バスケットボールで怪我が続くのはなぜ?身体のゆがみと動きの関係を考える
「バスケットボールを続けたいのに、膝や足首の痛みが気になって思うように動けない」
「足関節の捻挫や肉離れを繰り返していて、以前より怪我をしやすくなった気がする」
「姿勢や身体のゆがみが気になり、身体のバランスそのものを見直したい」
スポーツを長く楽しんでいると、このような悩みを感じることがあります。
特にバスケットボールは、走る・止まる・跳ぶ・着地する・方向を変えるといった動作を繰り返すスポーツです。身体を大きく使うからこそ、膝や足首など下肢への負担も大きくなります。
一度の怪我であれば、休養や適切なケアによって競技へ復帰できることもあります。しかし、足首を何度も捻る、肉離れを繰り返す、練習をすると膝が痛くなるといった状態が続けば、「なぜ自分は怪我を繰り返すのだろう」と不安になるのではないでしょうか。
また、怪我だけが問題とは限りません。
「以前より身体が動かしにくい」
「左右のバランスが違うように感じる」
「肩の高さが違う」
「姿勢が崩れている気がする」
このような身体の変化を感じながらスポーツを続けている方もいます。
今回ご紹介する50代男性も、以前から身体のゆがみや姿勢が気になっていました。
趣味で続けているバスケットボールは週1回以上の頻度で練習していましたが、右肩が下がり、後ろへ傾いているような感覚が強くなっていました。それだけでなく、プレー中には右膝の痛みが出るようになり、足関節の捻挫や肉離れ、足部の痛みなど、下肢のトラブルも続いていたそうです。
思うようにプレーできない状態が続けば、大好きなスポーツであっても、次第に身体への不安が大きくなってしまいます。
一方で、身体のゆがみや怪我を考えるとき、「痛みが出ている膝や足首だけに問題がある」とは限りません。
身体は、それぞれの関節や筋肉が単独で動いているわけではありません。走る、跳ぶ、着地するといった一つの動作でも、足部から膝、骨盤、背骨、そして上半身まで、全身が連動して動いています。
では、繰り返す怪我や身体のゆがみを考えるとき、痛みのある場所だけではなく、身体全体の状態を見ることにはどのような意味があるのでしょうか。
そして、身体のバランスが変化することで、スポーツ中の動きやパフォーマンスにはどのような影響が考えられるのでしょうか。
今回のコラムでは、バスケットボールを続ける中で下肢の怪我を繰り返し、身体のゆがみや姿勢にも悩んでいた50代男性の症例をもとに、スポーツによる身体への負担と怪我の繰り返し、身体全体のバランスと動きの関係、そしてカイロプラクティックではどのような視点から身体を評価しているのかについてお伝えしていきます。
■ バスケットボールで怪我を繰り返すのはなぜ?身体のバランスと動きの関係
バスケットボールでは、走る、急に止まる、方向を変える、ジャンプする、着地するといった動作を短い時間の中で何度も繰り返します。
特に、相手選手との接触や、着地した瞬間の身体の向き、急な切り返しなどによって、膝や足首には大きな負担がかかります。
そのため、スポーツを続けていると、足関節の捻挫や膝の痛み、肉離れなどの怪我を経験することは珍しくありません。
しかし、一度の怪我が落ち着いたにもかかわらず、同じ部位を何度も痛めるようになった場合には、「その場所が弱いから」と考えるだけでは十分ではないことがあります。
例えば、足関節を捻挫すると、靭帯や周囲の組織に負担がかかり、痛みや腫れが生じます。時間が経って痛みがなくなったとしても、関節の動きや身体の使い方が以前と完全に同じ状態へ戻っているとは限りません。
足首には、地面の状態や足の位置、関節の動きなどを身体へ伝える感覚があります。
こうした情報をもとに、身体は「今、足がどのような状態にあるのか」を把握しながら、バランスを取ったり、次の動作へ移ったりしています。
ところが、怪我をした後に動き方が変わったり、痛みを避けるような身体の使い方が続いたりすると、左右で動きに違いが生じることがあります。
すると、本来は一部の関節で受けていた負担を、別の関節や筋肉が補うようになることがあります。
例えば、足首の動きが十分でない状態で方向転換を繰り返せば、膝や股関節、骨盤などがより大きく動いて対応することがあります。
もちろん、身体はそのようにして動作を成立させようとします。
