原因不明の足のむくみ。血液とリンパから考える「むくむ」仕組み
「夕方になると、靴下の跡がくっきり残っている。」
「足首やふくらはぎがパンパンに張って、靴まできつく感じる。」
「塩分や水分に気をつけているのに、なぜか足のむくみが続いている。」
足のむくみは、日常生活でも比較的よく経験する身体の変化です。長時間立っていた日や、反対に一日中座っていた日の夕方などに足がむくむと、「今日は歩きすぎたから」「水分を摂りすぎたから」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、そもそも「むくむ」とは、身体の中で何が起きている状態なのでしょうか。
私たちの身体の多くは水分でできていますが、その水分がすべて血管の中を流れているわけではありません。血液によって運ばれてきた水分の一部は毛細血管から組織へ移動し、細胞の周囲を満たす組織液となります。そして余分な水分は主にリンパ管によって回収され、最終的に静脈系へ戻されます。
つまり、足のむくみは単純に「身体に水が余っている」というだけではありません。血管から組織へどのくらい水分が移動するのか、そこからどのくらい回収されるのかというバランスが関係しています。そのため、水分を控えれば必ずむくみが解消する、というほど単純な仕組みではないのです。
さらに、足は心臓から離れた場所にあり、立っているときには重力の影響も受けます。下肢から血液を心臓へ戻すためには静脈の弁や筋肉の働きなども関係し、組織にある余分な水分などを回収するリンパ系も重要な役割を担っています。「足がむくんでいる」という目に見える変化の背景には、こうした身体の仕組みがあります。
一方で、むくみにはさまざまな原因があります。長時間の立位や座位による一時的なものだけでなく、静脈やリンパ系の問題、心臓や腎臓などの疾患、炎症、薬剤などが関係することもあります。特に突然強いむくみが現れた場合や、片脚だけの腫れに痛みや熱感を伴う場合、息苦しさや胸痛、動悸、尿量の変化などがある場合には、自己判断せず医療機関で適切な評価を受けることが重要です。
その一方で、必要な検査を受けても原因がはっきりせず、足のむくみが長期間続いている方もいます。藤沢市にある前田カイロプラクティック藤沢院にも、「いろいろ調べてもらったけれど、なぜ足がむくんでいるのか分からない」と不安を抱えて来院される方がいます。
今回ご紹介する50代男性も、それまで足のむくみをほとんど経験したことがなかったにもかかわらず、手術を受けたあとから突然両脚が腫れるようになりました。病院で検査を受け、自分でも半身浴や脚を高くして寝ること、塩分や水分への注意などさまざまなことを試しましたが、足のむくみが続いていました。
この症例で考えたいのは、「手術後だから」「水分が多いから」と原因を一つに決めることではありません。まず知っておきたいのは、私たちの身体では普段から血液と組織の間で水分が行き来し、その一部をリンパ系も回収しながら、全身の水分バランスが保たれているということです。
このコラムでは、原因がはっきりしないまま続いていた足のむくみの症例を通して、血液やリンパによって身体の水分がどのように移動しているのか、そして「むくむ」という身体の変化を考えるうえで大切な視点について解説していきます。
■血管から出た水分は、どのように身体の中を巡っているのでしょうか?
