ゴルフで背中がつるのはなぜ?慢性腰痛とパフォーマンス低下の関係
「ゴルフのスイングをすると、背中が突然つることがある」
「以前よりスイングが思うようにできず、プレーの途中で身体が気になってしまう」
「長年腰痛を抱えていて、ゴルフだけでなく仕事や日常生活でも腰の重だるさを感じる」
このような悩みを抱えながら、ゴルフを続けている方も少なくありません。
特に、デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとる生活が続いていると、肩や背中、腰まわりに負担が蓄積しやすくなります。そこへゴルフのスイングのような大きな回旋運動が加わることで、普段は気にならなかった身体の不調がプレー中に表れることもあります。
しかし、背中がつるからといって、必ずしも背中の筋肉だけに問題があるとは限りません。また、長年腰痛がある場合も、「腰が悪いからゴルフが思うようにできない」と、痛みのある場所だけに原因を求めてしまいがちです。
では、同じようにゴルフをしていても、背中がつりやすい人とそうでない人がいるのはなぜなのでしょうか。長年の腰痛や日常生活での身体の使い方は、ゴルフのスイングや身体の動きにどのような影響を与えるのでしょうか。
身体は一つの部位だけで動いているわけではありません。背骨や骨盤、肩や股関節などが連動しながら動くことで、効率よく身体を使うことができます。そのため、スポーツ時のパフォーマンスを考えるときには、痛みが出ている場所だけでなく、身体全体がどのように動き、負担に適応しているのかを見ることも重要になります。
今回のコラムでは、ゴルフスイング時に起こる背中のつりと慢性的な腰痛に注目しながら、日常生活での身体への負担がスポーツ時の動きにどのようにつながるのか、そして身体全体の状態を見ながらケアすることの意味についてお伝えしていきます。
■ ゴルフで背中がつるのはなぜ?スイングに必要な身体の連動
ゴルフのスイングでは、腕だけを動かしているように見えて、実際には身体のさまざまな部位が連動しています。足で地面を捉え、股関節や骨盤を動かし、その動きが体幹へ伝わり、背骨や肩甲骨、腕へとつながっていくことで、一連のスイングがつくられます。
特に重要なのが、身体を「ひねる」動きです。テイクバックでは身体を後方へ回旋させ、そこから切り返し、ダウンスイングでは下半身から生まれた動きを上半身へ伝えながらクラブを振り下ろします。インパクトからフォロースルーにかけても身体の回旋は続くため、背中や腰には繰り返し回旋する負荷が加わります。
このとき、身体の各部位がスムーズに動いていれば、一つの場所に負担が集中することを避けながら力を伝えることができます。しかし、股関節や胸椎、肩甲骨などの動きが十分でなかったり、骨盤と上半身の連動がうまくいかなかったりすると、別の部位がその動きを補わなければなりません。
たとえば、股関節の動きが制限されている状態で身体を大きく回そうとすると、腰や背中で必要以上に回旋をつくろうとすることがあります。また、長時間のデスクワークによって同じ姿勢が続いている場合には、胸郭や肩まわりが動かしにくくなり、スイングの際に背中や腰へ負担が集中することも考えられます。
こうした状態では、筋肉が単純に「弱い」というだけではなく、身体を安定させながら動かすために、特定の筋肉が必要以上に働き続けることがあります。ゴルフのように同じ動作を繰り返すスポーツでは、その負担が積み重なることで、プレー中に背中の張りや痛み、筋肉が突然つるような感覚につながる場合があります。
また、「背中がつる」という症状が出たとき、背中の筋肉だけに原因があるとは限りません。筋肉のけいれんや痛みには、疲労、水分・電解質の状態、運動量、準備運動、筋肉の使い方など、さまざまな要因が関係します。普段より長くプレーした日や、連続してラウンドした日などに症状が出やすいのであれば、その日の身体の使い方や疲労の蓄積も振り返る必要があります。
さらに、ゴルフのパフォーマンス低下も、痛みだけで説明できるものではありません。
以前は無意識にできていたスイングが、身体のどこかに不安を感じることで小さくなったり、インパクトの瞬間に力を抜いてしまったりすることがあります。痛みを避けようとすることで身体の動かし方が変化し、それがさらに別の部位への負担につながることもあります。
つまり、ゴルフで背中がつる、腰が痛い、スイングが思うようにできないという問題を考えるときには、「どの筋肉が痛いのか」だけではなく、「身体全体がどのように動いているのか」を見ることが大切です。
そして、ここで一つ考えてみたいことがあります。
同じようにデスクワークをして、同じようにゴルフをしている人でも、背中や腰に強い負担を感じる人と、ほとんど不調を感じない人がいます。単純に「ゴルフをしているから」「年齢のせいだから」「筋肉が硬いから」だけでは説明できない違いが、そこにはあるのかもしれません。
では、身体に同じような負荷がかかったとしても、なぜ人によって負担の感じ方や動き方に違いが生まれるのでしょうか。
