2026.08.02

生理前に食欲が止まらないのはなぜ?PMSによる過食を自律神経の働きから考える

カテゴリ: 健康通信
生理前に食欲が止まらないのはなぜ?PMSによる過食を自律神経の働きから考える

「生理前になると甘いものがやめられない。」
「お腹がいっぱいのはずなのに、ついお菓子やパンを食べ続けてしまう。」
「毎月のことだから仕方がないと思いながらも、食べ過ぎてしまったあとに後悔してしまう。」

このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。

生理前に食欲が増えたり、甘いものや炭水化物が無性に食べたくなったりすることは、PMS(月経前症候群)の症状の一つとして知られています。そのため、「ホルモンバランスのせいだから仕方がない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

もちろん、女性ホルモンの変化は生理前の食欲に大きく関わっています。しかし、それだけでは説明できないこともあります。例えば、毎月症状がほとんど気にならない方がいる一方で、食欲をコントロールすることが難しいほど強く症状が現れる方もいます。また、同じ方でも月によって症状の程度が異なることは珍しくありません。

この違いには、女性ホルモンだけでなく、脳の働きや自律神経、睡眠、ストレス、生活習慣など、身体全体の状態が関係している可能性があります。

このコラムでは、生理前に過食が起こりやすくなる理由と自律神経との関係や、カイロプラクティックが身体をどのような視点で評価しているのかについてお伝えします。

■ 生理前に食欲が止まらないのはなぜ?ホルモンだけではない身体の変化

「生理前になると甘いものが無性に食べたくなる」「お腹がいっぱいなのに、ついお菓子やパンに手が伸びてしまう」「食べ過ぎたあとに自己嫌悪になってしまう」。このような悩みは、多くの女性が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

実際に、生理前の過食や強い食欲はPMS(月経前症候群)の症状の一つとして知られています。日本人女性を対象とした調査でも、生理前に食欲の変化や甘いものへの欲求を感じる方は少なくありません。そのため、「自分だけがおかしいのではないか」と不安になる必要はありません。

一般的には、排卵後から月経が始まるまでの「黄体期」に分泌が増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)が、食欲の変化に関係していると考えられています。この時期の身体は、妊娠に備えてエネルギーを蓄えやすい状態へ変化するため、食欲が増したり、脂質や糖質を含む食品を欲しやすくなったりすることがあります。

さらに近年では、気分の安定や満腹感に関わる脳内物質「セロトニン」の働きも注目されています。黄体期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が低下することで、セロトニンの働きにも影響が及ぶ可能性があると考えられています。その結果、甘いものや炭水化物を食べることで一時的に気分を落ち着かせようとする反応が起こりやすくなることがあります。

ここで一つ、興味深いことがあります。

人間の脳は、糖分を唯一の主要なエネルギー源として利用しています。そのため、疲労や睡眠不足、精神的なストレスが重なると、脳は素早くエネルギーを補給しようとして、吸収の早い糖質を欲しやすくなることがあります。生理前に「チョコレートが無性に食べたい」「ケーキやパンが我慢できない」と感じる背景には、このような脳の働きも関係している可能性があります。

しかし、ここで一つ疑問が生まれます。

もしホルモンの変化だけが原因であれば、すべての女性が毎月同じように過食になり、同じ程度の食欲を感じるはずです。実際には、「ほとんど食欲が変わらない方」もいれば、「毎月食欲をコントロールするのが難しいほど強い空腹感に悩む方」もいます。また、同じ方でも、ある月は症状が軽く、別の月は強く現れることがあります。

この違いは、女性ホルモンだけでは十分に説明できません。近年では、睡眠やストレス、生活習慣、腸内環境、そして脳と身体をつなぐ自律神経の働きも複雑に関係していることが分かってきています。

つまり、生理前の過食は「意志が弱いから」「食べ過ぎてしまう自分が悪いから」という問題ではなく、身体全体で起きているさまざまな変化の結果として現れている可能性があります。

