顔面神経麻痺で顔が動かない?顔の動きだけでなく身体全体から考える視点
「朝起きたら、顔の片側が動かなくなっていた」
「笑おうとしても口元が動かない」
「目を閉じたり、水を飲んだりすることまで難しくなった」
顔面神経麻痺は、突然顔の片側が動かしにくくなることで気づくことが多く、表情をつくることだけでなく、目を閉じる、口をすぼめるといった日常の動作にも影響することがあります。顔面神経は表情筋の動きを担う第7脳神経で、顔面神経麻痺にはさまざまな原因があります。そのため、突然顔が動かなくなった場合には、できるだけ早く医療機関を受診して原因を確認することが大切です。
顔の動きに変化が出ると、「問題が起きているのは顔だから、顔だけを考えればよい」と思うかもしれません。
しかし、私たちの身体は顔だけ、首だけ、骨盤だけというように、それぞれが完全に独立して働いているわけではありません。脳から全身へ、そして身体から脳へ、さまざまな情報が行き交いながら、身体はその状態を調整しています。
もちろん、顔面神経麻痺を身体のどこか一か所の問題だけで説明できるわけではありません。また、顔面神経麻痺の原因や重症度によって必要な治療も異なります。
一方で、医療機関で診断や治療を受けながら、自分の身体全体が現在どのような状態にあるのかを知ることも、自身の身体と向き合ううえで大切な視点の一つです。
では、顔の動きに異常が現れたとき、顔だけではなく身体全体を見るとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。
このコラムでは、顔面神経麻痺について基本的な身体の仕組みを整理しながら、顔の動きだけに注目するのではなく、身体全体の状態を評価することについてお伝えしていきます。
■顔面神経麻痺で、なぜ笑顔や目の動きまで変化するのか
顔の表情は、顔にあるさまざまな筋肉が、脳からの指令を受けて動くことでつくられています。その中で重要な役割を担っているのが「顔面神経」です。
顔面神経は第7脳神経とも呼ばれ、笑う、眉を動かす、目を閉じる、口をすぼめるなど、表情をつくるための表情筋を動かしています。そのため、顔面神経に何らかの障害が起こると、顔の片側が思うように動かなくなり、笑顔をつくることや目を閉じることが難しくなる場合があります。
顔面神経の働きは、単純に「顔を動かす」だけではありません。顔面神経には、涙や唾液の分泌、味覚、大きな音から内耳を守る働きなどに関係する神経線維も含まれています。そのため、顔面神経麻痺では、表情の変化に加えて、涙が出にくい、唾液が出にくい、味覚が変化する、音が響いて聞こえるといった症状を伴うこともあります。
また、顔面神経は脳から出たあと、耳の奥にある側頭骨の中を通って顔へ向かいます。この経路の途中で神経に障害が起こると、顔の筋肉へ正常に指令を伝えることが難しくなり、顔の片側に麻痺が現れることがあります。顔面神経麻痺にはベル麻痺やハント症候群、中耳炎など、さまざまな原因があります。
突然、片側の顔が動かしにくくなった場合には、「少し様子を見れば戻るかもしれない」と自己判断することは避けなければなりません。顔面神経麻痺は原因によって必要な治療が異なり、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、発症した場合にはできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診するよう案内しています。
顔面神経麻痺を考えるときに大切なのは、単に「顔の筋肉が動かなくなった」と捉えるのではなく、顔の動きを支えている神経がどのような役割を担っているのかを知ることです。
顔は身体の一部分ですが、その動きは脳と神経の働きによってコントロールされています。だからこそ、顔の動きに変化が現れたときには、症状が出ている場所だけを見るのではなく、神経を含めた身体の状態を知るという視点も重要になります。
■顔の動きだけでなく、神経と身体全体の状態を見る
顔面神経麻痺が起こると、どうしても動かなくなった顔の部分に意識が集中します。しかし、顔の動きを支えているのは表情筋だけではありません。脳からの指令を神経が伝え、その情報を受け取った筋肉が働くことで、私たちは自然に笑ったり、目を閉じたり、口を動かしたりしています。
そのため、神経の働きを考えるときには、症状が現れている場所だけを見るのではなく、脳と身体の間でどのように情報がやり取りされているのかという視点も大切になります。
もちろん、顔面神経麻痺にはさまざまな原因があり、首や骨盤など身体の一部分の状態だけで説明できるものではありません。突然顔が動かなくなった場合には、まず医療機関で原因を確認し、必要な治療を受けることが基本です。
そのうえで、身体全体の状態を確認するという考え方があります。
