変形性膝関節症で階段がつらい?膝だけではない身体の負担を考える
「膝が痛くて階段の上り下りがつらい」
「歩くたびに痛みがあり、足を引きずるようになった」
「膝に水がたまるようになり、日常生活にも支障が出てきた」
このような膝の痛みが続くと、「原因は膝にあるのだから、膝だけを治せばよい」と考えるのが自然かもしれません。
実際に、変形性膝関節症では膝の痛みや腫れ、動かしにくさなどが起こり、症状が進むと階段の上り下りや歩行が難しくなることがあります。
しかし、膝に強い痛みが出ている方の中には、膝の問題だけでなく、長年の腰痛や過去のケガ、身体の使い方など、これまで積み重なってきた身体の負担を抱えている場合もあります。
さらに、「膝が痛くなってから眠りが浅くなった」「以前から頭痛や腰痛も気になっていた」など、本人にとっては別々に思える悩みが同時に存在していることもあります。
では、膝の痛みと、それ以前から続いていた身体の不調をどのように考えればよいのでしょうか。
膝の痛みがあるからといって、すべての不調を一つの原因で説明できるわけではありません。一方で、身体は膝だけ、腰だけ、頭だけが独立して働いているわけでもありません。歩く、立つ、座るといった日常の動作には、膝だけでなく股関節や骨盤、腰部など、身体のさまざまな部分が関わっています。
このコラムでは、変形性膝関節症による膝の痛みを一つのきっかけとして、膝だけを見るのではなく、これまでの身体の負担や日常生活との関係から、身体全体を考える視点についてお伝えしていきます。
■変形性膝関節症で、なぜ階段や歩行までつらくなるのか
膝は、立つ、歩く、座る、階段を上り下りするなど、毎日の生活で繰り返し使われる関節です。特に歩行では体重を支えながら、膝を曲げ伸ばしして衝撃を受け止める必要があります。そのため、膝に痛みや腫れ、動かしにくさが生じると、単に「膝が痛い」というだけではなく、日常生活のさまざまな動作に影響が及ぶことがあります。
変形性膝関節症では、関節軟骨の変化や関節周囲の炎症などが関係し、膝の痛みや腫れ、動かしにくさなどが生じます。初期には立ち上がりや歩き始めなど、動作の開始時に痛みを感じることがありますが、進行すると歩行や階段の上り下り、正座などが難しくなることもあります。
膝の中では、大腿骨と脛骨の間にある関節軟骨が、骨同士が直接ぶつからないように働いています。また、半月板や関節包、滑膜など、膝の動きを支えるさまざまな組織があります。変形性膝関節症では、こうした関節周囲の組織に変化が生じ、炎症や腫れ、可動域の制限などが起こることがあります。
特に「膝に水がたまる」と表現される関節液の増加は、膝の炎症に伴って起こることがあります。腫れが強くなると膝を曲げ伸ばししにくくなり、動かすこと自体が負担に感じられる場合もあります。日本整形外科学会でも、変形性膝関節症の主な症状として膝の痛みと水がたまることを挙げています。
では、なぜ階段の上り下りでは特に膝の痛みを感じやすいのでしょうか。
階段では、平地を歩くときとは異なり、身体を持ち上げたり、体重を支えながら膝を曲げたりする動作が繰り返されます。そのため、膝の痛みや動かしにくさがあると、普段は気にならない程度の負担でも強く意識することがあります。
また、膝が痛い状態が続くと、「痛くないように動こう」と無意識に身体の使い方が変わることもあります。歩幅を小さくしたり、片側に体重をかけないようにしたり、階段を避けたりすることで、膝を守ろうとする身体の反応が起こります。
こうした動き方の変化は、膝だけの問題として考える必要はありません。歩くという動作には、足部、足関節、膝、股関節、骨盤、腰部など、複数の部位が関わっています。どこか一つの部位に痛みや動かしにくさがあると、ほかの部分が動きを補うことがあります。
ただし、ここで「膝の痛みは骨盤や腰が原因」と単純に考えることも適切ではありません。変形性膝関節症には、年齢、体重、遺伝的要因、過去の外傷など、さまざまな背景が関係します。
大切なのは、膝の状態を正しく評価したうえで、膝だけでなく、歩行や立ち上がりなどの動作に身体全体がどのように関わっているのかを考えることです。
「階段がつらい」「歩くと痛い」という変化は、単なる一時的な不調として片付けるのではなく、現在の膝の状態や身体の使い方を見直すきっかけにもなります。
膝の痛みが続いている場合には、まず医療機関で状態を確認することが大切です。そのうえで、日常生活の中でどのような動作が負担になっているのか、自分の身体がどのように動いているのかを知ることが、今後の身体を考える第一歩になります。
■膝の痛みがあるときこそ、骨盤や股関節など身体全体に目を向ける
膝に痛みがあると、「膝に何が起きているのか」ということに意識が集中しやすくなります。もちろん、膝そのものの状態を確認することは大切です。変形性膝関節症が疑われる場合には、医療機関で診察を受け、必要に応じてレントゲンなどで状態を確認することが基本になります。
その一方で、私たちが立ったり歩いたりするとき、膝だけが単独で動いているわけではありません。
足を地面につけ、足関節を動かし、膝を曲げ伸ばしし、股関節や骨盤を動かしながら、上半身を支えています。さらに、身体の動きを調整するためには、筋肉や関節だけでなく、それらの情報をやり取りする神経系も関わっています。
たとえば、膝に痛みがあることで「痛くないように歩こう」とすると、歩幅や体重のかけ方が変わることがあります。すると、それまでとは異なる身体の使い方になるため、本人が意識していなくても、動作全体に変化が生じることがあります。
