2026.07.21

四十肩・五十肩で腕が上がらない…痛い肩を無理に動かしていませんか?

四十肩・五十肩で腕が上がらない…痛い肩を無理に動かしていませんか?

肩に痛みがあり、腕を上げようとすると強い痛みが走る。髪を結ぶ、服を着替える、高い場所の物を取るなど、これまで当たり前にできていた動作がつらくなってしまう。そんな四十肩・五十肩でお悩みの方は少なくありません。

四十肩・五十肩になると、「肩が固まってしまうから、痛くても動かした方がいい」「無理にでも腕を上げた方が早く治る」と考える方もいらっしゃいます。一方で、「動かすと痛いから、できるだけ安静にした方がいい」と迷ってしまう方も少なくありません。

では、本当はどちらが正しいのでしょうか。

実は、四十肩・五十肩と一言でいっても、身体の中で起きている状態は一人ひとり異なります。そのため、「痛くても動かした方がいい」「安静にしていた方がいい」と一つの答えだけで説明できるものではありません。

大切なのは、「痛みがあるから動かす」「痛いから動かさない」と判断することではなく、なぜ肩が痛くなり、腕が上がらなくなっているのか、その背景にある身体の状態を正しく理解することです。

このコラムでは、四十肩・五十肩で腕が上がらなくなる理由や、肩を無理に動かす前に知っておきたい身体の仕組みについて解説していきます。

■ 四十肩・五十肩で腕が上がらなくなるのはなぜでしょうか?

四十肩・五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節の周囲に炎症や拘縮が生じることで、痛みや可動域の制限が現れる状態を指します。40代から50代に多くみられることから、このような名称で呼ばれていますが、60代以降や、それより若い年代でも発症することがあります。

多くの方は「肩が悪くなった」と考えますが、実際には腕を上げるという動作は、肩関節だけで行われているわけではありません。

肩をスムーズに動かすためには、肩甲上腕関節(GH関節)だけでなく、肩甲骨と胸郭の動きである肩甲胸郭関節、さらに肩鎖関節や胸鎖関節が連動して働く必要があります。これらが協調して動くことで、初めて腕を頭の上まで無理なく挙げることができます。

また、肩関節の安定性には、関節包や靱帯だけでなく、腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる4つの筋肉が大きく関与しています。これらの筋肉は、腕を動かすだけではなく、上腕骨頭を肩甲骨の関節窩へ安定させるという重要な役割を担っています。

四十肩・五十肩では、関節包に炎症が起こったり、関節包や周囲組織が拘縮したりすることで、肩関節の動きそのものが制限されることがあります。その結果、「腕が途中までしか上がらない」「背中へ手が回らない」「夜になると肩がズキズキ痛む」といった症状が現れます。

さらに、腕を上げる動作には「肩甲上腕リズム(Scapulohumeral Rhythm)」と呼ばれる協調運動があります。一般的には、腕を約180度まで挙上する際、肩甲上腕関節が約120度、肩甲骨が約60度動くことで、スムーズな挙上動作が行われます。

しかし、肩甲骨の動きが悪くなったり、胸椎や胸郭の可動性が低下したりすると、この肩甲上腕リズムが乱れ、肩関節だけで腕を上げようとする状態になりやすくなります。その結果、肩関節や腱板へ過剰な負担が集中し、炎症や痛みを引き起こす一因となることがあります。

つまり、四十肩・五十肩は単に「肩だけの問題」と考えるのではなく、肩甲骨や胸郭、背骨を含めた身体全体の連動性が大きく関わる症状です。だからこそ、肩だけではなく、身体全体がどのように協調して動いているのかという視点を持つことが、四十肩・五十肩を理解する第一歩となるのです。

■ 四十肩・五十肩だからといって、すべて同じ状態とは限りません

四十肩・五十肩は「肩関節周囲炎」という一つの名前で呼ばれていますが、実際には身体の中で起きている状態は一人ひとり異なります。

一般的には、炎症が強い「炎症期」、肩が固まりやすくなる「拘縮期(凍結肩)」、少しずつ動きが改善していく「回復期」という経過をたどることが多いとされています。しかし、すべての方が教科書通りに進行するわけではなく、それぞれの時期が重なったり、症状の程度が異なったりすることも少なくありません。

特に炎症期では、肩関節を包んでいる関節包や滑膜に炎症が起こり、わずかな動きでも強い痛みを感じることがあります。一方、拘縮期になると炎症は落ち着いてきますが、関節包や腋窩陥凹(Axillary Recess)が硬くなり、肩関節そのものの可動域が大きく制限されるようになります。

そのため、「痛くても動かした方がいい」という考え方が当てはまる方もいれば、炎症が強い時期に無理をすることで症状が悪化してしまう方もいます。つまり、肩の状態を評価せずに一律の対処法を行うことが、必ずしも良い結果につながるとは限らないのです。

また、夜になると痛みが強くなる「夜間痛」を訴える方も少なくありません。これは横になることで肩関節周囲の内圧が変化したり、炎症を起こしている組織へ持続的な負担が加わったりすることが一因と考えられています。

さらに、四十肩・五十肩と診断されていても、腱板損傷や肩峰下インピンジメント症候群など、似たような症状を示す疾患が隠れている場合もあります。そのため、「肩が痛い=四十肩・五十肩」と決めつけるのではなく、現在どのような状態なのかを正しく評価することが大切です。

そして、もう一つ忘れてはならないことがあります。

腕を上げるという動作は肩だけで行われるものではなく、肩甲骨、胸郭、胸椎、さらには骨盤までが連動して初めてスムーズに行われます。どこか一つの動きが低下すると、その負担は肩へ集中し、身体は痛みを避けながら動くようになります。

つまり、四十肩・五十肩は肩だけの問題ではなく、それまで積み重なってきた身体の使い方や姿勢、身体全体のバランスの変化が、肩の痛みや腕が上がらないという形で現れた可能性も考えられるのです。

言い換えれば、肩の痛みは身体が発しているシグナルであり、腕が上がらないという現象は、そのシグナルの一つに過ぎないのかもしれません。

だからこそ、「痛い肩を無理に動かすべきか」という前に、まずは「なぜ肩へ負担が集中する身体の状態になっていたのか」を考えることが大切です。

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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