長年の肩こり・腰痛と股関節の痛み|身体全体から考えるカイロプラクティック
「長時間座っていると、首や肩がつらくなる」
「腰から股関節にかけて張り、立ち上がるときに身体を伸ばしにくい」
「マッサージを受けると楽になるけれど、しばらくすると痛みが戻ってしまう」
デスクワークを続けていると、首や肩、腰などに負担を感じることがあります。長年同じような症状を抱えている方の中には、ケアを受けても一時的にしか楽にならず、仕事だけでなく、ジムでのトレーニングやヨガなど、好きな運動にも支障が出ている方がいるかもしれません。
肩こりや腰痛は、長時間の座位や身体活動の量、筋肉への負担、睡眠やストレスなど、さまざまな要因が関係して起こります。また、腰の痛みと股関節の動かしにくさが同時に現れる場合には、それぞれの状態に加え、立ち上がる、歩く、運動するといった動作の中で、身体がどのように働いているのかを確認することも大切です。
今回ご紹介するのは、20年以上前から首や肩の痛みがあり、5年以上続く腰痛と右股関節の痛みにも悩まされていた50代男性の症例です。長時間のデスクワークによって症状が強まり、仕事や運動にも影響が出ていましたが、カイロプラクティックのケアを重ねる中で、股関節の痛みや肩こり、腰まわりの不快感に変化がみられました。
では、この男性の身体にはどのような特徴があり、ケアを重ねる中で何が変化したのでしょうか。このコラムでは、症例の経過をもとに、肩こり・腰痛・股関節の痛みを身体全体の視点から考えること、そして身体の状態を知ることの大切さについて解説します。
■ 長時間のデスクワークが肩こり・腰痛・股関節の痛みに関係する理由
デスクワークでは、長時間同じ姿勢で座り続けることが多くなります。座っている間も、首や肩、背中、腰まわりの筋肉は姿勢を保つために働いています。その状態が長く続くと、筋肉の疲労やこわばりが生じ、首・肩の張りや腰の不快感につながることがあります。
特に、パソコンの画面をのぞき込むような姿勢や、背中を丸めた姿勢が続くと、頭部や上半身を支える筋肉への負担が変化します。ただし、姿勢だけが痛みの原因とは限りません。仕事中の身体の動かし方、運動量、睡眠、ストレス、過去のけがなど、複数の要因が関係する場合があります。
腰の不調とあわせて確認したいのが、股関節の働きです。股関節は骨盤と太ももの骨をつなぐ関節で、歩く、しゃがむ、椅子から立ち上がるといった動作を支えています。立ち上がるときには、股関節や膝、体幹などが連動して働くため、股関節に痛みや動かしにくさがあると、動作全体に負担を感じることがあります。
また、腰と股関節は、身体を動かす際に互いに影響し合います。例えば、股関節の動きが制限されると、腰や骨盤まわりの動き方が変わることがあります。一方で、腰に痛みがあると、股関節を十分に動かしにくくなる場合もあります。ただし、腰痛と股関節痛が同時に起きていても、必ずしも同じ原因によるものとは限りません。それぞれの症状や関節の動き、日常生活で困っている動作を確認することが大切です。
今回の50代男性も、長時間のデスクワークによって首から肩にかけての痛みが強まり、座っていると腰から右股関節にかけて張り感が出ていました。さらに、椅子から立ち上がる際に背中を伸ばしにくく、仕事だけでなく、ジムでのトレーニングやヨガにも支障が出ていたそうです。
このように、肩こりや腰痛、股関節の痛みが重なっている場合には、痛みを感じる場所だけでなく、どのような動作で症状が強くなるのか、身体の動きにどのような特徴があるのかを確認することが重要です。長期間続く痛みや、仕事・運動に支障が出る症状については、必要に応じて医療機関で評価を受けながら、身体全体の状態を把握していくことが、今後のケアを考える手がかりになります。
■ 骨盤・背骨・股関節はどのようにつながっているのか?
