慢性腰痛で座るのも眠るのもつらい。姿勢を変えても痛みから逃れられない理由
「仕事中、椅子に座っているだけで腰がつらい。」
「立ち上がって歩いてみても、今度は歩くことがつらい。」
「夜になって横になっても楽にならず、寝返りのたびに痛みで目が覚める。」
慢性的な腰痛というと、「長く座っていると腰が重い」「疲れた日の夕方に痛む」といった状態を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし腰痛が長く続く中で、座っていても、立っていても、歩いていても、さらには横になっていても痛みを感じるようになることがあります。
こうなると、「座っているのが悪いなら立てばいい」「立っているのがつらいなら横になればいい」という単純な話ではなくなります。身体への負担は姿勢や動作によって変わるはずなのに、なぜ姿勢を変えても痛みから逃れられなくなってしまうのでしょうか。
腰痛が続くと、「この姿勢なら大丈夫」という場所を探すように、何度も座り直したり、立ったり、横になったりすることがあります。さらに夜まで痛みが続けば睡眠にも影響し、翌朝も腰のこわばりや痛みを抱えたまま一日が始まります。腰痛が単に「腰が痛い」という問題ではなく、仕事、移動、睡眠といった生活そのものを制限する状態へ変わっていくこともあります。
もちろん、夜間にも強い腰痛が続く場合や、発熱、原因不明の体重減少、排尿・排便の異常、脚の著しい筋力低下や感覚異常などを伴う場合には、まず医療機関で適切な評価を受けることが重要です。一方で、医療機関で検査を受けても緊急性の高い異常が確認されず、それでも慢性的な腰痛によって日常生活に支障が続いている方もいます。
藤沢市にある前田カイロプラクティック藤沢院にも、長年続いていた腰痛が悪化し、「座ってもつらい、歩いてもつらい、横になってもつらい」と感じるほど、日常生活のさまざまな場面で腰痛に悩まされている方が来院されます。
今回ご紹介する40代男性も、中学生の頃にぎっくり腰を経験して以来、長年にわたって腰の不調を抱えていました。社会人になってから慢性腰痛が続き、やがて椅子に座ることが難しくなり、夜には寝返りのたびに痛みで目を覚ますほど日常生活への影響が広がっていました。
では、負担のかかり方が異なるはずの座位、立位、歩行、睡眠のどの場面でも腰痛を感じるようになるとき、その痛みを「姿勢の問題」だけで説明することはできるのでしょうか。
このコラムでは、慢性腰痛が悪化し、椅子に座ることや歩くことだけでなく、夜眠ることさえつらくなった症例を通して、姿勢を変えても腰痛から逃れられなくなる背景と、慢性的な腰痛を身体全体から考えるうえで大切な視点について解説していきます。
■姿勢を変えると、腰にかかる負担はどのように変わるのでしょうか?
