動悸やめまいが続くのはなぜ?ストレスと自律神経、身体の不調を考える
「ストレスを感じると、動悸やめまいが起こるようになった」
「夜中に突然動悸がして目が覚めてしまい、朝になっても疲れが取れない」
「お腹の張りや消化不良、下痢などが続いていて、身体全体の調子がすぐれない」
このような不調が続くと、「年齢のせいなのか」「仕事のストレスが原因なのか」「自律神経が乱れているのではないか」と、さまざまなことを考えてしまうものです。
特に、動悸やめまいのような症状は、その時々によって強さが変わることがあります。仕事中や通勤時には症状が強くなるのに、夕方になると少し落ち着く。あるいは、以前よりストレスが減ったはずなのに、今度は睡眠中に動悸が起こるようになるなど、一見すると原因が分かりにくい経過をたどることもあります。
また、身体の不調は一つだけとは限りません。
首や肩の張り、腰の重だるさ、眠りの浅さ、お腹の張りや消化機能の乱れなど、いくつもの症状が同時に気になるようになると、「それぞれ別の問題なのだろうか」と悩んでしまう方もいるでしょう。
これまで整体やマッサージなどを受けることで一時的に身体が楽になっても、しばらくするとまた同じ状態に戻ってしまえば、「その場だけではなく、身体そのものを見直したい」と考えるようになるかもしれません。
一方で、動悸やめまいなどの症状には、心臓や血管、神経、内耳などさまざまな原因が関係する可能性があります。そのため、症状を自律神経だけの問題と自己判断せず、必要に応じて医療機関で適切な検査を受けることも大切です。
では、ストレスや日々の身体への負担は、私たちの身体にどのように影響しているのでしょうか。
そして、動悸やめまい、睡眠、消化機能、首や腰の不調など、一見すると別々に思える症状を考えるとき、身体全体の状態に目を向けることにはどのような意味があるのでしょうか。
今回のコラムでは、動悸やめまい、睡眠の乱れ、消化機能の不調などを抱えていた50代女性の症例をもとに、ストレスと自律神経の関係、身体全体の状態を見ていくことの意味、そしてカイロプラクティックではどのような視点から身体を評価しているのかについてお伝えしていきます。
■ 動悸やめまい、消化機能の不調に関わる自律神経の働き
私たちの身体には、意識しなくても常に働き続けているさまざまな調整機能があります。
心臓を動かして血液を全身に送り出すこと、呼吸の速さを調整すること、血圧を維持すること、胃腸を動かして食べ物を消化すること、体温を一定に保つことなど、生命を維持するために欠かせない働きの多くは、私たちが一つひとつ意識して行っているわけではありません。
こうした身体の機能を自動的に調整している重要な仕組みの一つが、自律神経です。
自律神経は、大きく交感神経と副交感神経に分けられます。交感神経は活動しているときや緊張・ストレスを感じているときに働きやすく、副交感神経は休息しているときや睡眠中など、身体を落ち着かせる場面で働きやすいとされています。
ただし、「交感神経が悪く、副交感神経が良い」という単純な関係ではありません。
仕事をしているときには身体を活動状態にする必要があり、運動するときにも交感神経の働きが必要になります。一方で、仕事や運動を終えた後には身体を休ませ、回復へ切り替えていく必要があります。
つまり大切なのは、状況に応じて身体の状態を適切に切り替えられることです。
ところが、仕事上のストレスや睡眠不足、長時間の緊張状態、身体的な疲労などが積み重なると、この切り替えがうまくいかなくなることがあります。
例えば、強い緊張状態では心拍数が上がり、呼吸が浅く速くなったり、筋肉が緊張したりすることがあります。その状態が長く続けば、身体がなかなか休息モードへ移行できず、「疲れているのにリラックスできない」「眠りたいのに身体が落ち着かない」と感じることにつながる場合があります。
動悸もその一つです。
心臓は自律神経の影響を受けながら、そのときの身体の状態に合わせて拍動を調整しています。そのため、緊張や不安、ストレスなどによって心拍を強く意識することがあります。
