薬を飲んでもつらい生理痛。子宮筋腫と月経量・貧血の関係
「生理のたびに下腹部が痛くて、鎮痛剤が手放せない。」
「以前は平気だったのに、年齢とともに生理痛が強くなってきた。」
「経血量が増えて、立ちくらみや息切れまで感じるようになった。」
月経に伴う下腹部の痛みは、多くの女性が経験する身体の変化です。しかし、「生理だから痛いのは仕方がない」と考えているうちに、以前より痛みが強くなったり、鎮痛剤を飲んでも日常生活に支障が出たり、月経量そのものが増えてきたりすることがあります。
そもそも月経は、妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が剥がれ、血液とともに体外へ排出される生理的な現象です。その際、子宮は内容物を外へ送り出すために収縮します。つまり、月経と子宮の収縮にはもともと密接な関係があり、その収縮に関わる物質の一つが「プロスタグランジン」です。
ところが、生理痛の強さはすべての女性で同じではありません。同じ女性でも、以前はほとんど痛みを感じなかったのに、ある時期から急に強い痛みを感じるようになることもあります。こうした変化がみられる場合には、単純に「生理痛が重くなった」と考えるだけではなく、その背景に身体の変化や婦人科疾患が隠れていないかを確認することが重要です。
その一つが子宮筋腫です。子宮筋腫は子宮の筋層にできる良性の腫瘍で、できる場所や大きさ、数によって現れる症状は異なります。ほとんど症状がない場合もありますが、月経量の増加や月経期間の長期化、月経痛、下腹部の圧迫感などにつながることがあります。
そして、ここで見落としたくないのが「出血」と「貧血」の関係です。月経量の多い状態が続けば、身体から失われる鉄も増えていきます。鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンをつくるために必要であるため、鉄の不足が進めば鉄欠乏性貧血につながり、立ちくらみや息切れ、動悸、疲れやすさなど、月経期間以外の生活にまで影響が広がることがあります。
つまり、「生理痛」「月経量の増加」「貧血」は、それぞれ無関係な症状として現れているとは限りません。特に、それまで問題のなかった生理痛が急に強くなった場合や、経血量が明らかに増えた場合、立ちくらみや息切れなどを伴う場合には、鎮痛剤だけで痛みを抑え続けるのではなく、まず婦人科で原因を確認することが大切です。
一方で、月経は子宮だけが単独で行っている働きでもありません。女性ホルモンの周期的な変化、子宮内膜の変化、子宮の収縮、血流、そしてそれらを調節する身体のさまざまな仕組みが関わりながら、毎月のサイクルがつくられています。
では、なぜ月経のときに子宮は収縮し、それが強い生理痛につながることがあるのでしょうか。そして子宮筋腫がある場合、なぜ「痛み」だけではなく、月経量の増加や貧血まで一緒に考える必要があるのでしょうか。
このコラムでは、生理痛が起こる仕組みを入り口に、子宮筋腫と月経量の増加、貧血との関係、そして月経を支えている身体の働きについて解説していきます。
■生理のとき、なぜ子宮は収縮して痛みが起こるのでしょうか?
月経は、単に「子宮から血液が出ている」現象ではありません。妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が、妊娠が成立しなかった場合に剥がれ落ち、血液などとともに体外へ排出される一連の生理的な変化です。その排出を進めるために重要な役割を担っているのが、子宮の筋肉の収縮です。
子宮の壁の大部分は「子宮筋層」と呼ばれる平滑筋でできています。腕や脚の筋肉のように自分の意思で動かす筋肉ではなく、私たちが意識しなくても働く筋肉です。月経が始まると、この子宮筋が収縮と弛緩を繰り返しながら、剥がれた子宮内膜や血液を子宮の外へ送り出していきます。
この子宮収縮に深く関わっている物質の一つが「プロスタグランジン」です。月経が始まる時期になると子宮内膜で産生され、子宮筋を収縮させる働きを持っています。つまり、子宮が収縮すること自体は異常ではなく、月経を進めるために必要な身体の反応なのです。
一方で、プロスタグランジンの作用が強くなると子宮の収縮も強まり、下腹部に痛みを感じやすくなります。また、プロスタグランジンは子宮だけに作用するわけではないため、生理の際に腰痛や吐き気、下痢、頭痛などを伴う人もいます。「生理痛」と一言でいっても、下腹部だけの問題として現れるとは限りません。
では、月経のたびに多少の子宮収縮が起こるのであれば、なぜほとんど痛みを感じない人と、鎮痛剤が必要になるほど強い痛みを感じる人がいるのでしょうか。ここで大切なのが、「月経時に痛みがある」という結果だけで、すべてを同じ生理痛として扱わないことです。
