スポーツ障害を繰り返すのはなぜ?「使いすぎ」だけでは説明できない本当の理由
「毎日しっかりストレッチをしているのに肩や肘が痛くなる。」
「練習量は変わらないのに、膝や腰の痛みがなかなか改善しない。」
「病院では『使いすぎですね』と言われたけれど、本当にそれだけが原因なのだろうか。」
スポーツに取り組む学生や社会人アスリート、そして保護者の方からこのようなご相談をいただくことがあります。
もちろん、スポーツ障害には練習量やフォーム、筋力、柔軟性などが関係することはよく知られています。しかし、同じ競技を行い、同じような練習をしていても、スポーツ障害を繰り返す選手もいれば、大きなケガをすることなく競技を続けられる選手もいます。
この違いは、単に「使いすぎ」という言葉だけでは説明できません。近年では、スポーツ医学の分野でも、身体の連動性や神経による運動制御、回復能力など、身体全体の機能を総合的に評価することの重要性が注目されています。
スポーツ障害は、痛みが出ている場所だけを見ても、本当の原因が見えてこないことがあります。身体は一つの部位だけで動いているのではなく、脳からの指令を受けながら全身が連動することで、一つひとつの動作を生み出しています。そのため、一か所の動きが変化すると、その影響は別の部位へ負担として現れることも少なくありません。
今回のコラムでは、スポーツ障害が起こる一般的な原因を踏まえながら、「なぜ同じ練習でも障害が起こる選手と起こらない選手がいるのか」という視点から、カイロプラクティックがどのような考え方で身体を評価しているのかについてお伝えしていきます。
■ スポーツ障害は「使いすぎ」だけでは説明できません
スポーツ障害とは、スポーツ活動によって起こるケガや痛みの総称です。大きく分けると、転倒や衝突など一度の強い外力によって起こる「スポーツ外傷」と、練習や試合で同じ動作を繰り返すことで少しずつ負担が蓄積して起こる「スポーツ障害(オーバーユース障害)」があります。
例えば、野球では野球肩や野球肘、ランニングではシンスプリントや疲労骨折、バスケットボールやバレーボールではジャンパー膝、サッカーではアキレス腱や膝の痛みなどが代表的なスポーツ障害です。これらは一度のプレーで発症するというよりも、日々の練習や試合の積み重ねによって発症することが多いとされています。
一般的には、「練習のしすぎ」「フォームが悪い」「筋力不足」「身体が硬い」といったことが原因として挙げられます。もちろん、これらはスポーツ障害を考えるうえで重要な要素です。また、十分な睡眠や栄養が不足すると疲労からの回復が遅れ、組織の修復が追いつかなくなることも、スポーツ障害のリスクを高めると考えられています。
しかし、ここで一つ疑問があります。
同じチームで、同じ練習を行い、同じ指導を受けていても、スポーツ障害を繰り返す選手もいれば、ほとんどケガをすることなくプレーを続けられる選手もいます。また、十分な筋力や柔軟性を備えているにもかかわらず、慢性的な痛みに悩まされる選手も少なくありません。
もし「使いすぎ」だけが原因であれば、同じ練習量の選手は同じようにスポーツ障害を起こすはずです。しかし実際には、そのようにはなりません。そこには、練習量や筋力だけでは説明できない、一人ひとりの身体の状態や動き方の違いが関係している可能性があります。
近年のスポーツ医学でも、ケガの予防やパフォーマンスの向上には、痛みがある部位だけでなく、身体全体の連動性や関節の機能、神経による運動制御などを総合的に評価することの重要性が注目されています。
では、身体全体から見ると、スポーツ障害が起こる前にはどのような変化が起きているのでしょうか。そして、身体は痛みが出る前から何らかのサインを発しているのでしょうか。
■ 身体は痛みが出る前からサインを送っています|スポーツ障害を繰り返さないために大切な視点
スポーツ障害は、痛みが出た瞬間から始まるわけではありません。多くの場合、痛みとして現れる前から、身体にはさまざまな変化が起きています。
例えば、「以前より身体が硬くなった」「ウォーミングアップに時間がかかるようになった」「左右で動きやすさが違う」「フォームが安定しない」「疲れが翌日まで残る」といった変化を感じたことはないでしょうか。
これらは練習を続けていれば誰にでも起こることと思われがちですが、身体からの小さなシグナルである可能性があります。
人の身体は、一つの筋肉や一つの関節だけで動いているわけではありません。走る、投げる、蹴る、跳ぶといったスポーツ動作は、足部、膝、股関節、骨盤、背骨、肩甲帯、首までが連動し、それぞれが適切なタイミングで働くことで成り立っています。
しかし、どこか一つの関節で本来の動きが失われると、身体はそのまま動けなくなるわけではありません。別の関節や筋肉が無意識のうちにその役割を補い、同じ動作を続けようとします。この仕組みを「代償動作」といいます。
例えば、股関節の動きが十分に出なくなると腰や膝への負担が増えることがあります。胸椎の回旋が制限されると、肩や肘がその動きを補うことで、投球やスイングのたびに負担が蓄積することもあります。
代償動作そのものは、身体が動きを維持するための優れた適応能力です。しかし、その状態が長期間続くと、一部の筋肉や腱、靭帯、関節に繰り返し負荷が集中し、やがてスポーツ障害として表面化する可能性があります。
実際に、スポーツ医学の分野でも、関節可動域の左右差や動作のアンバランス、神経と筋肉の協調性(神経筋コントロール)の低下などは、スポーツ障害の発生リスクに関与する要因として報告されています。つまり、「痛い場所」だけを見ていては、その背景にある身体の変化を見落としてしまう可能性があるのです。
