30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症

30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症

「もう一生治らない」と思っていた顎の違和感が消え、食事も会話もストレスなく楽しめる日常に!

40代女性
来院に至った経緯
小学校時代から顎関節の異常に悩まされていた。発端は小学3年の時に受けた歯列矯正で、長時間開口を続けた結果、顎が閉じられなくなったことに始まる。それ以来、右顎に違和感を抱えたまま生活を送ることになり、口を開けるたびに関節からガクガクと音が鳴るようになった。口を大きく開ける必要のある食べ物や、硬い食品は避けるようになっていった。

中学生の頃には、大笑いした拍子に顎が外れ、担任教師に付き添われて歯科医院を受診した経験もある。そこで食いしばりの傾向を指摘され、マウスピースの作製を勧められたが、肝心の症状に改善は見られなかった。高校に進学してからは、就寝時の入眠困難が顕著となり、2〜3時間は眠れないことが常態化、ひどい時には一睡もできず朝を迎える日もあった。

その頃から生理痛も重くなり、初日・二日目は鎮痛薬を飲んでも効果が乏しく、通学を断念する月が増えた。成人後に多少和らいだものの、依然として痛み止めが必要な状態が続いていた。

さらに高校3年時、受験勉強の真っ最中に突然の強い動悸に見舞われ、意識を失って倒れた。検査の結果は頻脈性不整脈で、精密検査でも脳・心臓ともに器質的な異常は見つからず、医師からはストレスが原因であろうと説明された。それ以降、緊張時に自分の心音が気になって仕方がないという不安も抱えるようになった。

社会人になってからは、満員電車による長時間の通勤とデスクワークの影響もあり、反り腰を自覚するようになった。慢性的な腰痛も加わり、小学生以来続く不調の連鎖に、「このままでは将来的に健康を維持できないのでは」と危機感を募らせていった。

当時は経済的にも自立していたため、自ら情報を集めて数々の施術院に足を運んだ。整骨院、整体、鍼灸、オステオパシーなど多岐に渡る施術を体験したが、納得できる効果にはなかなか巡り会えなかった。カイロプラクティック院にも通院歴はあったが、施術内容が非常に軽く、ただ身体を揺らされて終わるような印象だったという。

やはり原因は顎関節にあると確信し、関東圏にある顎関節専門院を数多く訪れたが、期待したような改善は得られなかった。遠方の著名な施術院に足を運んだこともあったが、逆に症状が悪化した経験もある。

長年改善策を模索するなかで、YouTubeで塩川満章先生のカイロプラクティック動画を目にした。通勤圏内に先生の院があると知り受診を希望したが、新規受付を停止していることを知り断念。その後調べていくうちに、塩川先生の直弟子であり副院長を務めた経験のある人物が、自宅近隣にて独立開院していることを知った。

30年以上続く顎の違和感も、根本的な解決に繋がるかもしれないという希望を抱き、前田カイロプラクティック藤沢院を訪れる決断をされた。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    第一頸椎右横突起にスポンジ状の浮腫

  • 02

    頸部右胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    右仙腸関節の可動域制限

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また頸部第一頸椎右横突起と骨盤部右上後腸骨棘上端に強い浮腫が確認され、頸部右胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階も慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

ケアの初期は週2回の施術を提案したが、ちょうど多忙な時期と重なっており、開始直後は通院間隔がやや不規則となった。後半に差し掛かる頃には業務の調整も可能となり、本来の施術ペースへと安定していった。

4週目(3回目のアジャストメント)には、明らかに口の開閉がしやすくなり、左右の顎関節から出ていた異音も徐々に減少していった。

8週目(8回目のアジャストメント)には、顎の動きがかなり滑らかになり、右顎周辺の違和感もほとんどなくなっていた。また、それまで鎮痛薬が効かなかった生理痛も、薬を服用することでしっかりと痛みが抑えられるようになった。

13週目(15回目のアジャストメント)には、通勤中に腰が反るような違和感が出ていたが、気づけばその感覚も消失し、腰痛に悩まされることもなくなっていた。さらに、これまで長年苦しんでいた月経時の腹痛も、薬無しで日常生活が送れるほど軽快していた。