生理痛には、明らかな婦人科疾患が確認されない場合もあれば、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などの疾患が背景に存在する場合もあります。特に、それまで生理痛がほとんどなかったのに急に痛みが強くなった、以前より経血量が増えた、月経期間が長くなったといった変化がある場合には、「体質だから」「年齢のせいだから」と決めつけず、婦人科で原因を確認することが重要です。
さらに、月経に伴う痛みを見るときには、「どれだけ痛いか」だけではなく、身体の中で何が変化しているのかを見る必要があります。子宮の収縮は月経に必要な正常な働きですが、その背景に子宮そのものの構造的な変化が加われば、月経の現れ方も変わる可能性があります。
その代表的なものの一つが子宮筋腫です。子宮筋腫は同じ「筋腫」という診断であっても、どこにできているのか、大きさや数はどうなのかによって、月経への影響は異なります。そして子宮筋腫を考えるときには、生理痛だけではなく「どれくらい出血しているのか」という視点も重要になります。
なぜなら、月経による出血が増えた状態が続けば、その影響は月経中だけでは終わらないからです。身体から失われる血液と鉄が増えることで、やがて貧血という別の問題につながり、立ちくらみや息切れ、動悸、疲労感などとして日常生活に現れることがあります。
生理痛は「痛いか、痛くないか」だけを見る症状ではありません。子宮がなぜ収縮しているのか、その痛みが以前と比べてどう変化しているのか、月経量にも変化が起きていないかまで確認することで、その背景にある身体の変化をより深く理解することができます。
■月経は、子宮だけで起こっている現象なのでしょうか?
月経というと、どうしても「子宮から出血する現象」というイメージが強くなります。しかし、毎月ほぼ一定の周期で子宮内膜が変化し、排卵や月経が繰り返されるためには、子宮だけが働いていればよいわけではありません。脳、卵巣、子宮が互いに関係しながら、女性ホルモンの分泌と身体の変化を調節しています。
その調節には、脳の視床下部と下垂体、そして卵巣が関わっています。視床下部からの信号を受けて下垂体からホルモンが分泌され、その刺激を受けた卵巣からエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが分泌されます。さらに卵巣から分泌されたホルモンの情報は脳側にも伝わり、次のホルモン分泌の調節に利用されます。
こうした双方向の調節によって、卵胞が発育し、排卵が起こり、子宮内膜も妊娠に備えて変化していきます。妊娠が成立しなければ女性ホルモンの状態が変化し、厚くなった子宮内膜が剥がれて月経が始まります。つまり月経は、子宮だけで完結している出来事ではなく、脳と卵巣、子宮が連動してつくられている周期的な身体の変化なのです。
この仕組みを知ると、生理痛についても「子宮が痛い」という結果だけを見るのではなく、月経周期全体の中で捉えることができます。ただし、生理痛が強いからといって、必ずホルモン分泌や神経系に異常があるという意味ではありません。特に強い痛みや経血量の増加がある場合には、まず子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症など、婦人科で確認すべき原因を見落とさないことが重要です。
また、月経量が増えている場合には、痛みとは別の角度から身体を見る必要があります。出血量が多い状態が続けば鉄の喪失量も増え、身体の鉄が不足していきます。鉄はヘモグロビンをつくるために必要であり、鉄欠乏性貧血が進めば、立ちくらみや息切れ、動悸、倦怠感などが現れることがあります。
ここで重要なのは、こうした症状をすべて「生理のときの不調」と一括りにしないことです。下腹部痛には子宮収縮や婦人科疾患が関係する可能性があり、月経量の増加には子宮の構造的な問題が関係することがあります。そして貧血による息切れや倦怠感は、血液が全身へ酸素を運ぶ働きと関係しています。同じ時期に現れていても、それぞれの症状が生まれる仕組みは同じではありません。
だからこそ、身体を一つのつながりとして見ることと、何でも一つの原因で説明することは別です。生理痛も、月経量の増加も、貧血も、「神経の問題だから」「ホルモンの問題だから」と一つにまとめるのではなく、それぞれに必要な医学的評価を行ったうえで、身体全体がどのように調節されているのかを見る必要があります。
前田カイロプラクティック藤沢院でも、生理痛そのものや子宮筋腫、貧血を直接治療することを目的としているわけではありません。視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など複数の検査を組み合わせ、脳と身体との情報交換を妨げ、神経機能に影響を与えているサブラクセーション(神経伝達の阻害)がないかを評価します。
