、過去の経験や身体の状態、周囲の環境などと統合しながら、痛みとして認識しています。

ここで注目したいのが、神経系には刺激に対する反応を変化させる性質があるということです。

子宮内膜症による炎症が長期間続くと、痛みを感じ取る末梢神経が刺激に敏感になることがあります。この現象は末梢性感作と呼ばれ、通常よりも弱い刺激で痛みが生じたり、同じ刺激でも強い痛みを感じたりする原因の一つになります。

さらに、痛みの情報が繰り返し脊髄や脳へ伝えられることで、中枢神経系の痛みに対する反応にも変化が生じる場合があります。これは中枢性感作と呼ばれる現象です。

中枢性感作が生じると、神経系が痛みの情報に対して過敏に反応するようになり、炎症の程度だけでは説明できない強い痛みや、長期間続く痛みにつながることがあります。子宮内膜症では、病変の大きさと痛みの強さが必ずしも一致しないことがありますが、その背景には、こうした神経系の変化も関係していると考えられています。

また、骨盤内の臓器から伝わる感覚情報には、互いに共通する神経経路が存在します。そのため、子宮や卵巣などからの痛みの情報が脊髄で処理される際に、腸や膀胱、骨盤周囲の筋肉などからの情報と影響し合うことがあります。

こうした仕組みは内臓間の交差感作などと呼ばれ、子宮内膜症に伴って排便時の痛みや膀胱周囲の不快感などが現れる背景の一つとして研究されています。痛みを感じる場所と、その刺激が発生している場所が必ずしも一致しないことも、神経系の特徴の一つです。

さらに、慢性的な痛みは自律神経系の働きや睡眠とも関係しています。

自律神経は、心拍、血圧、消化、体温調節など、私たちが意識しなくても行われる身体の働きを調節しています。強い痛みが続くと、身体はストレス反応を示し、交感神経の活動が高まることがあります。また、痛みによって睡眠が妨げられると、疲労の蓄積や痛みに対する感受性の変化につながることもあります。

つまり、慢性的な痛みは、炎症による刺激だけでなく、神経系の感受性、睡眠、身体のストレス反応などが互いに関係することで、日常生活への負担が大きくなる場合があるのです。

ここで、ガンステッド・カイロプラクティックが重視しているのが、身体の働きを調節する神経系の状態です。

前田カイロプラクティック藤沢院では、子宮内膜症の病変そのものを直接治療するのではなく、婦人科での診断や治療を尊重しながら、身体全体の状態を評価します。視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価などの検査を通して、神経機能を妨げるサブラクセーション(神経伝達の阻害)が生じていないかを確認します。

ガンステッド・カイロプラクティックでは、必要な部位に対するアジャストメントによって、神経系への負担を軽減し、身体が本来持っている調節機能や「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えることを目指しています。これは子宮内膜症の病変を取り除くことや、炎症そのものを直接抑えることとは異なる考え方です。

子宮内膜症による慢性的な痛みを理解するためには、炎症や病変の状態だけでなく、痛みの情報を受け取る末梢神経、それを処理する脊髄や脳、さらに睡眠や自律神経系の働きまで含めた広い視点が大切です。

痛みは身体の一部分だけで生じているのではなく、さまざまな神経活動が関係することで生まれる感覚です。だからこそ、子宮内膜症に伴う痛みを考える際には、婦人科的な病態とともに、神経系が痛みをどのように受け取り、処理しているのかを理解することが重要なのです。

■子宮内膜症による慢性的な痛みと身体全体の状態を考える

子宮内膜症による痛みは、月経期間中だけに現れるとは限りません。骨盤内で炎症が続くことで、月経のない時期にも下腹部や腰に痛みが残ることがあります。さらに、痛みによる睡眠不足や疲労の蓄積が重なると、日常生活における身体的な負担は一層大きくなります。

特に、慢性的な痛みを抱えている場合には、痛みを感じる場所だけでなく、身体全体の状態にも目を向けることが大切です。痛みを避けるために無意識に身体を緊張させたり、同じ姿勢を長時間続けることが負担になったりすることで、骨盤周囲や腰の筋肉にも影響が及ぶ場合があります。

当院に来院された30代女性も、子宮内膜症による激しい生理痛と慢性的な倦怠感に悩まされていました。婦人科で処方された薬を服用していましたが、月経時の強い痛みに加えて、月経期間以外にも下腹部や腰の重だるさが続き、仕事や日常生活にも支障が生じていました。

ここで注目したいのは、子宮内膜症による痛みと、身体に現れているさまざまな変化を区別しながら理解することです。

子宮内膜症による炎症や病変は、婦人科で評価・治療する必要があります。一方、長期間にわたって痛みを抱えている人では、腰や骨盤周囲の筋肉が緊張していたり、身体を動かす際に特定の部位へ負担が集中していたりすることもあります。こうした筋骨格系の状態は、子宮内膜症の病変そのものとは異なるものですが、日常生活で感じる身体の負担を考えるうえでは重要な要素です。

実際に、この女性の初診時には、右仙腸関節の可動域制限や右仙骨翼周囲の浮腫、腰部起立筋の過緊張などが確認されました。こうした所見だけで子宮内膜症の原因や病状を判断することはできませんが、骨盤周囲の動きや筋肉の状態を評価するうえでの手がかりになります。

また、慢性的な痛みを抱える人にとって、十分な睡眠を確保することも大切です。睡眠不足は疲労感や集中力の低下につながるだけでなく、痛みに対する感受性にも影響することがあります。そのため、月経時の痛みだけに注目するのではなく、普段の睡眠や疲労の状態、身体の緊張なども含めて考えることが重要です。

当院では、婦人科での診断や治療を尊重しながら、神経機能を妨げるサブラクセーションが生じていないかを評価し、必要な部位に対するアジャストメントを行いました。その後、女性の身体の状態や日常生活には少しずつ変化がみられました。

子宮内膜症による痛みを理解するためには、女性ホルモンや炎症反応といった婦人科的な要因に加えて、痛みを受け取る神経系の働きや、骨盤周囲の筋肉、睡眠、疲労などにも目を向けることが大切です。

身体のさまざまな働きは互いに関係しています。だからこそ、子宮内膜症という病気を適切に理解しながら、日常生活の中で身体にどのような負担が生じているのかを知ることが、自分自身の健康と向き合うための大切な一歩になるのです。

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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