身体を動かすとき、骨盤・背骨・股関節は互いに連動しています。それぞれが別々に働いているように見えても、立つ、歩く、座る、身体を前にかがめるといった動作では、複数の関節や筋肉が協調して動いています。
例えば、椅子から立ち上がる動作を考えてみましょう。まず上半身を前に傾け、その動きに合わせて股関節や膝を曲げ伸ばししながら身体を持ち上げます。このとき、骨盤や背骨も動作に合わせて位置を変え、身体のバランスを保っています。股関節の動きが制限されていたり、腰に痛みがあったりすると、動作の仕方が変わり、ほかの部位に負担を感じることもあります。
股関節は、骨盤と太ももの骨をつなぐ関節で、上半身の重さを支えながら、歩行や階段の上り下り、運動など幅広い動作を担っています。一方、骨盤は背骨と下肢をつなぐ位置にあり、身体を支えたり、動作に合わせて力を伝えたりする役割を持っています。こうした構造上のつながりから、腰や股関節の状態を確認するときには、痛みのある部分だけでなく、周囲の関節や動作にも目を向けることが大切です。
ただし、骨盤の傾きや背骨のカーブに特徴があるからといって、それだけで肩こりや腰痛、股関節痛の原因を特定できるわけではありません。画像で確認される椎間板の変化や背骨の形状も、症状のない人にみられることがあります。痛みには、筋肉や関節の状態だけでなく、身体活動、睡眠、ストレス、過去のけがなど、複数の要因が関係する場合があります。
また、長時間座り続ける生活では、身体を動かす機会が少なくなり、同じ姿勢を長く保つことによる疲労やこわばりを感じやすくなる場合があります。仕事の合間に立ち上がる、短時間でも歩く、無理のない範囲で身体を動かすなど、姿勢を固定し続けない工夫も大切です。運動をするときも、痛みを我慢して続けるのではなく、症状や身体の状態に合わせて負荷を調整することが重要です。
肩こりや腰痛、股関節の痛みが重なっている場合には、それぞれを別々の問題として捉えるだけでなく、どのような動作で負担を感じるのか、関節の動きに制限がないかなど、身体全体の状態を確認することが役立ちます。身体の構造と動きのつながりを理解することは、不調を一つの原因だけで決めつけず、自分に合ったケアを考えるための手がかりになります。
■ 身体全体の状態を確認し、自分の身体を理解するカイロプラクティック
カイロプラクティックは、脳と身体をつなぐ神経系に着目し、身体全体の状態を評価するヘルスケアです。肩こりや腰痛、股関節の痛みがある場合にも、症状が出ている場所だけでなく、関節の動きや姿勢、筋肉の緊張などを確認しながら、身体の状態を多角的に捉えることを大切にしています。
カイロプラクティックでは、神経系の働きに関わる概念として「サブラクセーション」という言葉を用います。ただし、これはカイロプラクティック独自の概念であり、医学的に診断される神経の圧迫と同じものではありません。また、骨盤や背骨の状態だけで、肩こり・腰痛・股関節痛の原因をすべて説明できるわけではありません。身体の状態を確認する際には、症状の経過や生活習慣、関節の動きなどをあわせて評価することが重要です。
そのため、カイロプラクティックでは、視診による姿勢や動きの観察、静的触診や動的触診による身体の状態の確認、体表温度検査など、複数の方法を用います。必要性がある場合には、レントゲン画像も評価の参考にします。ただし、体表温度の左右差や画像上の特徴だけで、痛みの原因や神経機能の状態を確定できるわけではありません。検査結果を症状や身体の状態と照らし合わせ、適切に判断することが大切です。
アジャストメントは、評価によって確認した身体の状態を踏まえて行うカイロプラクティックの専門的な手技です。今回の男性は、初診時に右仙腸関節の動きの制限や、腰部から首・背中にかけての筋肉の緊張が確認されました。ケアを重ねる中で、股関節の痛みや肩こり、腰まわりの不快感に変化がみられ、10回目にはジムでのトレーニング中に股関節を動かしやすく感じるようになりました。
この症例で大切なのは、骨盤のバランスがすべての症状の原因だったと結論づけることではありません。長年続く不調に対して、身体の状態を確認し、ケアを重ねながら症状や動作の変化を追っていった点です。症状の変化には複数の要因が関係する可能性があるため、経過を振り返りながら身体の状態を把握することが重要です。
仕事や運動を続ける中で、肩こりや腰痛、股関節の痛みが繰り返されるときは、痛みを一時的に和らげることだけでなく、どのような場面で負担が強くなるのか、自分の身体にどのような変化が起きているのかを知ることも大切です。カイロプラクティックを通じて身体全体の状態を確認することは、自分に合った健康管理を考えるための一つの選択肢になります。
痛みが長く続く場合や、強い痛み、しびれ、筋力の低下などがある場合には、医療機関での評価も重要です。身体の状態を把握し、必要な医療やケアを選びながら、仕事や運動を無理なく続けられる身体づくりを考えていきましょう。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


