2026.08.20

鉄分を摂っているのに貧血を繰り返すのはなぜ?│月経過多と自律神経の関係

カテゴリ: 健康通信
鉄分を摂っているのに貧血を繰り返すのはなぜ?│月経過多と自律神経の関係

「鉄分を意識して摂っているのに、なかなか貧血が良くならない。」
「生理のたびに出血量が多く、終わったあとは立っているだけでもつらい。」
「毎月またあの倦怠感やふらつきが来ると思うと、生理を迎えること自体が怖い。」

このような鉄欠乏性貧血や月経過多で悩んでいる女性も少なくありません。

鉄欠乏性貧血とは、身体の中の鉄が不足することで、血液中のヘモグロビンを十分につくれなくなった状態です。ヘモグロビンは全身へ酸素を運ぶ重要な役割を担っているため、不足すると疲れやすさや倦怠感、立ちくらみ、息切れ、動悸など、さまざまな症状が現れることがあります。

女性の鉄欠乏性貧血を考えるうえで、見逃すことのできないものの一つが月経です。特に月経量が多い状態が続けば、そのたびに血液とともに鉄が失われるため、鉄欠乏性貧血につながることがあります。そのため、月経量が以前より明らかに増えている場合や、強い倦怠感やふらつきなどを伴っている場合には、「生理だから仕方がない」と我慢せず、まず医療機関で原因を確認することが大切です。

今回ご紹介する症例でも、鉄欠乏性貧血と診断された40代女性が、年々増えていく月経量に悩まされていました。鉄剤は胃の不快感や吐き気によって継続できず、食事から鉄分を摂るよう心がけても、慢性的な疲労や立ちくらみ、動悸、息切れ、冷えなどが続いていました。さらに、生理の翌日には朝起き上がることさえつらいほどのふらつきや倦怠感が現れ、「このまま毎月の生理を迎えるのが怖い」と感じるまでになっていました。

鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄を補うことは重要です。しかし、月経過多によって毎月多くの鉄が失われている場合には、「鉄が足りない」という結果だけではなく、「なぜ月経量が増えているのか」という背景にも目を向ける必要があります。

もちろん、月経過多には婦人科疾患をはじめさまざまな原因が考えられるため、必要な医学的評価を受けることが大前提です。そのうえで、月経がどのような仕組みによって調整されているのかを知り、身体全体の働きという視点から考えることも大切です。

このコラムでは、鉄欠乏性貧血と月経過多の関係、そして月経と自律神経の関係について解説していきます。

■鉄欠乏性貧血はなぜ起こる?女性に多い理由と月経との関係

鉄欠乏性貧血は、身体の中に蓄えられている鉄が不足し、血液中のヘモグロビンを十分につくれなくなることで起こります。ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質で、肺から取り込んだ酸素を全身の組織へ運ぶ重要な役割を担っています。

そのため、鉄が不足してヘモグロビンが減少すると、身体の各組織へ十分な酸素を届けにくくなり、疲れやすさや倦怠感、立ちくらみ、息切れ、動悸、頭痛など、さまざまな症状が現れることがあります。

では、なぜ身体の中の鉄が不足してしまうのでしょうか。

鉄欠乏には、食事から摂取する鉄が不足している場合だけではなく、消化管から十分に吸収できていない場合や、成長期・妊娠などによって鉄の必要量が増えている場合、そして出血によって身体から鉄が失われている場合などがあります。

女性の場合、特に重要になるのが月経による出血です。月経では子宮内膜が剥がれ落ちる際に出血が起こるため、血液とともに一定量の鉄も身体から失われます。通常であれば食事などから鉄を補いながら身体の中の鉄のバランスは保たれていますが、毎月の月経量が多くなれば、身体から失われる鉄の量も増えていきます。

失われる鉄の量が補給される鉄の量を上回る状態が続けば、身体に蓄えられている鉄が少しずつ減少し、やがて鉄欠乏性貧血につながることがあります。こうした月経量が過度に多い状態を「過多月経」といいます。

過多月経では、「以前よりナプキンを交換する回数が明らかに増えた」「夜用のナプキンでも漏れてしまう」「大きな血の塊が出る」といった変化がみられることがあります。

問題なのは、月経が毎月起こるため、鉄の喪失も繰り返されるということです。一度の出血だけで急激に鉄が不足するのではなく、月経のたびに少しずつ鉄が失われることで、本人も気づかないうちに鉄不足が進行している場合があります。

そのため、鉄欠乏性貧血が確認された場合には、不足している鉄を補うと同時に、「なぜ鉄が不足したのか」という背景を確認することが重要です。特に月経量が以前より増えている場合には、子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患が隠れていることもあります。

「生理だから出血するのは当たり前」「昔から量が多いから自分にとっては普通」と自己判断するのではなく、月経量の増加や貧血症状がみられる場合には、婦人科などの医療機関で原因を確認することが大切です。

では、月経そのものは身体の中でどのように調整されているのでしょうか。

月経は子宮だけで完結している現象ではなく、脳や卵巣などが互いに連携することで周期的に調整されています。次の章では、月経を調整する仕組みから視点を広げ、月経と自律神経との関係について解説していきます。