この「代わりに動く」という仕組み自体が悪いわけではありません。身体には、多少の変化があっても全体として動作を成立させる適応能力があります。
問題になるのは、その状態が長期間続き、特定の部位に負担が偏ってしまうケースです。
バスケットボールのように、同じ動作を繰り返しながら瞬間的な判断と反応が求められる競技では、身体のわずかな動きの違いが積み重なることで、特定の部位への負担につながることがあります。
また、身体のバランスは下半身だけで決まるものでもありません。
足部、足関節、膝、股関節、骨盤、背骨、肩などは、動作の中で互いに影響し合っています。
ジャンプして着地する動作一つを考えても、足が地面に接した瞬間から、その衝撃を身体の各部位が受け止め、上半身まで含めて姿勢を調整しています。
そのため、「膝が痛いから膝だけを見る」「足首を捻ったから足首だけを見る」という考え方だけでは、繰り返す負担の背景を十分に捉えられない場合があります。
さらに、年齢を重ねることで、筋力や柔軟性、関節の可動性、回復にかかる時間などにも変化が現れます。
若い頃と同じ練習量や動き方をしていても、以前とは身体への負担のかかり方が変わってくることがあります。
だからこそ、スポーツを長く楽しみたいのであれば、痛みが出たときだけ対処するのではなく、「今の自分の身体がどのように動いているのか」を知ることも重要です。
特に、怪我を繰り返している場合には、痛みが出ている場所だけではなく、左右の動きの違いや姿勢、関節の可動性、筋肉の緊張など、身体全体の状態を確認することが一つの手がかりになります。
今回の50代男性も、右膝の痛みや足関節の捻挫、肉離れ、足部の痛みなど、下肢のトラブルを繰り返していました。
同時に、右肩が下がって後ろに傾いているような感覚もあり、「身体が歪んでいるのではないか」という自覚も持っていました。
では、なぜ身体はこのような状態になったのでしょうか。
単純に「筋肉が硬い」「姿勢が悪い」「足が弱い」と考えるだけではなく、身体が長期間にわたってどのように負担へ適応してきたのかを考えることで、別の見方ができるかもしれません。
■ 身体のゆがみはなぜ起こる?神経と身体の適応から考える
身体のゆがみや左右差が気になると、「姿勢が悪いから」「筋肉が硬いから」と考える方は多いかもしれません。
もちろん、日常生活での姿勢や繰り返し行う動作、運動習慣などは、身体の使い方に影響します。
しかし、身体は単純に「正しい姿勢を保つ」というだけで動いているわけではありません。
私たちの身体は、立つ、歩く、走る、跳ぶといった動作のたびに、周囲の環境や身体自身の状態を感じ取り、その情報をもとに姿勢や筋肉の働きを細かく調整しています。
例えば、バスケットボールで相手選手と接触したとき、身体は倒れないように瞬間的に姿勢を変えます。
着地したときには、足部や膝、股関節などが衝撃に対応し、身体全体でバランスを取ります。
こうした調整は、私たちが一つひとつ意識して行っているものではありません。
身体の各部位から送られてくる情報を脳が受け取り、その情報をもとに身体の状態を判断し、必要な指令を再び身体へ送ることで、動作が成立しています。
つまり、身体は常に「感じる」「判断する」「動かす」という情報交換を繰り返しているのです。
この仕組みは、スポーツだけに限ったものではありません。
仕事で重いものを持つ、長時間座っている、同じ方向を向いて作業する、片側に荷物を持つといった日常生活の動作でも、身体はその状況に合わせて姿勢や筋肉の使い方を調整しています。
一時的な負担であれば、身体はその変化に対応しながら元の状態へ戻っていくこともできます。
しかし、同じ負担が長期間繰り返されたり、過去の怪我をかばう動作が続いたりすると、身体がその状態に適応したままになることがあります。
その結果として、本人には「身体が歪んだ」「右だけ動かしにくい」「以前と同じように動いているつもりなのに、なぜか違う」と感じられるようになることがあります。
ここで重要なのは、身体の左右差があること自体を、すぐに「悪い状態」と決めつけないことです。
人間の身体にはもともと左右差があり、完全に左右対称ではありません。
大切なのは、その左右差が現在の身体の動きや負担にどのように関係しているのかを確認することです。
カイロプラクティックでは、このような身体と神経系の関係を重視しています。
