腰椎分離症なのに痛くない人もいるのはなぜ?│「骨が分離している=腰痛」とは限りません
「腰椎分離症と診断されたけれど、この腰痛はもう良くならないのだろうか。」
「骨が分離していると言われてから、腰を動かすことが怖くなった。」
「このまま悪化して、いつか手術が必要になるのではないか。」
腰椎分離症と診断され、このような不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
腰椎分離症とは、腰椎の後方にある椎弓の一部に骨性の分離が生じている状態です。特に成長期にスポーツをしていた人にみられることが多く、腰を繰り返し反らしたり、ひねったりする動作による負担が蓄積することで、疲労骨折のような形で生じると考えられています。腰痛をきっかけに整形外科を受診し、レントゲンやCTなどの画像検査によって初めて腰椎分離症が見つかることもあります。
ここで大切なのは、「腰椎が分離している」という画像上の所見と、「現在感じている腰痛」を必ずしも同じものとして考えないことです。実際には、腰椎に分離があっても腰痛を感じることなく生活している人もいます。では、なぜ同じように腰椎に分離があっても、長年腰痛に悩まされる人がいる一方で、ほとんど痛みを感じない人もいるのでしょうか。
今回ご紹介する症例は、腰椎分離症と診断され、10年以上にわたって慢性的な腰痛に悩まされていた50代女性です。痛み止めや湿布などで対処しながら生活を続けていましたが、再び歩けないほどの激しい腰痛を発症し、「いよいよ手術しかないのではないか」と考えるほど不安を抱えていました。
しかし、当院で身体を詳しく検査すると、画像上で確認された腰椎5番の分離だけではなく、右仙腸関節の可動域制限や体表温度の左右差、浮腫、筋肉の過緊張なども確認されました。腰椎分離症という診断名だけを見るのではなく、その人の身体が現在どのような状態にあるのか。この視点を持つことが、長期間続く腰痛を考えるうえでは重要です。
このコラムでは、腰椎分離症とはどのような状態なのか、そして腰椎に分離があっても痛くない人がいるのはなぜなのかについて解説していきます。
■腰椎分離症とはどのような状態なのでしょうか?
腰椎分離症とは、腰椎の後方にある椎弓の一部、特に上下の関節突起の間に骨性の分離が生じている状態です。腰椎は5つの椎骨から構成されていますが、分離症は特に第5腰椎に多くみられます。
腰椎分離症は、成長期に繰り返し腰へ負担が加わることで生じるケースが多いと考えられています。野球やサッカー、バスケットボール、バレーボール、体操など、腰を反らしたり、ひねったりする動作を繰り返すスポーツでは、まだ成長段階にある骨の一部へ負担が集中します。その結果、疲労骨折のような形で分離が生じることがあります。
発症初期には、運動中や運動後に腰が痛む、腰を反らしたときに痛みが強くなるといった症状がみられることがあります。一方で、強い症状が出ないまま経過するケースもあり、本人が分離症に気づかないまま成人し、別のきっかけで画像検査を受けた際に初めて分離が確認されることもあります。
腰椎分離症の状態を確認するためには、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査が用いられます。特に成長期の早い段階で発見された場合には、運動を制限するなどして骨癒合を目指すことがあります。一方、成人になってから確認される腰椎分離症では、すでに分離部分が偽関節化し、骨性の分離がそのまま残っているケースもあります。
ここで重要なのは、画像検査によって「腰椎分離症がある」と確認されたことと、「現在感じている腰痛」を分けて考えることです。腰椎分離症によって腰痛が生じるケースがある一方で、腰椎に分離があっても痛みを感じることなく生活している人もいます。
つまり、画像上で分離が確認されたという事実だけでは、その人が現在感じている腰痛のすべてを説明できるとは限りません。では、同じように腰椎に分離が存在していても、腰痛に悩まされる人と、ほとんど痛みを感じない人がいるのはなぜなのでしょうか。
次の章では、画像に写る腰椎の「構造」と、実際に身体がどのように働いているのかという「機能」の違いから、その理由について考えていきます。
■腰椎が分離していても痛くない人がいるのはなぜ?