アジャストメントの目的も、子宮筋腫を小さくしたり、鉄を増やしたり、女性ホルモンの分泌量を直接変えたりすることではありません。神経機能を妨げている要因を取り除き、身体が本来持っている調節機能や「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えることです。
月経は毎月繰り返されるため、いつの間にか「いつもの生理痛」として身体の変化を見過ごしてしまうことがあります。しかし、以前とは痛み方が違う、経血量が増えた、立ちくらみや息切れまで現れるようになったという変化には、それぞれ意味があります。症状をただ我慢するのではなく、身体から送られている変化のサインとして捉え、必要な医学的評価とともに身体全体を見ることが大切です。
■それまでなかった生理痛が突然始まり、貧血まで現れた30代女性
生理痛は毎月繰り返されるため、「いつものことだから」と我慢してしまうことがあります。しかし、それまでほとんど生理痛がなかった人に強い痛みが現れたり、以前より月経量が増えたりした場合には、単に「生理が重くなった」と考えるだけではなく、身体にどのような変化が起きているのかを確認することが大切です。
前田カイロプラクティック藤沢院に来院された30代女性も、学生時代から社会人になるまで、生理痛で困った経験はほとんどありませんでした。ところが30歳を過ぎたある朝、出勤準備中に突然下腹部へ鋭い痛みが走り、身体を動かすことも難しくなりました。それ以降は月経のたびに強い痛みが現れ、市販の鎮痛剤で一時的に楽になっても、薬が切れると再び痛みが戻る状態が続くようになりました。
その後、30代後半に婦人科で子宮筋腫と診断されました。さらに月経量が増え、貧血による立ちくらみや息切れまで現れるようになり、外出時には鎮痛剤と予備のナプキンが欠かせなくなっていました。ホルモン剤によって出血を抑えていた時期もありましたが、服用をやめると症状が再び現れ、生理が近づくこと自体に不安を感じるようになっていました。
この女性の経過を見ると、「生理痛」という一つの言葉だけでは身体に起きていた変化を十分に表せないことが分かります。下腹部の痛みだけではなく、月経量の増加、貧血による立ちくらみや息切れ、腰の重だるさや冷えなど、複数の問題が重なっていました。だからこそ、以前とは異なる生理痛や経血量の変化が現れた場合には、まず婦人科で子宮筋腫などの器質的な問題がないかを確認することが重要です。
当院では、子宮筋腫そのものを治療することや、貧血を直接改善することを目的としてカイロプラクティック・ケアを行うわけではありません。この女性についても、医療機関で子宮筋腫と診断されていることを踏まえたうえで、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価などを組み合わせ、身体の状態を評価しました。検査では骨盤部を中心とした可動性の低下や体表温度の左右差、筋緊張など複数の所見が確認されました。
それらの検査結果を照らし合わせながらサブラクセーション(神経伝達の阻害)を見極め、必要と判断した箇所へアジャストメントを行っていきました。その目的は、子宮筋腫を小さくしたり、経血量を直接減らしたり、女性ホルモンの分泌を操作したりすることではありません。神経機能を妨げている要因を取り除き、その人自身が持っている身体の調節機能や「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えることです。
ケアを継続する中で、この女性には月経前の下腹部の重さや生理痛、鎮痛剤の使用頻度などに変化がみられ、その後は冷えや疲労感、月経時の身体の状態にも変化が現れていきました。
月経は毎月繰り返されるからこそ、少しずつ起こる変化を「いつもの生理」として見過ごしてしまうことがあります。しかし、「以前は痛くなかったのに痛くなった」「経血量が明らかに増えた」「立ちくらみや息切れまで出てきた」という変化は、身体の状態を確認する重要なきっかけになります。
生理痛をただ我慢したり、痛みだけを抑え続けたりするのではなく、まず必要な婦人科的評価を受け、そのうえで月経周期や神経系を含めた身体全体の働きにも目を向けること。それが、毎月繰り返される身体の変化を「仕方がないもの」で終わらせず、自分自身の身体を理解することにつながります。
▶薬を飲んでも止まらない生理痛と貧血に悩まされた子宮筋腫の詳しい症例報告はこちら
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。
シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。