19週目(23回目のアジャストメント)には、顎関節に関する不快感は完全に消失し、以前は口を大きく開けることが困難だったが、ハンバーガーなどの大きな食べ物も無理なく食べられるようになった。加えて、以前は人前に出ると心拍が気になる場面もあったが、現在では仕事でプレゼンなどの緊張場面でも落ち着いて対応できるようになった。

現在は症状の再発も見られず快適な状態を維持できているため、再び不調に戻らないよう身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを継続している。

考察
今回の顎関節に関する問題は、頚椎領域におけるアライメントの乱れが主な要因であったと推察される。顎関節は人間の関節の中でも非常に小さく繊細な構造をしており、そのため頭頚部の姿勢バランスに大きな影響を受けやすい部位である。

特に今回のケースでは、上部頸椎の不安定さが神経系の機能に影響し、結果として顎関節の異常運動や違和感に繋がっていたと考えられる。

顎の運動を制御している神経は、三叉神経のうち下顎神経と呼ばれる分枝が深く関与しており、この神経経路は上部頸椎と非常に密接な関係にある。今回のケースでは顎関節そのものに対する直接的な処置はほとんど行っていないが、上部頸椎の安定が得られたことで、その関連神経の機能が回復し、結果的に顎の動きが改善したものとみられる。

加えて、検査では骨盤領域にも明らかな神経反応がみられた点も見逃せない。上部頸椎と骨盤はともに副交感神経系に属する領域であり、これらの部位にサブラクセーション(根本原因)が存在していると、交感神経が優位な状態が慢性的に続いてしまう。交感神経が過剰に働いている状況とは、言い換えれば身体が常に緊張モードにあるということであり、この状態が継続すると、睡眠の質の低下、入眠障害、慢性的な疲労などに繋がるのは自然な流れである。

また、食いしばりの問題もこの交感神経過剰の特徴的な現れといえる。交感神経が優位なままだと身体全体の筋緊張が抜けず、顎の筋肉が日常的に収縮し続けてしまい、知らず知らずのうちに歯を強く噛みしめるようになる。

心臓に構造的な異常がないのに動悸や不整脈といった症状が現れるケースでは、多くの場合で迷走神経の関与が示唆される。迷走神経は副交感神経の中心的な経路であり、延髄から出て上部頸椎付近を通過している。ゆえに、この部位の安定性が失われると、迷走神経に持続的な刺激や圧迫が加わり、循環系の調整が乱れる原因になる。

腰部の生理的カーブ、前弯が強調されてしまういわゆる反り腰の状態も、骨盤バランスの乱れによる代償作用によって引き起こされていたと考えられる。身体はバランスを保つために他の部位で補正を行う特性があるため、骨盤が後方に傾くような変位があると、脊柱全体の姿勢にも影響が及び、結果的に腰椎の過前弯へと繋がることが多い。

椎間板の評価では、6段階中4段階と慢性的な段階が腰部に認められた。仙腸関節は骨盤の安定を担う重要な関節であり、一方が固くなって動きに制限が出ると、もう一方が過剰に可動するようになってしまう。その結果、日常の歩行動作の中で腰部が繰り返し捻られるような負荷を受け、椎間板に対して持続的なストレスが加わることになる。

加えて、生理痛の問題についても今回の自律神経の乱れが大きく関与していたと推測される。生理時に発生する強い腹部の痛みは、子宮収縮を促すプロスタグランジンという生理活性物質が過剰に分泌されることで引き起こされる。副交感神経の働きが低下することでホルモンの調整がうまくいかず、プロスタグランジンの過剰分泌を促していた可能性が高い。

上部頸椎と骨盤部という、自律神経の調整に深く関わる部位の機能が回復したことで、結果的にホルモンバランスにも変化が起こり、これまで長年苦しんできた生理痛にも明らかな改善が見られたのだろう。

今回の症例は、顎関節症という局所的な訴えの背景に、神経系全体の機能低下が関与していたことを示している。神経の流れを整えることで、体内の情報伝達がスムーズに行われるようになり、顎関節症だけでなく、睡眠、自律神経、内臓機能といった複数の問題が同時に改善していった過程は、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が分かる症例である。
30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症
30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症 30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症 30年以上、顎の異音と開閉の不安に悩まされ続けた顎関節症
前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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