また、めまいについても、自律神経だけで説明できるものではありません。
平衡感覚には、内耳にある前庭系、視覚、身体から伝わる位置や動きの情報など、複数の感覚が関係しています。さらに、血圧や循環の調整が変化することで、立ち上がったときなどにふらつきを感じることもあります。
そのため、めまいがあるからといって「自律神経の乱れ」と自己判断するのではなく、症状の種類や経過を確認し、必要に応じて医療機関で原因を調べることが大切です。
自律神経の影響は、心臓や呼吸だけに限りません。
胃や腸などの消化管も自律神経によって調節されています。緊張するとお腹が痛くなったり、ストレスが続くと便通が変化したりする経験がある方もいるでしょう。
これは、脳と消化管が神経やホルモンなどを介して互いに情報をやり取りしているためです。
「ストレスで胃が痛くなる」という表現があるように、精神的な状態と身体の消化機能は決して別々に存在しているわけではありません。
さらに、睡眠も自律神経と深く関係しています。
本来、眠っている間は身体を休ませ、日中の活動によって受けた負担から回復していく時間です。しかし、心身が緊張した状態が続いていると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたり、十分に眠ったはずなのに休んだ感覚が得られなかったりすることがあります。
ここで重要なのは、こうした不調を一つひとつ切り離して考えないことです。
動悸がある、めまいがある、眠れない、お腹の調子が悪い、首や肩が張る、腰が重い。
これらがすべて同じ原因から起こっているとは限りません。しかし、身体はそれぞれの器官が完全に独立して働いているわけではなく、神経や循環、ホルモンなどを介して互いに影響し合っています。
だからこそ、ある一つの症状だけを見るのではなく、「身体全体が現在どのような状態にあるのか」という視点を持つことも大切になります。
では、なぜ同じようなストレスや身体的な負担があっても、強く不調を感じる人と、あまり症状を感じない人がいるのでしょうか。
その違いを考えるためには、「どれだけ負担がかかったか」だけではなく、身体がその負担に対してどのように適応しているのかという視点が必要になります。
■動悸やめまい、睡眠や消化機能の不調を抱えていた50代女性
動悸やめまい、息苦しさなどの症状が続くと、「心臓に問題があるのではないか」「めまいだから耳に原因があるのではないか」と、症状が現れている場所に意識が向きやすくなります。
もちろん、動悸やめまい、息苦しさにはさまざまな原因があるため、必要に応じて医療機関で適切な評価を受けることが大切です。
一方で、仕事や生活の中で長期間にわたってストレスや身体的な負担が続いている場合には、睡眠や筋肉の緊張、消化機能など、身体のさまざまな部分に変化を感じることもあります。
前田カイロプラクティック藤沢院に来院された50代女性も、半年ほど前からストレスを感じると動悸やめまいが起こるようになり、特に朝の通勤時や仕事中に症状が強くなることがありました。
仕事が始まると息苦しさを感じることもあり、夕方になると少し落ち着くという特徴もあったそうです。
その後、職場を変えたことで症状が出る頻度はやや減りましたが、完全になくなることはありませんでした。さらに、就寝中にも動悸を感じて目が覚めることが増え、十分に眠ったつもりでも朝にスッキリしないなど、睡眠の質についても悩むようになっていました。
また、仕事では重い荷物を運ぶことが多く、首や肩の張りが慢性化していました。
長時間の作業を続けることで腰の違和感や重だるさも感じるようになり、数年前からは仰向けで寝ると骨盤周辺が気になるため、横向きで寝ることが習慣になっていました。
さらに、この女性には幼少期から消化機能が弱く、胃腸のトラブルを起こしやすいという背景もありました。
朝に何度も排便することがあり、冷えや刺激物をきっかけにお腹を下しやすく、お腹の張りも感じていました。これまで乳酸菌飲料や腸内環境を整えることを目的としたサプリメントなども試していましたが、本人が納得するほどの変化は感じられなかったそうです。
