疲れが取れないのはなぜ?回復力と神経系の意外な関係
「若い頃に比べて、疲れがなかなか取れなくなった」
「しっかり寝たはずなのに、朝から身体が重い」
「運動をした後、以前よりも回復に時間がかかる」
このような変化を感じると、「年齢のせいだから仕方がない」と考えてしまう方もいるのではないでしょうか。
日本の疲労に関する調査では、2024年に「疲れている」と回答した人が約8割にのぼっています。また、厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、20〜59歳で睡眠による休養が取れている人は73.0%でした。疲労や休養の問題は、決して一部の人だけのものではありません。
もちろん、加齢に伴って筋肉量や身体機能が変化することはあります。しかし、疲れが残る理由は年齢だけで説明できるものではありません。睡眠、身体活動、ストレス、栄養状態など、さまざまな要因が関係しています。
私たちの身体は、活動するだけでなく、休息中にも多くの働きを続けています。脳と身体をつなぐ神経系は、身体の状態を把握し、心拍や呼吸などの調整に関わる重要な仕組みの一つです。
では、身体の回復にはどのような仕組みが関わっているのでしょうか。そして、カイロプラクティックではなぜ神経系に着目しているのでしょうか。
今回のコラムでは、疲労と回復に関わる身体の仕組みを医学的な視点から解説し、神経系の働きとカイロプラクティックの専門性について考えていきます。
■ 疲労が蓄積する身体の仕組み
私たちは、仕事や家事、育児、運動など、日常のさまざまな活動を通じて心身に負荷をかけています。活動によって生じた疲労は、休息や睡眠によって回復していきます。しかし、活動量に対して休息が十分でなかったり、睡眠の質が低下したりすると、疲労が翌日以降にも残ることがあります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠は日中の活動で生じた心身の疲労を回復する機能を持つと説明されています。睡眠は単に身体を休ませる時間ではなく、脳や心血管系、代謝、内分泌、免疫、認知機能など、さまざまな働きを支える重要な休養活動です。
睡眠時間については、成人ではおおむね6時間以上を確保することが一つの目安とされています。ただし、必要な睡眠時間には個人差があり、6時間眠れば誰もが十分に回復できるというわけではありません。日中の眠気や、朝起きたときに休養が取れたと感じられるかどうかも、睡眠を考えるうえで大切な指標です。
また、睡眠は時間だけでなく、質も重要です。日本リカバリー協会が2024年に実施した全国10万人調査では、疲れている人のうち、睡眠中に目が覚めることがある人は39.4%でした。一方、元気な人では8.1%であり、約4.9倍の差がみられました。この調査は睡眠と疲労の関連を示すものであり、中途覚醒だけが疲労の原因であることを証明するものではありませんが、睡眠の状態を振り返る重要性を示しています。
さらに、身体の回復には自律神経も関わっています。自律神経は、心拍や血圧、発汗、消化など、意識しなくても行われる身体の働きを調整しています。活動時には身体が必要な働きを行えるように調整し、休息時には身体の状態に応じた機能の調整を支えています。ただし、疲労が残ることをすべて自律神経の乱れで説明できるわけではありません。
疲れが取れない背景には、睡眠不足や睡眠の質の低下、活動量、ストレス、栄養状態など、複数の要因が関係しています。まずは睡眠時間だけでなく、朝の目覚めや日中の疲労感、休息の取り方にも目を向けることが、自分の身体の状態を知る第一歩になります。
■ 脳と身体をつなぐ神経系が、回復を支えている
私たちの身体は、脳からの指令によって動くだけではありません。筋肉や関節、皮膚、内臓などから脳へ送られる情報も、身体の状態を把握し、必要な反応を調整するために重要な役割を担っています。脳と身体は神経系を通じて双方向に情報をやり取りしながら、活動や休息に対応しています。
神経系は、大きく中枢神経系と末梢神経系に分けられます。中枢神経系は脳と脊髄からなり、末梢神経系は身体の各部と中枢神経系をつないでいます。さらに末梢神経系には、筋肉や関節などからの感覚情報を伝える神経や、内臓などの働きを調整する自律神経が含まれます。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経は身体が活動する際に心拍数や血圧などを調整し、副交感神経は休息時の消化や身体の維持に関わります。ただし、両者は単純に「活動」と「休息」で切り替わるものではありません。状況に応じて互いに働きながら、身体の状態を調整しています。
また、筋肉や関節から脳へ伝わる感覚情報は、姿勢や動作を調整するためにも使われています。身体の位置や動きに関する情報を受け取り、脳や脊髄が処理することで、私たちは周囲の環境に合わせて身体を動かすことができます。このような情報のやり取りは、日常の動作だけでなく、身体の状態を理解するうえでも重要です。
疲労や回復を考える際には、神経系だけに注目するのではなく、睡眠、栄養、身体活動、ストレスなどを含めて身体全体の働きを捉えることが大切です。脳と身体は互いに情報を伝え合いながら、姿勢や動作、呼吸、心拍など、さまざまな機能を調整しています。こうした身体の仕組みを知ることは、疲れやすさや休息の取り方を振り返り、自分の身体の状態を理解するための手がかりになります。
■ 自分の身体を知ることから、回復力を考える
疲れが取れないとき、私たちは「もっと休まなければ」「体力をつけなければ」と考えることがあります。もちろん、睡眠や休息、適度な身体活動は健康を支える大切な要素です。しかし、身体の状態は一人ひとり異なり、必要な休息や日々の過ごし方も同じではありません。
カイロプラクティックは、脳と身体をつなぐ神経系に着目し、身体の構造や機能を評価する専門分野です。姿勢や関節の動き、筋肉の状態などを確認することで、身体の特徴や変化を把握する手がかりを得ます。こうした評価は、痛みや違和感のある部分だけでなく、身体全体の状態を理解するために行われます。
身体の状態を知ることは、健康について考えるうえで大切な視点です。例えば、疲れが残りやすい時期や、睡眠によって身体の感じ方が変わることに気づけば、日々の生活を振り返るきっかけになります。自分の身体にどのような変化が起きているのかを理解することで、必要な休息や生活習慣を考えることにもつながります。
ただし、疲労が続く背景には、睡眠不足やストレス、栄養状態、身体活動量など、さまざまな要因が関係しています。身体の状態を評価することだけで、疲労の原因がすべて明らかになるわけではありません。強い疲労感が長く続く場合や、十分に休んでも改善しない場合には、医療機関で原因を確認することも必要です。
カイロプラクティックが大切にしているのは、身体の状態を評価し、その人自身が自分の身体への理解を深めることです。疲れやすさを年齢だけのせいにせず、身体の変化に気づき、日々の生活を振り返る。その積み重ねが、自分らしく健やかに過ごすための健康の土台になります。
忙しい毎日のなかでも、ときには自分の身体に目を向けてみてください。今の身体の状態を知ることから、日々の回復と健康を考えていきましょう。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