座っていると腰が痛くなれば立ち上がり、立っているのがつらくなれば椅子に座る。疲れたら横になって休む。私たちは普段、意識することなく姿勢を変えながら、同じ場所に負担が集中し続けないようにしています。
実際、座る、立つ、歩く、横になるという姿勢や動作では、身体を支える仕組みがそれぞれ異なります。立っているときには、足から骨盤、脊柱へと身体を支える力が伝わり、重力に対して姿勢を保つ必要があります。歩くときにはさらに左右の脚へ交互に体重を移しながら、股関節や骨盤、腰椎などが連動して身体を前へ運んでいます。
一方、椅子に座れば脚で身体を支える割合は減りますが、腰が休んでいるわけではありません。骨盤の上に上半身を乗せた状態で姿勢を保つ必要があり、骨盤の傾きや股関節の位置が変われば、それに伴って腰椎の状態や周囲の筋肉の働き方も変化します。同じ「座る」という姿勢でも、背もたれの有無や座る時間、身体の動かし方によって負担のかかり方は一定ではありません。
横になった場合には、立位や座位と比べて重力に抗して上半身を支え続ける必要は少なくなります。しかし、寝返りをするときには体幹を回旋させながら骨盤や股関節を動かす必要があります。そのため、「横になっている=腰や骨盤がまったく働いていない」というわけではありません。
ここで大切なのは、腰だけが単独で身体を支えているわけではないということです。腰椎の下には骨盤があり、その左右には股関節があります。さらにその下には膝や足があり、上には胸郭や頸椎があります。身体はこうした複数の部位を連動させながら、姿勢や動作に応じて負担を分散しています。
たとえば歩行では、片脚に体重を乗せるたびに骨盤の位置は変化し、それに合わせて腰椎や胸郭も動きます。椅子から立ち上がるときにも、上半身を前方へ移動させ、股関節や膝を伸ばしながら重心を足の上へ移していきます。何気なく行っている動作ですが、実際には身体のさまざまな部位がタイミングよく協調することで成立しています。
だからこそ、一つの部位の動きが低下したときには、別の部位がその不足を補うことがあります。これは必ずしも悪いことではなく、身体が日常生活を続けるために行っている適応の一つです。しかし、その状態が長期間続けば、特定の部位が本来より多くの役割を担い続けることもあります。
慢性腰痛がある方が「座っていると痛いから立つ」「立っているとつらいから歩く」「疲れたから横になる」と姿勢を変えても、それぞれの姿勢や動作で腰とその周囲の連動そのものが必要なくなるわけではありません。姿勢が変われば負担のかかり方は変わりますが、身体全体で負担を受け止め、分散するという仕組みは続いています。
では、身体には本来こうした負担を分散する仕組みがあるにもかかわらず、なぜ慢性腰痛が続くと、座位、立位、歩行、さらには睡眠中の寝返りまで、異なる場面で痛みを感じるようになることがあるのでしょうか。
その背景を考えるには、骨や筋肉に「どれだけ負担がかかったか」だけではなく、身体がその時々の姿勢や動きをどのように感じ取り、調整しているのかという視点が重要になります。
■腰への負担が変わっているのに、なぜ姿勢を変えても痛みが続くのでしょうか?
座っているときと立っているとき、歩いているとき、横になっているときでは、腰や骨盤にかかる力も、身体を支えるために使われる筋肉も異なります。それなら、ある姿勢で腰が痛くても、別の姿勢に変えれば痛みから解放されてもよさそうです。しかし慢性腰痛が強くなると、「座っても痛い、立っても痛い、歩いても痛い、横になっても痛い」という状態になることがあります。
この疑問を考えるうえで大切なのが、「腰にかかる負担」と「本人が感じる痛み」は、必ずしも同じものではないということです。痛みは、腰に加わった力の大きさをそのまま数字のように脳へ伝えているわけではありません。筋肉や関節など身体の各部から送られる感覚情報を神経系が受け取り、さまざまな情報と統合した結果として、私たちは痛みを経験しています。
これは、身体を守るために欠かせない仕組みです。熱いものに触れたときにすぐ手を引くように、痛みは身体に起きている異変や危険を知らせる警告サインとして働きます。一方で、痛みが長期間続いている場合には、「どれだけ大きな力が腰に加わっているか」だけでは、その人が感じている痛みの強さや広がりを十分に説明できないことがあります。
たとえば、椅子から立ち上がって腰への力のかかり方が変わっても、身体から神経系へ送られる情報そのものがなくなるわけではありません。歩けば足、股関節、骨盤、脊柱などから絶えず感覚情報が入り、横になれば接触する場所や関節の位置が変化します。寝返りをすれば、さらに身体の位置関係が大きく変わります。つまり、姿勢を変えるたびに身体から送られてくる情報の内容は変化しており、神経系はその情報を絶えず受け取り続けています。
