ケガが治っても不安が残るのはなぜ?身体全体から考える回復とカイロプラクティック
「足首を捻挫してから、何度も同じケガを繰り返している。」
「肉離れは治ったはずなのに、思うように身体が動かない。」
「痛みはなくなったのに、以前のようなパフォーマンスが戻らない。」
スポーツや日常生活の中でケガを経験すると、多くの方は痛めた場所に意識が向きます。
もちろん、損傷した組織が回復することはとても大切です。しかし、ケガをきっかけに身体の使い方が変わったり、別の場所へ負担がかかったりすることで、その後のコンディションに影響を及ぼすこともあります。
一方で、同じようなケガをしても順調に競技へ復帰する人がいる一方、同じ部位を繰り返し痛めたり、別の場所に不調が現れたりする人もいます。その違いは、単にケガの大きさだけで説明できるのでしょうか。もしかすると、痛めた場所だけではなく、身体全体の状態や脳と身体をつなぐ神経の働きという視点も大切なのかもしれません。
今回のコラムでは、ケガと身体全体の関係について、カイロプラクティックではどのような視点で身体を評価しているのかをお伝えしていきます。
■ ケガが「治る」とは、どのような状態をいうのでしょうか?
スポーツや日常生活の中でケガをすると、多くの方は痛みがなくなることを回復の目安として考えます。
例えば、捻挫や肉離れ、打撲などでは、痛みが軽減し、日常生活に支障がなくなると「もう治った」と感じることも少なくありません。
実際に、ケガをした組織は炎症期・修復期・再構築期という過程を経ながら少しずつ回復していきます。この期間はケガの種類や程度によって異なりますが、身体は傷ついた組織を修復し、本来の状態へ近づけようと働き続けています。
しかし、「組織が回復したこと」と「身体が元の状態に戻ったこと」は、必ずしも同じ意味ではありません。ケガをすると、痛みを避けようとして無意識に身体の使い方が変わることがあります。例えば、足首を捻挫した後に反対側の脚へ体重をかける癖がついたり、肩を痛めた後に腕をかばう動きが続いたりすることは珍しくありません。
こうした身体の変化は、回復の過程では自然な反応です。しかし、その状態が長く続くことで、特定の部位へ負担が集中したり、本来とは異なる動きが習慣になったりすることがあります。また、スポーツでは「痛みがなくなったから復帰する」という判断だけでは十分とはいえません。
競技では、走る・跳ぶ・切り返す・投げるなど、全身が連動した複雑な動作が求められます。そのため、痛みがなくなっていても、身体全体の動きやバランスが十分に回復していなければ、本来のパフォーマンスを発揮しにくかったり、再び同じ場所へ負担がかかったりする可能性があります。
つまり、ケガからの回復とは、傷ついた組織が修復されることだけではなく、身体が本来の機能を取り戻し、安心して日常生活やスポーツに取り組める状態を目指すことも大切です。
では、そのためには痛めた場所だけを見れば十分なのでしょうか。
次の章では、「ケガをした場所」だけでは説明できない身体全体のつながりについて、もう少し詳しく考えていきます。
■ 本当にケガをした場所だけを見れば十分なのでしょうか?
ケガをすると、多くの場合は痛みがある場所に注目します。
もちろん、損傷した組織の状態を確認し、適切な処置やリハビリを行うことはとても重要です。しかし、それだけで「なぜケガをしたのか」「なぜ同じケガを繰り返してしまうのか」を十分に説明できるとは限りません。
例えば、足首を捻挫した選手が、その後も同じ足首を繰り返し痛めてしまうことがあります。一方で、同じようなケガをしても再発することなく競技へ復帰する選手もいます。
この違いは何なのでしょうか。
近年のスポーツ医学では、ケガは一つの原因だけで起こるものではなく、複数の要因が重なり合って発生すると考えられています。筋力や柔軟性、関節の可動域、フォーム、疲労の蓄積、睡眠や栄養状態、競技特性など、さまざまな要素が影響し合いながら身体には負担がかかっています。
さらに、人の身体は一つひとつの部位が独立して働いているわけではありません。歩く、走る、投げる、ジャンプをするといった動作は、足元から体幹、そして上半身までが連動することで成り立っています。もし一つの関節や筋肉の働きが十分に発揮できなくなると、その不足を別の部位が補おうとします。この「代償動作」は一時的には身体を守るための大切な仕組みですが、長期間続くことで、本来負担が集中しないはずの場所へ過剰なストレスがかかり、新たな痛みや再発につながることがあります。
また、身体を思い通りに動かすためには、筋肉や関節だけではなく、それらをコントロールする脳と神経の働きも欠かせません。脳は、目や耳、筋肉、関節、皮膚など全身から送られてくる情報を瞬時に処理し、「どの筋肉を、どのくらい、どの順番で動かすか」を絶えず調整しています。
つまり、ケガをした場所だけを見るのではなく、「身体全体がどのように連動しているのか」「脳と身体が円滑に情報をやり取りできているのか」という視点を持つことも、コンディショニングを考える上では大切になります。
では、カイロプラクティックでは、この脳と神経の働きをどのように捉え、身体全体をどのように評価しているのでしょうか。
次の章では、前田カイロプラクティック藤沢院が大切にしている考え方について詳しくお伝えします。
■ ケガと向き合うだけではなく、「身体全体」と向き合うという考え方
カイロプラクティックが大切にしているのは、「なぜその場所へ負担が集中したのか」という視点です。
人の身体は、それぞれの部位が独立して働いているのではなく、脳を中心に神経を介して全身が連携しながら機能しています。歩く、走る、投げる、跳ぶといった何気ない動作も、脳が身体の状態を把握し、その情報をもとに筋肉や関節へ指令を送り続けています。この情報のやり取りが円滑に行われることで、私たちは環境の変化に適応し、身体のバランスを保ちながら生活やスポーツに取り組むことができます。
しかし、ケガを経験すると、身体は患部を守ろうとして無意識のうちに動きを変えたり、別の部位がその働きを補ったりします。
これは身体が自らを守るための大切な適応反応です。
一方で、その状態が長く続くと、本来の動きとの違いが積み重なり、結果として別の場所に負担がかかったり、思うようなパフォーマンスを発揮しにくくなったりすることがあります。だからこそ、カイロプラクティックでは「痛い場所だけ」に目を向けるのではなく、脳と身体をつなぐ神経機能や、身体全体がどのように協調して働いているのかという視点を大切にしています。
私たちの目的は、痛みだけを追いかけることではありません。
身体が本来持っている自然治癒力や環境へ適応する力が発揮されやすい状態を目指し、一人ひとりが持つ身体の可能性を引き出すことです。
ケガは、決して「その場所だけ」の問題ではないかもしれません。身体全体の状態を知ることは、再び安心して日常生活やスポーツに取り組むための大切な一歩になると私たちは考えています。ケガをきっかけに身体のバランスが変化し、不調やパフォーマンスの低下に悩まれていた方も少なくありません。
実際に当院へご相談いただいた方の経過や身体の変化については、症例報告で詳しくご紹介しています。
「自分と似たケースがあるかもしれない」と感じた方は、ぜひ実際の症例もご覧ください。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


