スノボで首を痛めたら?転倒後の頸部痛と長年の違和感を考える
「スノーボードで転倒してから、首の痛みがなかなか取れない」
「以前から首に違和感があったけれど、転倒をきっかけに痛みが強くなった」
「サーフィンやスノーボードなどのスポーツを続けたいのに、首や腰の不安が気になってしまう」
このような経験は、スポーツを日常的に楽しんでいる方にとって決して他人事ではありません。
スノーボードでは、転倒した際に身体へ大きな衝撃が加わることがあります。特に首を強く打ったり、身体が予想外の方向へ動いたりすると、直後はそれほど気にならなくても、時間が経ってから痛みや動かしにくさが強くなることもあります。
また、今回のように「転倒する前から首に違和感があった」という場合には、転倒だけを原因として考えてよいのか、という疑問も生まれます。普段は何となく感じている程度だった違和感が、強い衝撃をきっかけに一気に表面化することもあるためです。
さらに、首の問題を抱えている方の中には、腰や肩などにも以前から違和感や疲労感を抱えているケースがあります。デスクワークや立ち仕事などの日常生活による負担と、サーフィンやスノーボードのようなスポーツによる負荷は別々のものに見えますが、実際には一つの身体の中でつながっています。
では、スノーボードでの転倒によって首に痛みが出たとき、単純に「転倒したから首が痛くなった」と考えるだけでよいのでしょうか。転倒する以前から存在していた首の違和感や、長年の腰の重だるさには、どのような意味があるのでしょうか。
スポーツを楽しむためには、痛みが出た場所だけを見るのではなく、普段から身体にどのような負担がかかっているのか、そしてその負担に身体がどのように対応しているのかを考えることも大切です。
今回のコラムでは、スノーボードの転倒をきっかけに悪化した頸部痛の症例をもとに、スポーツによる外傷と、それ以前から積み重なっていた身体の負担との関係、そして首や腰だけにとらわれず身体全体を見ていくことの意味についてお伝えしていきます。
■ スノーボードで首を痛めるのはなぜ?転倒で頸部にかかる負担と痛みの仕組み
スノーボードでは、滑走中にバランスを崩して転倒することがあります。特にスピードが出ている状態で転倒したり、身体をひねりながら地面に衝突したりすると、首にも普段とは異なる大きな負担がかかります。
首は、頭部を支えながらさまざまな方向へ動かすことができる一方で、急激な動きや衝撃にさらされると、周囲の筋肉や靭帯などに負担が生じることがあります。転倒した瞬間に首が前後へ大きく動いたり、身体と頭の動きが異なる方向へ向かったりすると、頸椎周囲の組織に急激な力が加わることがあります。
こうした外力によって、筋肉や靭帯などの軟部組織に負担がかかると、直後から痛みが出るとは限りません。転倒した直後は興奮状態にあったり、スポーツを続けていることで痛みに気づきにくかったりすることもあります。そのため、「転んだときはそれほど痛くなかったのに、時間が経ってから首が痛くなってきた」ということもあります。
また、痛みが出ると身体は無意識にその部分を守ろうとします。首を動かすことで痛みが強くなる場合には、周囲の筋肉が緊張して動きを制限することがあります。これは、負担のかかった部分をさらに動かさないようにする身体の防御反応の一つです。
その結果、首を動かしにくくなったり、振り向くと痛みを感じたり、肩や背中まで張っているように感じたりすることがあります。スポーツを続けている場合には、首をかばった状態で身体を動かすことで、別の部位にも負担を感じることがあります。
特にスノーボードのように、転倒だけでなく、滑走中に何度も身体をひねったり、バランスを取り続けたりするスポーツでは、一度の大きな衝撃だけではなく、その後の動作も含めて身体への負担を考える必要があります。
さらに、転倒する以前から首に違和感や張りを感じていた場合には、「今回の転倒だけがすべての原因」とは限らないこともあります。もともと首や肩に負担を感じていたところへ、転倒による急激な外力が加わることで、それまで気になっていた違和感が強く感じられるようになることも考えられます。
一方で、同じような転倒をしても、強い症状が出る人もいれば、ほとんど気にならない人もいます。また、同じようにスポーツを続けていても、身体の状態によって負担の感じ方は異なります。
では、なぜ同じような衝撃や運動でも、人によってその後の痛みや違和感に違いが生まれるのでしょうか。
その背景を考えるためには、「どれくらい強い衝撃が加わったのか」だけではなく、転倒する以前から身体がどのような状態にあり、日常生活やスポーツによる負担に対してどのように適応していたのかという視点も必要になります。