身体の関節や筋肉などから脳へ伝わる情報が適切に処理され、そこから身体へ適切な指令が送られることで、姿勢や運動の調整が行われています。
そのため、痛みのある場所だけを見るのではなく、身体全体の動きや神経系との関係を評価していくことが重要だと考えています。
カイロプラクティックには「サブラクセーション」という独自の概念があります。
これは、身体の構造や動き、神経系との関係を評価する際に用いられる考え方であり、単に「骨が歪んでいる」という意味だけではありません。
当院では、サブラクセーション(根本原因)を正確に特定するために、一つの検査だけで判断することはありません。
体表温度検査、視診検査、静的触診、動的触診、そしてレントゲン評価など、複数の検査を組み合わせながら身体の状態を確認していきます。
例えば、姿勢だけを見れば右肩が下がっているように見えても、その背景に骨盤や背骨の動き、筋肉の緊張、関節の可動性など、さまざまな要素が関係している可能性があります。
だからこそ、「肩が下がっているから肩を整える」という単純な考え方ではなく、身体全体を評価したうえで、どこに本質的な問題があるのかを見ていくことが大切になります。
今回の男性も、右肩が下がって後ろへ傾いている感覚があり、以前から身体のゆがみを気にしていました。
さらに、右膝の痛みや足関節の捻挫、肉離れ、足部の痛みなど、下肢のトラブルも繰り返していました。
初診時の評価では、右脊柱起立筋の過緊張、右仙腸関節の可動域制限、右上部頸椎の可動域制限など、複数の身体の変化が確認されています。
つまり、本人が感じていた「身体のゆがみ」という感覚を、見た目だけで判断するのではなく、身体の動きや神経系との関係を含めて評価していく必要がありました。
そして、身体の状態を整えていくことは、単に「姿勢を良くする」ためだけではありません。
自分の身体をより適切に使える状態を目指すことは、好きなスポーツを長く続けることや、怪我への不安を減らしながら身体を動かすことにもつながっていきます。
では、この男性は実際にどのような状態で来院し、ケアを続けることでバスケットボールでの動きや身体の状態にどのような変化が見られたのでしょうか。
■身体の左右差や下肢のトラブルを繰り返していた50代男性
スポーツを長く続けていると、同じ部位を何度も痛めたり、捻挫や肉離れなどの怪我を繰り返したりすることがあります。
一度の怪我であれば、その部位の状態を確認することで原因を考えられる場合もあります。しかし、右膝の痛み、足関節の捻挫、肉離れ、足部の痛みなど、複数のトラブルが繰り返されている場合には、その都度痛めた場所だけを見るのではなく、普段どのように身体を使っているのかを確認することも大切です。
前田カイロプラクティック藤沢院に来院された50代男性も、バスケットボールを趣味として週1回以上続ける一方で、右膝の痛みや足関節の捻挫、肉離れ、足部の痛みなど、下肢のトラブルを繰り返していました。
以前から身体の左右差も気になっており、特に右肩が下がり、後ろに傾いているような感覚があったそうです。
また、右奥歯の永久歯が1本生えてこないことから、噛み合わせについても気になっていました。「噛み合わせの状態も身体のゆがみに関係しているのではないか」と感じ、自分の身体のバランスそのものを見直したいと考えて来院されました。
さらに、身体の悩みは運動器だけではありませんでした。
背中から臀部にかけての肌荒れも気になっており、これまで漢方を試した経験もありましたが、本人が期待していたほどの変化は感じられなかったそうです。
これまでにも整体などを利用していましたが、施術を受けた直後には身体の状態が変化しても、時間が経つと元に戻るという経験を繰り返していました。
そのため、「その場で痛みや張りを軽くするだけではなく、自分の身体が現在どのような状態なのかを詳しく知りたい」という思いが強くなっていました。
ここで考えておきたいのは、「右膝が痛いから右膝だけを見ればよい」「捻挫を繰り返すから足首だけを確認すればよい」とは限らないということです。
バスケットボールでは、走る、止まる、ジャンプする、着地する、方向を変える、相手と接触するといった動作を短時間のうちに繰り返します。
こうした動作では、足首、膝、股関節、骨盤、背骨などが連動して身体を支えています。そのため、身体の一部に動かしにくさや痛みがある場合には、別の部位が動きを補うことがあります。