私たちの身体では、心臓から送り出された血液が動脈を通り、やがて非常に細い毛細血管へと流れていきます。毛細血管は単に血液を通すための細い管ではありません。血液と周囲の組織との間で、酸素や栄養素、水分などをやり取りする重要な場所でもあります。
毛細血管から組織側へ移動した水分は、細胞と細胞の間を満たす「組織液」の一部となります。私たちの細胞は血液の中に直接浮かんでいるわけではないため、血液によって運ばれてきた酸素や栄養素が組織液を介して細胞へ届けられ、細胞から出た物質も周囲の環境を通じて運ばれていきます。つまり、血管の外へ水分が出ること自体は異常ではなく、身体が正常に機能するために必要な現象です。
では、組織へ出た水分は、そのままそこにたまり続けるのでしょうか。もちろんそうではありません。毛細血管と組織との間では圧力などの影響を受けながら水分が移動しており、組織側へ移動した水分のうち余分なものは、主にリンパ管によって回収されていきます。
リンパ管は全身に張り巡らされた細い管で、組織の間にある余分な水分やタンパク質などを取り込みます。取り込まれた液体は「リンパ液」としてリンパ管の中を流れ、リンパ節などを経由しながら、最終的には静脈系へ戻されます。血液循環とリンパ系は別々に存在しているのではなく、身体の水分を循環させるうえで互いに関係しているのです。
ここで足のむくみを考えてみましょう。立っているとき、足は心臓よりも低い位置にあるため、重力の影響を受けます。下肢の静脈には血液の逆流を防ぐ弁があり、歩行などによってふくらはぎの筋肉が収縮すると、その働きも利用しながら血液を心臓の方向へ戻していきます。いわゆる「ふくらはぎは第二の心臓」と呼ばれる背景には、こうした筋ポンプ作用があります。
長時間立ち続けたり座り続けたりして脚をほとんど動かさないと、この筋ポンプ作用が働く機会が少なくなります。さらに重力の影響も加わるため、夕方になると足首やふくらはぎがむくみやすくなることがあります。朝は何ともなかったのに、夕方になると靴がきつくなったり、靴下の跡が残ったりするのには、こうした身体の仕組みも関係しています。
ただし、むくみは「血液の流れが悪い」「リンパが詰まっている」という一言だけで説明できるものではありません。毛細血管から組織へ水分が移動する量と、それを回収する仕組みとのバランスには、血管内外の圧力や血液中のタンパク質、静脈系やリンパ系の状態など複数の要素が関係しています。
そのため、足がむくんだからといって、必ずしも「水分を摂りすぎた」「リンパの流れが悪くなった」と考えることはできません。身体に必要な水分が血液から組織へ移動し、余分なものが回収される。この絶え間ない水分移動のどこかでバランスが変化した結果として、私たちの目に「むくみ」という形で現れるのです。
そして、この仕組みを理解すると、もう一つ大切なことが見えてきます。足に現れているむくみだからといって、その背景まで必ず足だけにあるとは限らないということです。
では、足の外側から見えている「むくみ」を、身体全体から考えるとはどういうことなのでしょうか。
■足のむくみなのに、なぜ身体全体の状態を考える必要があるのでしょうか?
足首やふくらはぎが腫れていると、どうしても「足の流れが悪いのではないか」と考えたくなります。しかし、身体の中を流れている血液やリンパ液は、足の中だけを循環しているわけではありません。心臓から送り出された血液は全身を巡り、静脈を通って再び心臓へ戻ります。組織からリンパ管へ回収された水分も、最終的には静脈系へ合流します。
つまり、足に現れたむくみは局所の問題によって起こることもあれば、全身の状態が足という場所に現れていることもあります。心臓や腎臓の働き、静脈やリンパ系の状態、血液中のタンパク質、炎症、薬剤など、身体の水分バランスに影響する要素は一つではありません。だからこそ、原因の分からないむくみが続いている場合には、まず医療機関で必要な検査を受け、治療を必要とする疾患が隠れていないかを確認することが重要です。
一方で、私たちの身体は、水分を単に「流している」だけでもありません。たとえば立ち上がった瞬間には重力によって血液が下半身へ移動しやすくなりますが、身体は血圧や心拍などを調整しながら、脳や全身へ必要な血液を届け続けています。運動すれば活動している組織へ必要な血流を配分し、休息時にはまた異なる状態へ切り替わります。循環は、身体の状態や環境に応じて絶えず調整されている動的な仕組みです。
こうした調整には神経系も関わっています。特に自律神経は、心拍や血管の収縮・拡張など、私たちが意識的に操作していないさまざまな身体機能の調節に関与しています。ただし、ここで注意したいのは、「むくみがある=自律神経が乱れている」と単純に結びつけることではありません。むくみには多くの原因があり、自律神経だけですべてを説明することはできないからです。