なお、転倒後の首の痛みが強い場合や時間とともに悪化している場合、手足のしびれ・力が入りにくいなどの神経症状がある場合、強い頭痛やめまい、意識を失った、歩きにくいなどの症状を伴う場合には、単なる筋肉の張りと自己判断せず、医療機関で適切な評価を受けることが大切です。
スポーツによる転倒は、身体に一時的な負担を与えるだけでなく、それまで積み重なっていた身体の状態を表面化させるきっかけになることもあります。だからこそ、外傷そのものだけを見るのではなく、「その人の身体がこれまでどのような負担を受け、どのように対応してきたのか」という視点が重要になります。
■ 同じ転倒でも痛み方が違うのはなぜ?身体の「適応」と神経の働きに目を向ける
スノーボードで転倒した場合、首にどのような力が加わったのかを考えることはもちろん重要です。しかし、それだけでは「なぜこの人は強く症状を感じるのか」「なぜ以前からあった違和感が、転倒をきっかけに大きくなったのか」という疑問には十分に答えられないことがあります。
私たちの身体は、日常生活の中で常にさまざまな刺激を受けています。長時間のデスクワーク、立ち仕事、運動、睡眠不足、同じ姿勢の繰り返しなど、その内容は人によって異なります。
そして身体は、そうした環境にただ耐えているわけではありません。姿勢を調整したり、筋肉の働きを変えたり、動作の仕方を変えたりしながら、その時々の環境に適応しています。
ここで重要になるのが、神経の働きです。
身体の各部位には、筋肉や関節、皮膚などを通して、自分の身体が今どのような状態にあるのかという情報が存在しています。それらの情報は神経を介して脳へ伝えられ、脳は受け取った情報をもとに、姿勢や筋肉の働き、動き方などを調整しています。
たとえば、足元が不安定な場所を歩くとき、私たちは意識していなくても身体を細かく調整しています。スポーツでも同じで、スピードや地面の状態、身体の向きなどに応じて、姿勢や筋肉の使い方を瞬間的に変えています。
つまり、身体は「負担を受ける側」であると同時に、「その負担に対応する側」でもあります。
そのため、同じような動作や転倒を経験したとしても、身体がどのような状態にあり、そこからどのように情報を受け取り、動きを調整できているかによって、感じ方やその後の経過が異なることがあります。
これは、「身体の状態が悪かったから痛くなった」という単純な話ではありません。
むしろ、長い時間をかけて身体が環境に適応してきた結果として、本人には気づきにくい動きの癖や負担の偏りが生まれていることがあります。そこへ普段とは異なる大きな外力が加わることで、それまで身体が何とか対応していた部分に変化が生じ、違和感や痛みとして自覚されることもあります。
今回のように、転倒する以前から首に「何か詰まっているような感じ」があり、伸ばしたくなることがあった場合も、単純に「転倒によって首を痛めた」とだけ考えるのではなく、その前から身体がどのような状態にあったのかを見ることには意味があります。
また、首だけに注目すると見落としてしまうことがあります。
身体はそれぞれの部位が独立して動いているわけではありません。頭部や頸部の動きには、胸郭や肩、背中、骨盤、下肢など、さまざまな部位の動きが関係しています。スポーツでは特に、全身を連動させてバランスを保ちながら動く必要があります。
そのため、ある場所に違和感があるからといって、必ずしもその場所だけに原因があるとは限りません。少なくとも、身体全体がどのように動き、どのように環境へ対応しているのかを確認することで、症状のある場所だけでは見えにくかった身体の状態が見えてくることがあります。
こうした考え方は、カイロプラクティックが身体を見る際にも関係しています。
カイロプラクティックでは、「サブラクセーション」という概念を用いることがあります。当院では、これを神経伝達の阻害につながる身体の状態として捉えています。これは一般医学で確立された診断名ではなく、カイロプラクティック独自の考え方です。
当院では、痛みのある場所だけを追いかけるのではなく、身体から脳へ伝わる情報と、脳から身体へ送られる指令が適切に行われているかという視点から身体を評価します。
そして、必要な部位にアジャストメントを行い、神経の働きを妨げていると考えられる要素にアプローチします。目的は、痛みそのものを直接取り除くことではありません。身体が本来持っている情報のやり取りや環境への適応が行いやすい状態を整え、「治るチカラ」が働きやすい環境をつくることを大切にしています。
だからこそ、スポーツによる外傷を考えるときも、「どこが痛いのか」だけで終わらせないことが重要だと当院では考えています。