さらに夜間の腰痛では、睡眠との関係も無視できません。痛みがあるために何度も目が覚めれば、十分な睡眠を取ることが難しくなります。一方で、睡眠の質が低下した状態が続くことも、翌日の痛みの感じ方に影響する可能性があります。慢性的な腰痛と睡眠は別々の問題ではなく、互いに影響し合いながら生活全体の負担を大きくしていくことがあります。
だからこそ、慢性腰痛で「どの姿勢をとってもつらい」という状態になったときには、一つの正しい姿勢を探すだけでは十分ではありません。座位、立位、歩行、睡眠では身体に加わる負担が違うにもかかわらず、それぞれの場面で痛みを感じているのであれば、「どの姿勢が腰に悪いのか」という視点だけではなく、身体からの情報を神経系がどのように受け取り、身体全体をどのように調整しているのかという視点も必要になります。
前田カイロプラクティック藤沢院では、慢性腰痛があるからといって、痛みを感じている腰だけを施術することはありません。視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査を組み合わせ、身体全体の状態を確認します。その中で、神経伝達を阻害して身体の適応を妨げている「サブラクセーション」がどこにあるのかを評価していきます。
必要と判断した箇所へのアジャストメントも、「痛い腰を治す」ために行うものではありません。神経機能を妨げている要因を取り除き、脳と身体との情報交換が適切に行われる環境を整えることが目的です。その結果として、その人自身が持っている「治るチカラ」を十分に発揮できる状態を目指していきます。
座っても、立っても、歩いても、横になっても痛い。そんな状態になったときに必要なのは、「どの姿勢が間違っているのか」を探し続けることではありません。姿勢ごとに異なる負担を受けながら、それに対応し続けている身体そのものを確認すること。それが、姿勢を変えても続く慢性腰痛を考えるうえで大切な視点です。
■座っても横になっても腰痛から逃れられなくなっていた40代男性の症例
今回ご紹介するのは、藤沢市にお住まいの40代男性です。中学生の頃にぎっくり腰を経験し、社会人になってデスクワーク中心の生活を送るようになってからは、慢性的な腰痛を抱えるようになっていました。
当初は仕事のあとに腰の重さを感じる程度でしたが、長年続いていた腰痛は徐々に悪化していきました。やがて仕事中は椅子に座っていることが難しくなり、姿勢を変えても楽にならず、歩行や通勤にも支障を感じるようになりました。さらに夜になって横になっても痛みから解放されず、寝返りのたびに目を覚ますほど、腰痛が生活全体に影響する状態になっていました。
整形外科ではレントゲンやMRI検査を受け、腰椎の変性について説明を受けました。湿布や痛み止めを使用し、整体や鍼灸なども試しましたが、日常生活への影響が続いていたことから、職場の同僚の紹介で前田カイロプラクティック藤沢院へ来院されました。
当院では、「座っていると痛い」「寝返りで痛い」という個々の動作だけから原因を決めるのではなく、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価などを組み合わせて身体を確認しました。その結果、骨盤部の関節可動性や腰部の筋緊張、局所の浮腫、体表温度の左右差など、複数の検査で確認すべき所見がみられました。
それぞれの検査結果を照らし合わせながらサブラクセーションを見極め、必要と判断した箇所へアジャストメントを行っていきました。ケアを継続する中で、夜間や起床時の状態に変化がみられ、その後は仕事中の座位や立ち上がり、歩行にも変化が現れていきました。最終的には長時間のデスクワークでも腰を気にせず過ごせるようになり、休日にはウォーキングを再開できるまで日常生活の幅が広がりました。
この症例で特徴的だったのは、一つの特定の姿勢だけで腰痛が現れていたのではなく、座位、歩行、睡眠など、身体への負担のかかり方が異なるさまざまな場面にまで痛みが広がっていたことです。
だからこそ、「座り方を変える」「寝る姿勢を変える」と一つひとつの場面だけを見るのではなく、それらすべての生活を送っているその人自身の身体を評価することが重要になります。
詳しい検査所見や、椅子に座ることも夜眠ることもつらかった状態からどのような経過をたどったのかについては、症例報告で詳しくご紹介しています。
▶慢性腰痛が悪化し、椅子にも座れず夜も痛みで眠れなくなった詳しい症例報告はこちら
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。
シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。