その違いを考えるためには、筋肉や関節だけではなく、身体全体が外からの刺激や動きにどのように適応しているのかという視点が必要になります。
■ 同じようにゴルフをしても痛みが違うのはなぜ?身体の「適応」と神経の働き
ゴルフで背中や腰に負担がかかると聞くと、「スイングのフォームが悪い」「筋肉が硬い」「体幹が弱い」といった原因を思い浮かべるかもしれません。もちろん、身体の使い方や筋力、柔軟性などは動作に影響します。しかし、それだけですべての人の症状を説明できるわけではありません。
同じ年代で、同じくらいの頻度でゴルフをしていても、背中がつりやすい人もいれば、ほとんど問題なくプレーできる人もいます。また、同じようにデスクワークをしていても、肩や腰に強い負担を感じる人と、そうでない人がいます。
この違いを考えるうえで重要になるのが、身体の「適応」という考え方です。
私たちの身体は、常に外部からさまざまな刺激を受けています。座る、立つ、歩く、走る、物を持つ、スポーツをするといった動作だけでなく、睡眠不足や精神的な緊張、仕事による疲労なども身体にとっては環境の変化です。
身体は、それらの変化に合わせて筋肉の緊張を調整したり、姿勢を変えたり、呼吸や心拍を変化させたりしながら、その時々の環境に対応しています。
その働きには、神経系が大きく関わっています。
たとえば、身体を動かすときには、筋肉や関節などから「今、身体がどのような位置にあるのか」「どの程度動いているのか」といった情報が神経を通じて脳へ送られます。脳はこうした情報を受け取り、状況に応じて身体を動かすための指令を送り返します。
ゴルフのスイングでも同じです。足元で地面を捉え、骨盤を動かし、体幹を回旋させ、肩や腕を動かすという一連の動作を、身体はそれぞれ独立して行っているわけではありません。さまざまな部位から入ってくる情報をもとに、脳が身体の状態を把握しながら動作を調整しています。
この情報のやり取りがスムーズに行われているかどうかは、身体が環境に適応していくうえで重要な要素の一つです。
たとえば、仕事で長時間座っている状態が続けば、身体はその姿勢に適応しようとします。しかし、それが長期間続けば、特定の筋肉や関節に負担が偏り、身体の動かし方そのものが変化していくことがあります。
その状態でゴルフをすると、普段の生活では何とか対応できていた身体の負担が、スイングという大きな動作によって表面化することがあります。
ここで重要なのは、「負担があること」と「症状が出ること」は必ずしも同じではないということです。
身体には、ある程度の負担に対応する能力があります。多少疲れていても休めば回復できる場合もあれば、同じ負担が続くことで身体がうまく適応できなくなり、痛みや張り、動かしにくさなどとして現れる場合もあります。
つまり、ゴルフで背中がつるという現象を考えるときにも、「スイング中に背中へどれだけ負担がかかったか」だけを見るのではなく、「その負担に対して身体がどのように対応していたのか」という視点が必要になります。
カイロプラクティックでは、こうした身体と神経の関係を重視します。
その中で用いられる考え方の一つが「サブラクセーション(神経伝達の阻害)」です。これは、背骨や関節などの機能的な問題によって、身体から脳へ、あるいは脳から身体へと行われる情報のやり取りに影響を与える状態として捉える、カイロプラクティック独自の考え方です。
当院では、痛みが出ている背中だけを見るのではなく、身体全体の状態を評価します。視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、必要に応じたレントゲン評価などを通して、背骨や骨盤がどのような状態にあり、身体がどのように動いているのかを確認していきます。
そして、必要な部位にアジャストメントを行い、神経の働きを妨げる要因にアプローチすることで、身体と脳の情報交換が適切に行われやすい環境をつくることを目指します。
これは、「背中の筋肉を緩めればゴルフのパフォーマンスが上がる」という単純な話ではありません。
身体が本来持っている調整能力を発揮しやすい状態をつくり、そのうえで日常生活やスポーツによる負担に対応できる身体を目指していくという考え方です。
長時間のデスクワークを続けながらゴルフを楽しむ方であれば、仕事中の姿勢とゴルフのスイングを別々の問題として考えるのではなく、一つの身体の状態として捉えてみることも大切です。
では、実際に長年のデスクワークによる肩こりや30年以上続く腰痛を抱えながら、ゴルフ中の背中のつりに悩んでいた方は、身体の状態をどのように変えていったのでしょうか。
次に、実際の症例を通して、その経過を見ていきます。
■ 30年来の腰痛とゴルフ中の背中のつりが変化した50代男性の症例
今回ご紹介するのは、神奈川県鎌倉市から来院された50代男性の症例です。