ここで注目したいのは、動悸やめまいだけが突然現れたわけではなく、仕事上の身体的な負担、ストレス、睡眠時の身体の違和感、消化機能に関する悩みなど、以前からさまざまな要素が重なっていたことです。
もちろん、これらがすべて一つの原因によって起こっていたとは限りません。
しかし、身体は心臓、筋肉、消化器、神経などが完全に切り離されて働いているわけではありません。睡眠やストレス、身体的な負担など、日々の環境に対して身体全体が適応しながら働いています。
この女性も、これまで整体やリンパマッサージなどを受けることで、一時的に身体が軽くなることはありました。しかし、時間が経つと再び元の状態に戻ることを繰り返していたため、「その場だけではなく、自分の身体そのものを見直したい」と考えるようになりました。
そこで当院では、動悸やめまいだけに注目するのではなく、首や肩、背中、骨盤周辺の状態、身体の動きなどを含めて全身を評価しました。
視診、体表温度検査、静的触診、動的触診などを組み合わせ、必要に応じてレントゲン評価も行います。
この女性についても、頸部から背部にかけての筋肉の緊張や、上部頸椎、仙腸関節などの動きに特徴が確認されました。また、体表温度検査では骨盤部に左右差がみられました。
これらの所見を、動悸やめまいの原因と直接結びつけることはできません。
カイロプラクティックでは、身体の構造や関節の動き、神経系との関係を考える際に「サブラクセーション」という概念を用いることがあります。これは医学的に確立された疾患名ではなく、動悸やめまいなど特定の症状の原因を意味するものでもありません。
当院では、複数の検査から身体の状態と神経機能を評価し、神経伝達を妨げる要因としてサブラクセーションが確認された場合には、必要なアジャストメントを行います。
これは、動悸やめまい、消化器症状を直接治療するという考え方ではありません。
身体の状態を確認し、神経機能を妨げる要因に対して必要なアプローチを行うことで、身体が本来持っている調節機能を発揮しやすい環境を整えていくことを大切にしています。
ケアを継続する中では、身体の状態にも少しずつ変化がみられました。
特に、それまで仰向けになると気になっていた骨盤周辺の違和感が軽くなり、身体を休める姿勢にも変化を感じるようになりました。
また、首や肩、骨盤周辺などの筋肉の緊張についても変化が確認され、本人自身がお腹周りの張り感が以前より気にならなくなったと感じるようになりました。
動悸やめまい、息苦しさ、消化機能などの変化については、それぞれに医学的な評価が必要であり、カイロプラクティックのケアだけが原因だったと判断することはできません。
それでも、長い間当たり前のように続いていた身体の違和感について、自分自身が変化を実感できたことは、この女性にとって身体を見直す一つのきっかけになりました。
このケースから考えられるのは、「動悸があるから心臓だけ」「めまいがあるから頭だけ」「お腹の調子が悪いから消化器だけ」というように、身体を部分ごとに切り離して考えるだけではなく、現在どのような環境の中で生活し、どのような負担が重なっているのかを確認することの大切さです。
もちろん、複数の不調があるからといって、それらがすべて同じ原因から生じているわけではありません。
だからこそ、一つの原因に当てはめるのではなく、それぞれの症状を適切に捉えながら、身体全体の状態や生活環境、神経機能などを含めて評価していくことが重要になります。
長期間続いている身体の不調を「年齢だから」「ストレスだから」と片付けるのではなく、現在の身体がどのような状態にあり、日々の環境にどのように適応しているのかを知ること。
それが、自分の身体を改めて見直し、これからの健康について考えるための一つのきっかけになるかもしれません。
▶動悸やめまい、消化不良が改善!カイロプラクティックで自律神経の乱れを整えるの詳しい症例報告はこちら
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