反対に考えれば、膝の状態だけを見ていても、その人が実際にどのように立ち、歩き、身体を動かしているのかまでは十分に分からないことがあります。
だからこそ、膝の痛みを考えるときには、膝そのものの状態を確認すると同時に、股関節や骨盤、腰部、足部などがどのように動いているのかを見ることにも意味があります。
これは「膝の痛みは腰や骨盤が原因」という意味ではありません。
変形性膝関節症には、加齢、体重、遺伝的な要因、過去の外傷など、さまざまな背景があります。また、膝の痛みがあるからといって、身体のほかの部分に異常があるとは限りません。
大切なのは、一つの部位だけを原因と決めつけることではなく、現在の身体がどのように動き、どの部分に負担がかかっているのかを整理することです。
カイロプラクティックでは、こうした考え方から、痛みを感じている場所だけではなく、身体全体の状態を評価します。
前田カイロプラクティック藤沢院では、視診、体表温度検査、静的触診、動的触診などを用いて、身体の状態を多角的に確認します。必要に応じてレントゲン評価も行い、骨格や椎間板などの状態を確認します。
さらに、カイロプラクティックでは、身体の状態を評価する際に「神経機能」という視点も大切にします。
私たちの身体では、脳と身体の各部との間で常に情報が行き来しています。関節や筋肉などから送られる情報をもとに身体の状態を把握し、それに応じて筋肉の働きや姿勢、動作などが調整されています。
そのため、身体の一部に違和感があるときも、「そこだけを見る」のではなく、身体全体の情報のやり取りや動きに目を向けることが、一つの視点になります。
カイロプラクティックでは、この評価の中で、神経機能に影響を与える要因の一つとしてサブラクセーションを捉える考え方があります。
サブラクセーションは医学的な病名ではなく、変形性膝関節症や膝の痛みそのものを意味するものでもありません。あくまでカイロプラクティック独自の考え方として、身体の状態を評価する際の一つの視点です。
そして、必要と判断された場合にアジャストメントを行い、神経機能を妨げる要因にアプローチすることで、身体が本来持っている調整機能が働きやすい環境を整えることを考えます。
膝の痛みがあるから膝だけを見る。
腰が痛いから腰だけを見る。
頭痛があるから頭だけを見る。
このように症状のある場所だけに視点を限定するのではなく、「その人の身体全体では何が起きているのか」という視点を持つことも、身体を理解するうえでは大切です。
特に、長年の腰痛や頭痛、睡眠の問題など、膝の痛みとは別に感じている不調がある場合には、それぞれを一つの原因で説明しようとするのではなく、一つひとつの状態を確認しながら、身体全体との関係を考えていく必要があります。
膝の痛みをきっかけに身体を見直すことは、「膝以外に原因を探す」ということではありません。
今の膝の状態を正しく知り、そのうえで身体全体の動きや神経機能、日常生活での負担にも目を向ける。
そのように視点を広げることで、自分では気づいていなかった身体の特徴を知るきっかけになることがあります。
■膝の痛みをきっかけに、これまでの身体の負担にも目を向けた50代女性
膝に強い痛みが出ているときでも、その方の身体にある負担が、膝だけとは限りません。これまでのケガや腰痛、日常生活での身体の使い方などを振り返ることで、現在の身体の状態をより広く捉えられることがあります。
実際に、左膝の痛みをきっかけに前田カイロプラクティック藤沢院を訪れた50代女性は、膝の症状だけでなく、以前から腰痛や頭痛、睡眠についての悩みも抱えていました。
この女性は、中学生の頃に腰を強く打った経験があり、その後から腰痛を感じるようになっていました。成人してからも、年に一度ほど急に腰が痛くなることがあり、これまでは休むことで落ち着いていたそうです。また、仕事を始めてからは夕方になると頭痛を感じることがあり、夜中に目が覚めることも習慣になっていました。
そのような中、歩いている際に方向を変えたことをきっかけに左膝を痛め、医療機関で変形性膝関節症と診断されました。膝の痛みが強くなるにつれて、歩行や階段の上り下りにも支障が出るようになり、これまで気になっていた腰や頭、睡眠の問題も含めて、自分の身体全体を見直したいと考えて来院されました。
ここで大切なのは、膝の痛みを腰痛や頭痛の「原因」と単純に結びつけることではありません。長い期間にわたって複数の身体の悩みを抱えている場合、それぞれを別々の問題として切り離すだけでなく、これまでのケガや生活習慣、身体の動かし方なども含めて、現在の状態を整理することが重要です。
当院では、症状のある膝だけを確認するのではなく、視診検査、体表温度検査、静的触診、動的触診などを行い、必要に応じてレントゲン評価も取り入れながら、身体全体の状態を評価します。
カイロプラクティックでは、こうした評価を通して、神経機能に影響を与える要因の一つとしてサブラクセーションを捉えます。ただし、サブラクセーションが変形性膝関節症や腰痛、頭痛などの病気や症状そのものを意味するわけではありません。また、一つの要因ですべての不調を説明できるわけでもありません。
膝の痛みを抱えているからこそ、膝だけを見るのではなく、「これまで身体にどのような負担が積み重なってきたのか」「現在、身体をどのように使っているのか」「ほかに気になっている不調はないか」といった視点から、自分の身体を見直してみることも大切です。
身体全体の状態を知ることは、膝の痛みだけに目を向けるのではなく、これまで気づかなかった身体からのサインを知るきっかけにもなります。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