カイロプラクティックでも、足がむくんでいるからといって「むくみを流す」ことを目的にするわけではありません。前田カイロプラクティック藤沢院では、医療機関での評価やその人の既往歴なども踏まえながら、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価などを組み合わせて、その人の身体がどのような状態にあるのかを確認します。
カイロプラクティックでは、脳と身体との情報交換を妨げ、神経機能に影響を与えている状態を「サブラクセーション(神経伝達の阻害)」と捉えます。そのため、むくんでいる足そのものを直接どうにかしようとするのではなく、複数の検査結果を照らし合わせながらサブラクセーションを見極め、必要と判断した箇所へアジャストメントを行います。
アジャストメントによって余分な水分を直接押し流したり、心臓や腎臓などの働きを治療したりするわけではありません。目的は神経機能を妨げている要因を取り除き、脳と身体との情報交換が適切に行われる環境を整えることです。身体の機能を調整し、回復させていく主役は、その人自身が持っている「治るチカラ」です。
足に現れているむくみを見ることはもちろん大切です。しかし、その腫れだけを追いかけるのではなく、なぜその人の身体でむくみが続いているのかを考え、必要な医療的評価を行ったうえで、身体全体の状態を確認すること。原因がはっきりしない足のむくみを考えるときには、この順序が非常に重要になります。
■手術後から突然、両脚の強いむくみが続くようになった50代男性の症例
今回ご紹介するのは、手術を受けるまでは足のむくみをほとんど経験したことがなかった50代男性です。膵胆管の炎症に対する手術を受けたあと、術後2日頃から突然両脚が腫れるようになりました。
むくみは一時的なものではなく、朝から足首が腫れ、夕方になるとふくらはぎ全体がパンパンに張る状態が続きました。ひどい日には足の甲まで腫れ、普段履いていた靴が入らないほどでした。本人も「手術が終われば身体は元に戻っていく」と考えていただけに、それまでなかった症状が突然続くようになったことに強い不安を感じていました。
当然、このような状態で最初からカイロプラクティックだけを考えたわけではありません。病院へ相談し、別の医療機関でも検査を受けました。その過程では頻脈性不整脈が診断され、血圧も180/110mmHgと著しく高い状態が確認されました。
それでも両脚のむくみは続きました。本人も半身浴をしたり、就寝時に脚を高くしたり、塩分や水分摂取に気をつけたりと、自分でできることを試していましたが大きな変化はなく、次第に全身の重だるさや疲労感も強くなっていました。その後、知人から紹介され、前田カイロプラクティック藤沢院へ来院されました。
当院でも、「手術後に始まったから手術が原因」「脚が腫れているから脚に問題がある」と決めつけることはしませんでした。すでに受けていた医療機関での評価や身体の経過を確認したうえで、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査から身体の状態を評価しました。
その結果を照らし合わせながらサブラクセーションを見極め、必要と判断した箇所へアジャストメントを行っていきました。カイロプラクティック・ケアは、脚にたまった水分を直接流すことや、むくみという症状そのものを取り除くことを目的にしたものではありません。
ケアを継続する中で、長期間続いていた両脚のむくみに変化がみられ、足首やふくらはぎの腫れが軽減していきました。それに伴って、靴の履きにくさや全身の重だるさにも変化がみられました。詳しい検査所見や身体の変化については、個別の症例報告に残しています。
この症例だけをもって、「原因不明のむくみにはカイロプラクティックが有効」「手術後のむくみは神経が原因」と一般化することはできません。むくみには医療的な評価を必要とするさまざまな原因があり、今回の男性にも不整脈や高血圧が確認されていました。
一方で、足に現れた「むくみ」だけを見るのではなく、その人がどのような経過をたどり、どのような検査を受け、現在の身体がどのような状態にあるのかまで確認することには大きな意味があります。症状名だけから原因や対応を決めるのではなく、まず必要な医学的評価を受け、そのうえでその人自身の身体を詳しく見ること。今回の症例は、その重要性を考える一つの例です。
▶手術後から続いた原因不明の足のむくみの詳しい症例報告はこちら
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。
シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。


