顎関節症(耳鳴り、頭痛、不眠症、便秘と下痢を繰り返す)

顎関節症(耳鳴り、頭痛、不眠症、便秘と下痢を繰り返す)

8年間、開けられなかった口が開けるようになった!

40代男性
来院に至った経緯
中学生の頃から、口を大きく開けると左顎からガクッと音が鳴るようになった。特に怪我をした記憶はなく、痛みもなかったので放置していた。

8年前にお祭りで趣味の神輿担ぎをしたときに顎を強打した。そのときはテンションが上がっていたため、痛いなくらいだったが、翌朝起きると左顎からハッキリとした痛みがあり、口が大きく開けられなくなった。

痛みがどんどん強くなるので、病院や歯医者に行ったが、顎を強打しての打撲の可能性が高いのでしばらく様子を見ましょうと鎮痛薬を処方された。鎮痛薬を飲むと痛みが治まったが、薬の効果が切れるとまた左顎から痛みが出た。

3か月経っても痛みが続いたので、再度病院へ行くと、病院ではこれ以上やりようがないと言われてしまった。それから顎関節専門と謳っている治療院に色んなところに通ってみたが、普通にしていれば痛みも和らぐが、口を開けた時の痛みは変わらなかった。

日のよって痛みが違ったが、酷いときは口をまったく開けることができなくなるほどの痛みが出るので、そのときだけ鎮痛薬を服用して対処していた。

顎が痛くなって3年位経った頃、左耳からキーンという高い金属音のような耳鳴りが頻発するようになった。特に時間帯なども関係なく、寝起きから聞こえることもあれば、寝る直前に聞こえることもあった。

それからは午後になると頭痛が頻発するようになった。頭痛薬を飲むと左顎の痛みも和らぐような気がして、薬を飲む回数が明らかに増えた。次第に睡眠の質も悪くなり、酷いときには布団に入って2~3時間眠れないこともあった。

眠れない影響なのかお腹の調子も悪くなって、便秘が数日続いたあと、出ると下痢ということを繰り返していた。子供の頃から、どれだけ体調が悪くなっても胃腸だけは強いと自分では思っていたので、年齢のせいなのかと思っていた。

そんなときYoutubeで塩川満章先生の動画を見る機会があった。顎関節症が治ったという動画を見て、これまで顎関節専門の治療院に何度も通っても変化すらなかったのに本当かなと半信半疑だったが、一度受けてみようと塩川先生のクリニックに問い合わせてみた。

残念ながら塩川先生は新規の予約はストップしていると言われてしまったが、神奈川県にお住まいでしたら藤沢駅前で副院長の前田先生が開院されていますよと教えてもらった。仕事のことを考えると、何度も塩川先生のクリニックがある銀座までは通えないなと思っていたので、藤沢駅だったら電車ですぐのところだと思い、当院に来院された。


【神奈川県大和市から来院】
初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    右仙骨翼の強い浮腫感

  • 03

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起と右仙骨翼に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。

3週目(3回目のアジャストメント)には、8年間あった左顎の痛みが和らいできた。また午後になると頻発していた頭痛はほとんど感じなくなり、頭痛薬や鎮痛薬は飲まなくてもよくなった。

6週目(6回目のアジャストメント)には、睡眠の質がよくなり、布団に入って2~3時間は眠れなくなっていたものが、以前のようにすぐに眠れるようになった。左顎の痛みはさらに引いてきて、ある程度は口が開けられるようになった。

9週目(9回目のアジャストメント)には、お腹の調子も安定して、以前のように快便が戻った。頭痛はまったく出なくなり、耳鳴りはそういえば最近出ないですねと本人も忘れているほどだった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

19週目(14回目のアジャストメント)には、口を大きく開けても痛みをまったく感じなくなり、約8年ぶりにハンバーガーを食べられるまで回復した。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の顎関節症は、首のバランス(特に第一頸椎)の乱れが最大の原因であったと考えられる。趣味のお神輿を担いでいる最中に顎を強打したことが要因ではあったものの、中学生の頃から左顎関節からクリック音が鳴っていたことを考えると、若い頃から首のバランス(特に第一頸椎)の乱れがあったのだろう。

顎関節は人体の関節の中でも最も小さな関節の一つになる。顎関節には関節円盤という口を開けるときに顎の動きをスムーズにする部分が存在しているが、関節円盤の動きは首からの神経(特に第一頸椎)と密接な関係がある。

今回のケースでは、顎を強打した直接的な外傷も要因となっていたため、顎関節(TMJ関節)への直接的なアプローチも行ったが、ほとんどのケースでは顎関節の動きを支配している神経系の上部頸椎だけのアプローチで改善されるケースが多い。

検査では上部頸椎だけではなく、骨盤部にも強い反応が見られた。上部頸椎や骨盤部はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があることで、交感神経が過剰に働いてしまい、自律神経の乱れにも繋がってしまう。

不眠症などはその典型例で、交感神経が過剰に働いたことで休まるスイッチを入れることができずに不眠症を発症していたと考えられる。また午後以降に出る頭痛は緊張性の頭痛であり、交感神経が過剰に働いている人の特徴でもある。

便秘と下痢を繰り返す問題も、大腸などに器質的な問題がなければ、典型的な自律神経の問題である。腸の蠕動運動は、副交感神経が優位なときに活発となるが、自律神経のバランスが乱れることで腸の蠕動運動も不安定な状態となり、便秘と下痢を繰り返すという事態に陥ってしまう。

アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、顎関節へと繋がる神経機能が回復したことで、慢性的だった顎関節症の改善に繋がったと考えられる。また自律神経のバランスが整った結果、不眠症、頭痛、便秘、下痢などの症状も解消されたのだろう。

約8年間もの間、口を大きく開けることができなかった顎関節症でも、神経の流れを整えることで関節円盤の動きもスムーズとなり、痛みや炎症も落ち着いたのだろう。あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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