では、自律神経はどのように食欲や女性ホルモンと関係しているのでしょうか。そして、なぜ同じ生理前でも症状の現れ方に大きな違いが生まれるのでしょうか。

次の章では、食欲をコントロールしている脳の仕組みと、自律神経との関係について、もう一歩踏み込んで解説していきます。

■ 「ホルモンだけ」が原因ではありません。食欲をコントロールしているのは脳と自律神経です

ここで一つ考えてみてください。

もし女性ホルモンの変化だけが生理前の過食の原因であれば、すべての女性が毎月同じように食欲が増え、同じ量を食べたくなるはずです。しかし実際には、ほとんど食欲が変わらない方もいれば、「食べても満足できない」「甘いものが頭から離れない」と悩まれる方もいます。また、同じ方でも月によって症状の強さが異なることは珍しくありません。

この違いを考えるうえで大切なのが、「脳」と「自律神経」の働きです。

実は、女性ホルモンをコントロールしている視床下部は、自律神経の司令塔でもあります。視床下部は、体温、睡眠、食欲、喉の渇き、ストレスへの反応、ホルモン分泌など、生命を維持するために欠かせない働きを24時間休むことなく調整しています。

つまり、生理前の食欲は「胃が空っぽだから食べたい」という単純なものではありません。脳が身体全体の状態を判断した結果として、「エネルギーを補給しよう」という指令を出しているのです。

ここで、もう一つ興味深いことがあります。

私たちが「お腹が空いた」と感じるタイミングは、胃の状態だけで決まるわけではありません。胃や腸から送られてくる情報に加え、血糖値、睡眠の質、ストレス、女性ホルモンの変化など、さまざまな情報を脳が総合的に判断して食欲を調節しています。

そのため、睡眠不足が続いた翌日に甘いものを食べたくなった経験はありませんか。これは気のせいではなく、睡眠不足によって食欲を高めるホルモン「グレリン」が増え、満腹感に関わるホルモン「レプチン」が低下しやすくなることが知られています。その結果、脳は「もっとエネルギーが必要だ」と判断し、高カロリーな食べ物を欲しやすくなるのです。

また、ストレスが続くと分泌されるコルチゾールというホルモンも、食欲に影響を与えることが分かっています。慢性的なストレスは、自律神経のバランスにも影響し、甘いものや脂っこいものを食べたくなる一因になると考えられています。

さらに近年では、「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」という考え方も注目されています。これは、腸と脳が神経やホルモンを介して双方向に情報をやり取りしているという考え方です。腸内環境の変化が気分や食欲に影響を与えることや、反対に強いストレスが腸の働きを変化させることも分かってきています。

つまり、生理前の過食は女性ホルモンだけで起こる現象ではなく、脳、自律神経、睡眠、ストレス、腸内環境などが複雑に影響し合った結果として現れている可能性があります。

だからこそ、「食べ過ぎてしまう自分は意志が弱い」と責める必要はありません。それは身体が何らかの変化を脳へ伝え、その情報をもとに脳が食欲を調節した結果として現れているサインなのかもしれません。

では、脳はどのようにして身体の状態を把握しているのでしょうか。そして、身体から脳へ送られる情報は、どのような経路を通って伝えられているのでしょうか。

その鍵となるのが、全身をつないでいる「神経」の働きです。カイロプラクティックでは、この神経伝達が円滑に行われることをとても大切に考えています。

■ 身体の働きを支えているのは「神経」です。カイロプラクティックが神経伝達を大切にする理由

ここまで、生理前の過食には女性ホルモンだけではなく、脳や自律神経、睡眠、ストレスなど、身体全体の働きが関係していることをお伝えしてきました。

では、脳はどのようにして身体の状態を把握し、必要な指令を出しているのでしょうか。

私たちの身体をコントロールしているのは脳です。

脳は、皮膚や筋肉、関節、内臓など全身から送られてくる膨大な情報を受け取り、「今、身体の中で何が起きているのか」を常に判断しています。そして、その判断に基づいて神経を介し、筋肉や内臓、血管、ホルモンの分泌、自律神経の働きなどを調整しています。

神経には、脳から身体へ指令を送る役割だけではなく、身体の状態を脳へ正確に伝えるという、双方向の情報伝達という重要な役割があります。

例えば、食事をすると胃や腸は「食べ物が入ってきました」という情報を脳へ伝えます。血糖値が変化すれば、その情報も脳へ届けられます。さらに、身体の疲労や睡眠不足、ストレスの状態なども、さまざまな神経やホルモンを介して脳へ伝えられています。