カイロプラクティックでは、症状が出ている部分だけを確認するのではなく、身体の姿勢や動き、筋肉や関節の状態などを含めて全身を評価します。前田カイロプラクティック藤沢院でも、視診検査、体表温度検査、静的触診、動的触診、必要に応じたレントゲン評価などを組み合わせ、身体の状態を評価しています。
カイロプラクティックでは、この評価の中で神経機能に影響を与える要因の一つとして「サブラクセーション」という概念を用います。これはカイロプラクティック独自の考え方であり、医学的に顔面神経麻痺の原因や診断名を意味するものではありません。
また、サブラクセーションがあるから顔面神経麻痺が起こる、あるいはアジャストメントによって顔面神経麻痺を直接治療できるという単純な関係でもありません。
大切なのは、顔面神経麻痺という症状だけに注目するのではなく、その人の身体が現在どのような状態にあるのかを評価することです。
例えば、長期間の仕事による負担、過去のケガ、姿勢や身体の使い方など、日常生活の中には身体に影響するさまざまな要素があります。それらを一つの原因として決めつけるのではなく、それぞれが現在の身体の状態とどのように関係しているのかを整理していくことが、全身を評価する意味につながります。
顔の動きは、顔だけで完結しているものではありません。脳と神経、筋肉、関節など、身体のさまざまな仕組みが連携することで成り立っています。
だからこそ、顔面神経麻痺を経験したときには、医療機関で原因や状態を確認することに加えて、自分の身体全体がどのような状態にあるのかを知るという視点も持っておくことが大切です。
■顔の動きの変化をきっかけに、身体全体を見直した30代男性
顔の片側が突然動かなくなると、笑顔をつくることや目を閉じることなど、これまで当たり前にできていた動作が難しくなります。見た目の変化も大きいため、身体的な不安だけでなく、仕事や人とのコミュニケーションに対する不安を感じることもあります。
神奈川県横浜市から来院された30代男性も、右側の顔面神経麻痺によって、表情をつくることや食事、飲み物を飲むことなどに不自由を感じていました。
きっかけは、新型コロナウイルス感染による発熱でした。発熱が治まった後も右耳の違和感が残り、その10日ほど後に右側の顔が動かなくなっていることに気づき、医療機関を受診したところ、右顔面神経麻痺と診断されました。
その後、医療機関で治療を受けていましたが、本人が感じる変化は乏しく、インターネットでさまざまな情報を調べる中で不安も強くなっていました。知人からの紹介をきっかけに来院され、顔の症状だけでなく、自分の身体全体が現在どのような状態なのかを知りたいという思いもありました。
初診時には、両目を同時に閉じることはできても、右目だけを閉じることが難しく、鼻や口も右側はほとんど動かせない状態でした。
一方で、身体全体を評価すると、顔以外にも後頭部や後頭下筋群の筋緊張、仙骨周辺の浮腫感などが確認されました。
そこで、顔面神経麻痺そのものをカイロプラクティックで治療するという考え方ではなく、医療機関での診断や治療を受けながら、身体全体の状態を評価していきました。
前田カイロプラクティック藤沢院では、症状が出ている場所だけを見るのではなく、視診検査、体表温度検査、静的触診、動的触診、必要に応じたレントゲン評価などを行い、その人の身体が現在どのような状態にあるのかを確認します。
このケースでも、顔だけではなく、後頭部や頸部、骨盤などを含めて身体全体の状態を確認し、神経機能に影響する可能性のある要因を評価しました。
カイロプラクティックでは、このような評価の中で「サブラクセーション」という独自の概念を用いることがあります。ただし、これは顔面神経麻痺そのものの原因や医学的な診断名を意味するものではありません。また、顔面神経麻痺の改善をサブラクセーションだけで説明できるものでもありません。
その後、この男性には顔の動きに変化がみられ、医療機関での診察でも大きく改善しているとの評価を受けました。来院時には難しかった目を閉じる動作や口の動きにも変化がみられ、日常生活の中で感じていた不自由さにも変化がみられました。
顔面神経麻痺は、原因や程度によって経過が異なり、自然経過や医療的治療など、さまざまな要素が回復に関係します。そのため、このケースの経過だけからカイロプラクティックのケアが顔面神経麻痺を改善させたと断定することはできません。
それでも、顔に症状が現れたときに、顔だけを見るのではなく、その人の身体全体を評価することには意味があります。
症状が現れている場所だけに意識を向けるのではなく、これまでの身体の負担、現在の姿勢や動き、神経や筋肉、関節などの状態を一つひとつ確認することで、自分の身体について新たな気づきを得られることがあります。
顔面神経麻痺のように突然身体の一部に変化が現れたときこそ、まず必要な医療を受けながら、自分の身体全体を知るという視点を持つことも大切です。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