もちろん、身体に左右差があることや、特定の関節に動きの特徴があることだけで、それが怪我の原因だと判断することはできません。
大切なのは、「身体がゆがんでいる」という感覚だけで判断するのではなく、実際に関節がどのように動いているのか、筋肉にどのような緊張があるのか、身体全体がどのように連動しているのかを確認することです。
そこで当院では、姿勢だけを見て身体の状態を判断するのではなく、視診、体表温度検査、静的触診、動的触診などを組み合わせて身体を評価しました。
必要に応じてレントゲン評価も行い、骨格や椎間板などの状態についても確認します。
この男性についても、右側の背部や頸部周辺の筋肉の緊張、骨盤や上部腰椎、上部頸椎などに身体の動きに関する特徴が確認されました。
レントゲン評価でも慢性的な変化が確認されましたが、こうした所見だけから右膝の痛みや捻挫、肉離れなどの原因を一つに決めることはできません。
むしろ重要なのは、これらの情報を重ねながら、現在の身体がどのような状態にあるのかを把握することです。
カイロプラクティックでは、身体の構造や関節の動き、神経系との関係を考える際に「サブラクセーション」という概念を用いることがあります。
サブラクセーションは医学的に確立された疾患名ではなく、特定の怪我や症状の原因を意味するものでもありません。
当院では、複数の検査から神経機能を含めた身体の状態を評価し、神経伝達を妨げる要因としてサブラクセーションが確認された場合には、必要なアジャストメントを行います。
これは、右膝の痛みや捻挫、肌荒れなどを直接治療するという考え方ではありません。
身体の状態を確認し、神経機能を妨げる要因に対して必要なアプローチを行うことで、身体が本来持っている調節機能を発揮しやすい環境を整えていくことを大切にしています。
ケアを継続する中では、身体の状態に少しずつ変化がみられました。
筋肉の緊張や骨盤周辺の状態などが変化するとともに、本人が気にしていた背中から臀部にかけての肌の状態にも変化を感じるようになりました。
肌の状態には、皮膚そのものの状態だけでなく、生活習慣、睡眠、食事、ホルモン、ストレスなど、さまざまな要因が関係します。そのため、今回の肌の変化がカイロプラクティックのケアだけによって起こったと断定することはできません。
一方で、身体全体の状態を継続的に確認する中で、本人が気にしていた肌の状態にも変化を実感したことは、この男性にとって身体を見直す一つのきっかけになりました。
また、バスケットボールを続ける中でも、身体の状態に対する不安が少しずつ変化し、以前よりも競技そのものを楽しめるようになっていきました。
特に本人が印象的に感じていたのが、練習中に体格の大きな選手と競った際に、「以前よりも当たり負けしなくなった」と感じたことです。
これは単純に筋力が強くなったことだけで説明できるものではありません。
バスケットボールのような競技では、筋力だけでなく、身体を支える姿勢、重心の移動、関節の動き、バランス、動作のタイミングなど、さまざまな要素が関係しています。
だからこそ、怪我を繰り返している場合には、「痛めた場所を治す」という視点だけではなく、競技中に身体をどのように使っているのかを確認することにも意味があります。
この男性も、身体の左右差や下肢のトラブルだけを個別に捉えるのではなく、これまでの身体の経過や日常生活、スポーツでの動きまで含めて身体全体を評価していきました。
その結果、身体の状態を知ることで、自分の身体に対する不安や競技への向き合い方にも変化がみられるようになりました。
もちろん、一人の方にみられた変化を、すべてのスポーツ障害や怪我に当てはめることはできません。
それでも、怪我をしたらその場所だけ、姿勢が気になったら姿勢だけを見るのではなく、自分の身体がどのように動き、どのような環境の中でスポーツを続けているのかを知ることは、身体との向き合い方を考えるきっかけになります。
スポーツを長く楽しみたいからこそ、痛みが出たときだけ身体を見るのではなく、現在の身体の状態を知り、日々の動きや競技との関係を考えていくことも大切なのではないでしょうか。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