脳はこれらの情報を総合的に判断し、「今はエネルギーが必要なのか」「休息を優先するべきなのか」といった身体全体のバランスを調整しています。

つまり、私たちが感じる「食欲」は、胃だけで決まるものではなく、脳と身体が絶えず情報をやり取りした結果として生まれる反応の一つなのです。

カイロプラクティックでは、この神経伝達が円滑に行われることをとても大切に考えています。

私たちカイロプラクターは、背骨や骨盤を評価し、神経伝達を阻害しているサブラクセーション(根本原因)がないかを確認します。サブラクセーションとは、単に「骨がずれている」という意味ではなく、神経が本来の働きを十分に発揮しにくい状態につながる機能的な問題を指すガンステッドカイロプラクティックの考え方です。

しかし、サブラクセーション(根本原因)は、見た目だけでは判断できません。そのため前田カイロプラクティック藤沢院では、一つの検査だけで判断することはありません。

体表温度検査では、神経機能の変化が皮膚温度にどのように表れているかを客観的に確認します。

視診検査では、頭や肩、骨盤の位置だけではなく、身体全体がどのようにバランスを保とうとしているのかを観察します。

静的触診では、皮膚の質感や筋肉の緊張、熱感、浮腫感など、画像には映らない身体からの小さなシグナルを丁寧に読み取ります。

動的触診では、一つひとつの背骨や骨盤の関節が本来の動きを保っているかを確認し、どこで正常な運動が失われているのかを評価します。

さらに、当院では提携する医療機関で撮影したレントゲン画像を用いて、安全性を確認するとともに、骨格の構造や椎間板の状態を評価します。レントゲンは病名を診断するためではなく、安全にカイロプラクティックケアを行うため、そしてサブラクセーション(根本原因)の評価精度を高めるための重要な情報として活用しています。

これら5つの検査結果を照らし合わせ、複数の情報が同じ場所を示したときに初めてサブラクセーション(根本原因)を特定し、本当に必要な部位だけにアジャストメントを行います。

検査の目的は、多くの場所を施術することではありません。原因を正確に特定し、必要最小限のアジャストメントによって、脳と身体が円滑に情報をやり取りしやすい状態を目指すことにあります。

カイロプラクティックは、生理前の過食やPMSそのものを治療するものではありません。しかし、私たちは身体を部分的に見るのではなく、脳・神経・背骨・骨盤を含めた身体全体の働きを評価することが大切だと考えています。

身体には、本来、環境の変化に適応し、健康を維持しようとする力が備わっています。カイロプラクティックは、その力を発揮するために重要な神経伝達へ着目し、身体が本来の働きをしやすい状態を目指すケアです。

生理前の過食も、「意志が弱いから」ではなく、身体が発している一つのサインかもしれません。症状だけを見るのではなく、その背景にある身体全体の状態へ目を向けることが、健康を考える第一歩になると私たちは考えています。

生理前の過食は、「食べ過ぎてしまう自分が悪い」「意志が弱いから」と片付けられるものではありません。

女性ホルモンの変化に加え、脳、自律神経、睡眠、ストレス、生活習慣など、身体のさまざまな働きが複雑に関わり合った結果として現れる身体からのサインである可能性があります。

もちろん、症状の原因は一人ひとり異なります。だからこそ、「生理前だから仕方がない」と決めつけるのではなく、ご自身の身体がどのような状態にあるのかを知ることが大切です。

カイロプラクティックは、生理前の過食やPMSを直接改善することを目的としたものではありません。私たちは、脳と身体をつなぐ神経伝達に着目し、サブラクセーション(根本原因)がないかを5つの検査で丁寧に評価したうえで、本当に必要な部位だけにアジャストメントを行います。

身体をコントロールしているのは脳です。そして、脳と身体がお互いに正確な情報をやり取りするためには、神経伝達が円滑に行われることが欠かせません。私たちは、その神経伝達がスムーズに行われ、その人が本来持っている自然治癒力を十分に発揮できる身体づくりを目指しています。

生理前の過食だけではなく、生理痛やPMS、肩こり、頭痛、冷え、睡眠の質など、一見すると別々に思える不調も、身体全体の働きという視点から考えることで、新たな気づきが得られることがあります。

身体の状態を正しく知ることが健康への第一歩になるかもしれません。

藤沢市で婦人科系のお体の不調に悩まれている方からも多くご相談をいただいています。ご自身の身体について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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中島 恵

執筆者中島 恵

新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。

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