長年デスクワークを中心とした仕事を続ける一方、業務上歩く機会も多く、日常的に身体の一部へ負担が偏りやすい生活を送られていました。また、趣味としてゴルフを定期的に楽しんでいましたが、ここ数年はラウンド中に背中の筋肉が頻繁につるようになり、思うようにプレーできないことが悩みになっていました。
もともと両肩のこりも慢性的にあり、仕事が続いた後には肩まわりの不快感を感じていました。さらに腰については、過去の椎間板ヘルニアやぎっくり腰をきっかけに、30年以上にわたって痛みを抱えていました。長時間の立ち仕事や作業の後には、腰の重だるさや疲労感が強くなることもあり、ゴルフだけでなく日常生活の中でも身体への不安を感じる状態でした。
これまでにもマッサージや整体、ストレッチなどを利用し、筋肉の緊張をほぐすケアを続けていました。しかし、その場では楽になっても、ゴルフ中の背中のつりや長年の腰の不調が解消されるまでには至りませんでした。
そこで、筋肉だけではなく、身体全体の状態や神経の働きという別の視点から身体を見直したいと考え、当院へ来院されました。
初診時には、頸部から肩にかけての過緊張、左仙腸関節の可動域制限、左腰部脊柱起立筋の緊張などが確認されました。また、レントゲン評価では腰部や頸部に長年の経過をうかがわせる変化が確認され、頸椎本来の前弯カーブが減少した状態もみられました。
本来であれば初期集中ケアとして週3回程度の来院が推奨される状態でしたが、仕事などの都合もあり、週1回のペースでアジャストメントを開始しました。
ケアを継続する中で、まず変化を感じられたのは腰まわりでした。
4回目のアジャストメントを迎える頃には、それまで長く続いていた腰周囲の筋緊張が徐々に和らぎ、骨盤まわりの動きにも変化がみられました。姿勢を変えるときや歩き始めに感じていた腰のこわばりが軽減し、長時間のデスクワークを終えた後でも以前より身体を動かしやすくなったと実感されていました。
さらにケアを続け、8回目の頃には、仕事が忙しくデスクワークが増えた時期や、2日連続でゴルフを行ったことで筋肉痛が出ることはあったものの、以前のように骨盤まわりの状態が大きく崩れることはありませんでした。
特に大きかったのが、30年以上続いていた腰痛への変化です。
長時間立っていたり、歩いたりした後に感じていた腰の重だるさが軽減し、立っているときも座っているときも以前より楽に感じられるようになりました。長年当たり前のように存在していた腰の不調が、少しずつ日常生活の中で気にならなくなっていったのです。
そして、さらにケアを継続する中で、ゴルフにも変化が現れました。
12回目のアジャストメントを迎える頃には、骨盤や体幹の連動性が安定してきたことで、ゴルフのスイング中に頻繁に起こっていた背中のつりが大幅に減少しました。
以前は「また背中がつるのではないか」という不安を抱えながらプレーすることもありましたが、その不安を気にせずスイングできる場面が増え、ゴルフそのものをより楽しめるようになっていきました。
24週目、15回目のアジャストメントを迎えた頃には、歩く量が多い日やゴルフのラウンド後でも、以前と比べて身体の疲労からの回復が早くなったと感じられていました。
そして、30年以上続いていた腰痛も、普段の生活ではほとんど気にならないレベルまで変化しました。
ここで注目したいのは、単に「腰が楽になった」「背中がつらなくなった」ということだけではありません。
この方が求めていたのは、痛みを一時的に和らげることだけではなく、仕事を続けながら、好きなゴルフをできるだけ不安なく楽しめる身体を取り戻すことでした。
実際にケアを継続することで、日常生活で腰を意識する場面が減り、ゴルフ中の背中のつりも抑えられるようになりました。その結果、身体への不安に気を取られることなく、スポーツを楽しむ時間を取り戻すことにつながっています。
もちろん、一つの症例だけから、すべての腰痛や背中の痛みが同じ経過をたどるとは言えません。また、ゴルフ中の背中のつりには、運動量や疲労、水分・電解質の状態、筋肉の使い方など、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、症状が出た場所だけを見るのではなく、日常生活でどのような負担がかかっているのか、身体全体がどのように動いているのか、そしてその負担に身体がどのように対応しているのかを確認することが大切です。
長年の腰痛がある方や、ゴルフをすると背中や腰に違和感が出る方も、「年齢だから仕方がない」「ゴルフを続けている以上は仕方がない」と諦める前に、一度ご自身の身体の状態を見直してみることをおすすめします。
痛みをなくすことだけをゴールにするのではなく、仕事や趣味、スポーツなど、その人が大切にしている生活をできるだけ長く楽しめる身体を目指すこと。それも、身体をケアする大切な意味の一つだと考えています。
▶ゴルフスイング時の背部痛(背中のつり)とパフォーマンス低下・30年来の腰痛の詳しい症例報告はこちら
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