腰椎分離症と診断されると、「骨が分離しているのだから、腰が痛くなるのは当然だ」と考えてしまうかもしれません。しかし、腰椎に分離が確認されていても、すべての人が腰痛を感じているわけではありません。ここで重要になるのが、画像に写る「構造」と、実際の身体の「機能」を分けて考えることです。
レントゲンやCTなどの画像検査からは、腰椎の分離や骨の変形、椎間板の状態など、身体の構造に関する重要な情報を得ることができます。一方で、私たちが立つ、座る、歩く、身体を曲げるといった動作では、腰椎だけではなく、骨盤や仙腸関節、股関節などが連動し、それぞれの関節や筋肉が協調して働いています。
そのため、画像上では同じような腰椎分離症が確認されていても、身体全体がどのように機能しているかによって状態は異なります。腰椎に分離が残っていても、周囲の関節や筋肉が適切に働き、身体にかかる負担を分散できている人もいれば、どこかの機能が低下することで特定の場所へ負担が集中している人もいます。
これは、画像検査が重要ではないという意味ではありません。当院でもレントゲン評価は非常に重要な検査の一つです。大切なのは、画像から得られる構造上の情報だけで判断するのではなく、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定などから得られる情報も組み合わせ、その人の身体で実際に何が起きているのかを総合的に評価することです。
そしてカイロプラクティックでは、身体の機能を考えるうえで神経の働きを重要視しています。脳は身体から送られてくる情報を受け取り、その情報をもとに身体の状態を把握し、筋肉や関節をはじめとする全身へ必要な指令を送り続けています。この脳と身体との情報交換を妨げる状態を、カイロプラクティックでは「サブラクセーション」と呼んでいます。
当院が目的としているのは、分離している腰椎を元通りにつなげることでも、腰痛だけを追いかけることでもありません。複数の検査によってサブラクセーションを見極め、必要な箇所へアジャストメントを行うことで神経の働きを整え、脳と身体との情報交換が適切に行われる環境をつくります。そして、その人自身が生まれながらに持っている「治るチカラ」が最大限に発揮できる状態を目指します。
画像に腰椎分離症が残っているからといって、それだけで身体の可能性まで決まるわけではありません。大切なのは診断名だけを見るのではなく、現在その人の身体がどのような状態にあり、どのように機能しているのかを確認することです。
では実際に、腰椎分離症と診断され、10年以上にわたって慢性的な腰痛に悩まされていた方を当院ではどのように評価したのでしょうか。次の章では、実際の症例をご紹介します。
■腰椎分離症による慢性腰痛で、手術まで考えていた実際の症例
実際に当院へ来院された50代の女性は、10年以上にわたって慢性的な腰痛に悩まされていました。40代になった頃から腰の重だるさや鈍い痛みを感じるようになり、ある日、布団から起き上がろうとした瞬間に激痛が走って動けなくなりました。整形外科を受診したところ、「腰椎5番の分離症」と診断され、その後は痛み止めを服用しながら生活を続けていました。
それから10年以上が経過した頃、5年ぶりに再び歩けないほどの激しい腰痛を発症しました。長時間座っていると腰の奥が重くなり、寝返りを打つだけでも痛みで目が覚める状態となり、「いよいよ手術しかないのか」と考えるほど不安を抱えていました。そんなとき、パート先の同僚から当院を紹介され、「手術をする前に、できることは全部試してみよう」という思いで来院されました。
当院で検査を行うと、画像上では腰椎5番の分離が確認されましたが、それだけではありませんでした。右仙腸関節には明らかな可動域制限があり、右上後腸骨棘上端内縁と腰椎5番には強い浮腫、腰部起立筋には過緊張が確認されました。また、体表温度検査でも下部腰椎から骨盤部にかけて左右差がみられました。
そこで当院では、腰椎の分離そのものを元に戻そうとするのではなく、複数の検査からサブラクセーションを見極め、神経機能を整えることを目的としてカイロプラクティックケアを開始しました。
ケアを継続する中で、朝起き上がる際の痛みや夜間の寝返りに変化がみられ、次第に歩ける距離も伸びていきました。その後は長時間座っていても腰痛が出にくくなり、朝の動き出しや家事もスムーズに行えるようになりました。14週目には痛みも落ち着き、久しぶりに家族とウォーキングを楽しめるまでになり、「もう手術のことを考えなくて済むと思うと本当に気が楽になった」と話されていました。
この症例で重要なのは、画像上の腰椎分離そのものがなくなったわけではないということです。腰椎分離症という診断名だけで身体の状態を判断するのではなく、実際に身体がどのように機能しているのかを詳しく評価し、神経の働きを整えることで、その人自身が持っている「治るチカラ」が最大限に発揮できる環境をつくることが大切だと考えています。
この症例の詳しい来院経緯や検査結果、ケアの経過については、以下の症例報告で詳しくご紹介しています。
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。
シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。