■鉄分を補うだけではない視点―月経と自律神経の関係

月経は、子宮だけで起きている単独の現象ではありません。女性の月経周期には、脳にある視床下部や下垂体、そして卵巣が関係しており、それぞれが連携しながら周期的な変化をつくり出しています。

視床下部からの働きかけを受けて下垂体からホルモンが分泌され、その情報を受け取った卵巣からエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが分泌されます。そして、これらのホルモンが子宮内膜の増殖や変化に関わり、妊娠が成立しなかった場合には子宮内膜が剥がれ落ちて月経が起こります。

このように、脳の視床下部、下垂体、卵巣が連携して月経周期を調整する仕組みは「視床下部―下垂体―卵巣系(HPO軸)」と呼ばれています。つまり、毎月の月経は子宮だけが独立して働いた結果ではなく、脳や卵巣、子宮などが互いに関係しながら起こる身体の働きなのです。

そして、ここで注目したいのが自律神経との関係です。月経周期を直接調整する中心的な仕組みはホルモンによるHPO軸ですが、その司令塔となる視床下部は、自律神経の調整にも深く関わっています。

自律神経は、心拍や血圧、体温調節、消化、血流など、私たちが意識して動かすことのできないさまざまな身体機能を絶えず調整しています。そのため、女性ホルモンと自律神経をまったく別々のものとして考えるのではなく、どちらも身体全体の状態と関係しながら働いているものとして捉えることが大切です。

ただし、「自律神経が乱れたから月経過多になる」と単純に結びつけることはできません。月経過多には、子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患をはじめ、さまざまな原因が考えられます。そのため、月経量が明らかに増えている場合には、まず婦人科で必要な検査を受けることが重要です。

そのうえで、カイロプラクティックでは、身体全体をコントロールする神経の働きを重要視しています。身体では絶えずさまざまな情報が神経を通して脳へ送られ、脳は受け取った情報をもとに身体の状態を把握し、そのとき必要な指令を全身へ送り返しています。

カイロプラクティックでは、この神経伝達を阻害する状態を「サブラクセーション」と呼んでいます。当院では、レントゲン評価、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定などを用いて身体の状態を詳しく評価し、神経の働きを妨げているサブラクセーションを見極めます。

そして、必要な箇所へアジャストメントを行うことで神経の働きを整え、脳と身体との情報交換が適切に行われる環境をつくります。その結果として、その人自身が生まれながらに持っている「治るチカラ」が最大限に発揮できる状態を目指します。

これは、「カイロプラクティックで鉄欠乏性貧血や月経過多を直接治す」という意味ではありません。鉄欠乏性貧血や月経過多という結果だけを追いかけるのではなく、その人の身体全体がどのような状態にあるのかを詳しく評価することが、当院では大切だと考えています。

では実際に、鉄欠乏性貧血と月経過多に悩まされ、毎月の生理を迎えることが怖いと感じるまでになっていた方に、どのような経過がみられたのでしょうか。

次の章では、実際に当院へ来院された40代女性の症例をご紹介します。

■鉄欠乏性貧血と月経過多に悩まされ、毎月の生理が怖くなっていた実際の症例

実際に当院へ来院された40代の女性は、慢性的な疲労感や立ちくらみに加え、年々増えていく月経量に悩まされていました。病院では鉄欠乏性貧血と診断され、鉄剤を処方されましたが、胃の不快感や強い吐き気によって服用を継続することができませんでした。

その後は食事から鉄分を摂るよう心がけていましたが、疲労感や立ちくらみ、動悸、息切れ、冷えなどが続いていました。特につらかったのが毎月の月経で、生理の翌日には強いふらつきや倦怠感によって朝起き上がることさえつらくなり、「このまま毎月の生理を迎えるのが怖い」と感じるほど日常生活にも影響が出ていました。

当院で身体を詳しく検査すると、左仙腸関節の明らかな可動域制限、左仙骨翼と上部腰椎の浮腫、腰部起立筋や左殿筋の過緊張、骨盤部から上部腰椎にかけての体表温度の左右差など、複数の所見が確認されました。そこで、これらの検査結果からサブラクセーションを見極め、神経機能を整えることを目的としてカイロプラクティックケアを開始しました。

ケアを継続する中で、冷えや朝のふらつき、身体のだるさなどに少しずつ変化がみられるようになりました。その後、それまで多かった月経時の経血量にも変化がみられ、月経前後に感じていた強い疲労感や立ちくらみなども以前ほど気にならなくなっていきました。

この症例で重要なのは、鉄欠乏性貧血や月経過多という症状だけを追いかけるのではなく、その方の身体全体を詳しく評価したことです。当院では、症状を直接治すことを目的とするのではなく、神経の働きを妨げているサブラクセーションを見極め、必要な箇所へアジャストメントを行うことで、その人自身が持っている「治るチカラ」が最大限に発揮できる環境を整えることを大切にしています。

この方の詳しい来院経緯や検査結果、カイロプラクティックケアによる経過については、以下の症例報告で詳しくご紹介しています。

▶ 鉄欠乏性貧血と月経過多に悩まされ、毎月の生理が怖くなっていた詳しい症例報告はこちら

▶ その他の婦人科系のお悩みに関する症例報告はこちら

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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