トップアスリートが試合で最高のパフォーマンスを発揮し続けるために大切にしているのは、「痛みを取ること」だけではありません。痛みが出る前の身体の変化を把握し、コンディションを維持することです。だからこそ、違和感や動きの変化を軽視せず、自分の身体の状態を定期的に確認しています。
私たちも、スポーツ障害を考えるうえで大切なのは、「どこが痛いのか」だけではなく、「なぜそこに負担が集中したのか」という視点だと考えています。
では、その「なぜ」を知るためには、何を評価する必要があるのでしょうか。次に、カイロプラクティックがどのような考え方で身体を評価し、なぜ神経の働きを重要視しているのかについてお伝えします。
■ スポーツ障害を考えるうえで大切なのは「どこが痛いか」ではなく、「なぜそこへ負担が集中したのか」を知ることです
スポーツでは、筋力や柔軟性、技術の向上が重要であることは言うまでもありません。しかし、それらを発揮するためには、脳と身体が正確に情報をやり取りできる状態であることが欠かせません。
人の身体をコントロールしているのは脳です。脳は、筋肉や関節、皮膚、腱、靭帯など全身から送られてくる情報を神経を介して受け取り、「身体が今どのような状態なのか」を絶えず把握しています。そして、その情報をもとに、筋肉をどの程度働かせるのか、どの順番で動かすのか、身体のバランスをどのように保つのかを瞬時に判断し、神経を通じて全身へ指令を送っています。
つまり、スポーツで求められる「正確なフォーム」「素早い反応」「バランスの取れた動き」は、脳と身体の円滑な情報伝達によって支えられています。
一方で、脳へ送られる身体の情報や、脳から身体へ送られる指令が十分に機能しにくい状態になると、無意識のうちに動きのクセや代償動作が生じ、一部の関節や筋肉へ負担が集中しやすくなる可能性があります。その結果として、スポーツ障害やパフォーマンスの低下につながることも考えられます。
私たちカイロプラクターは、この脳と身体の情報伝達を妨げているサブラクセーション(根本原因)を正確に特定することを大切にしています。
そのため当院では、一つの検査結果だけで判断することはありません。体表温度検査では神経機能の変化を客観的に評価し、視診検査では姿勢や重心、身体全体のバランスを確認します。さらに、静的触診では皮膚の質感や筋緊張、熱感、浮腫感など、画像では分からない身体の変化を読み取り、動的触診では背骨や骨盤の関節が本来の動きを保っているかを一つひとつ丁寧に評価します。
また、レントゲン評価では、安全性を確認するとともに、骨格の構造や椎間板の状態を把握し、サブラクセーション(根本原因)が身体へどのような影響を及ぼしている可能性があるのかを多角的に検討します。
これら5つの検査には、それぞれ異なる役割があります。一つの検査だけでは見えない情報も、複数の検査結果を照らし合わせることで共通する所見が見えてきます。当院では、その複数の情報が一致した場所をサブラクセーション(根本原因)として特定し、本当に必要な場所だけをアジャストメントしていきます。
検査の目的は、多くの場所を調整することではありません。原因を正確に評価し、本当に必要なケアを行うためです。原因が分からなければ、適切なアプローチを選択することはできません。だからこそ、私たちは検査を何よりも大切にしています。
カイロプラクティックは、スポーツ障害そのものを治療することを目的としているわけではありません。私たちが目指しているのは、脳と身体が円滑に情報をやり取りできる状態をサポートし、その人が本来持っている自然治癒力や身体の適応能力を十分に発揮しやすい環境を整えることです。
スポーツ障害を繰り返さないためには、痛みが出た場所だけを見るのではなく、「なぜそこへ負担が集中したのか」という視点から身体を評価することが重要です。日々の練習や試合で最高のパフォーマンスを発揮し、長く競技を続けていくためにも、ぜひご自身の身体の状態を知るきっかけとして、カイロプラクティックケアを健康管理やコンディショニングに役立てていただければと思います。
スポーツ障害は、「使いすぎ」という一言だけでは説明できるものではありません。同じ競技、同じ練習量でも、スポーツ障害を繰り返す選手と、長くコンディションを維持しながら競技を続けられる選手がいます。その違いには、身体の使い方や関節の連動性、そして脳と身体をつなぐ神経の働きなど、さまざまな要素が関係していると考えられます。
身体は、痛みとして現れる前から、小さなサインを発しています。そのサインに早く気づき、痛みがある場所だけではなく、「なぜそこへ負担が集中したのか」という視点で身体を評価することが、スポーツ障害の予防やパフォーマンスの維持・向上につながる第一歩です。
カイロプラクティックは、痛みがある部位だけに着目するのではなく、5つの検査を通してサブラクセーション(根本原因)を正確に特定し、脳と身体が円滑に情報をやり取りできる状態を目指します。その結果として、その人が本来持っている自然治癒力や身体の適応能力を十分に発揮しやすい環境を整えることが、私たちの役割だと考えています。
スポーツを長く楽しみたい方、試合で最高のパフォーマンスを発揮したい方、そしてケガを繰り返さない身体づくりを目指したい方は、一度ご自身の身体の状態を詳しく評価してみませんか。
前田カイロプラクティック藤沢院には、学生アスリートから社会人、趣味でスポーツを楽しむ方まで、幅広い年代の方がコンディショニングやスポーツ障害のご相談に来院されています。
日々の練習や試合を安心して続けるためにも、そしてご自身が持っている力を十分に発揮するためにも、ぜひカイロプラクティックケアを健康管理の一つとして役立てていただければ幸いです。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