転倒という出来事は突然起こります。しかし、その瞬間だけが身体の状態をつくっているわけではありません。そこに至るまでの日常生活やスポーツ活動、身体の使い方、そしてこれまで身体がどのように環境へ適応してきたのかという積み重ねがあります。
では、実際に、転倒による頸部の痛みをきっかけにケアを始めた方の身体には、どのような変化があったのでしょうか。
次の章では、スノーボードでの転倒による首の痛みだけでなく、それ以前から抱えていた首や腰の違和感にも変化が見られた、40代男性の実際の症例をご紹介します。
■スノーボードの転倒をきっかけに、身体全体を見直すことになった40代男性
スポーツを続けていると、ある日突然起こったケガをきっかけに、それまで気にしていなかった身体の違和感が意識されるようになることがあります。
40代男性で、冬は毎年何度もスノーボードへ出かけ、夏には週に何度もサーフィンを楽しむなど、日頃から積極的に身体を動かしている方が前田カイロプラクティック藤沢院に来院されました。
もともと身体を動かすことが好きだった一方で、以前からまったく違和感がなかったわけではありません。
スノーボードで転倒する前から、首には「何かが詰まっているような感じ」があり、ときどき首を伸ばしたくなることがありました。また、中学生の頃には腰を痛めた経験があり、その後もデスクワークや立ち仕事が続くと、腰に重さや疲労感を感じることがありました。
ただ、それらは日常生活ができなくなるほどのものではなく、気になったときにストレッチをしたり、休んだりしながら過ごしていました。
そんな中、スノーボード中の転倒によって首を痛めました。
転倒直後は滑走を続けることができたものの、その後、首の痛みが強くなり、身体を動かすことに不安を感じるようになっていきました。
ご本人にとって特に大きかったのは、単に首が痛いということだけではありません。
スノーボードやサーフィンは、日常の楽しみとして長く続けてきた大切な活動でした。そのため、「このままスポーツを続けられるのだろうか」という不安が生まれ、身体を動かすことそのものに慎重になる場面もありました。
そこで、転倒後の首だけを見るのではなく、これまで感じていた違和感や、日常生活、スポーツによる身体への負担も含めて、一度身体全体の状態を確認したいと考えるようになりました。
初回来院時には、首の動作による状態だけでなく、視診、体表温度検査、静的触診、動的触診などを通して身体全体を評価し、必要に応じてレントゲン評価も行いました。
その中では、頸部や骨盤周囲の緊張や左右差など、身体のさまざまな特徴が確認されました。
ここで重要なのは、これらの所見を「首の痛みの原因」や「腰の違和感の原因」と単純に結びつけることではありません。
身体には、過去のケガ、日々の仕事、運動習慣、長時間同じ姿勢をとる生活など、さまざまな負担が積み重なっています。現在感じている症状だけではなく、そうした背景も含めて身体の状態を確認することで、自分では気づいていなかった身体の特徴に目を向けることができます。
カイロプラクティックでは、こうした評価を通して、神経機能に影響を与える要因の一つとしてサブラクセーションを捉える考え方があります。
サブラクセーションは医学的な病名ではなく、首の痛みや腰痛などの症状そのものを意味するものでもありません。カイロプラクティックでは、身体の状態を評価したうえで、神経機能を妨げる要因に対して必要なアジャストメントを行い、身体が本来持っている調整機能が働きやすい環境を整えることを考えます。
この40代男性も、身体全体の状態を確認しながらケアを続ける中で、転倒後に強く感じていた首の痛みだけでなく、以前から気になっていた腰の重さや首の「詰まっているような感じ」などにも変化を感じるようになりました。
さらに、身体の状態が整っていく中で、スポーツに対する向き合い方にも変化がみられました。
「また痛くなるかもしれない」と身体をかばうのではなく、自分の身体の状態を確認しながら、少しずつスポーツを楽しめるようになっていったのです。
このケースで考えたいのは、スポーツによるケガを、その瞬間に起きた出来事だけで考えないということです。
転倒という明確なきっかけがあったとしても、その人の身体には、それ以前からスポーツや仕事、生活習慣などによるさまざまな負担が存在していることがあります。
もちろん、それらすべてが一つの症状につながっていると考えることはできません。首の痛
▶スノボでの転倒を機に悪化した頸部の痛みと長年抱えてきた違和感の詳しい症例報告はこちら
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


