背中の痛みが寝ているときにも続くのはなぜ?長引く不調と身体の関係
「背中の張りが何年も続いている」
「マッサージを受けても、しばらくすると痛みが戻ってしまう」
「寝ているときにも背中が痛み、仕事や睡眠にまで影響している」
背中の張りや痛みは、仕事中の姿勢や身体の使い方など、日常生活のさまざまな場面で生じることがあります。特に、長時間同じ姿勢を保ったり、片側の腕でパソコンなどの荷物を持ちながら作業したりする場合には、首や肩、背中の筋肉に負担がかかることがあります。
初めは張りや違和感程度だったものが、時間の経過とともに痛みへと変わり、やがて睡眠や仕事、運動にも支障が出るようになることもあります。整体やマッサージなどで一時的に楽になっても、同じような不調を繰り返していると、「なぜ痛みが続くのだろう」と疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、3年以上前から左背中の張りを感じ、重いものを持ったことをきっかけに痛みが強まり、来院前には寝ているときにも痛みが続くようになった40代男性の症例です。首から背中にかけての痛みに加え、腰の違和感や右股関節の痛みも現れ、定期的に通っていたジムでのトレーニングも休まざるを得ない状態でした。
このように長く続く背中の痛みには、筋肉や関節の状態だけでなく、仕事中の身体の使い方や生活習慣など、複数の要因が関係している可能性があります。このコラムでは、背中の痛みと身体の動きの関係を解説しながら、症例の経過を通して、身体全体の状態を確認することの大切さと、カイロプラクティックがどのような視点から身体を評価するのかをご紹介します。
■ 長時間の仕事や片側に偏った姿勢が背中の痛みにつながる理由
背中の筋肉は、頭や腕、体幹を支えながら、姿勢を保ったり身体を動かしたりする役割を担っています。デスクワークや立ち仕事などで同じ姿勢が長く続くと、特定の筋肉に負担がかかり、張りやこわばりを感じることがあります。
また、仕事中の身体の使い方も、背中の負担に関係することがあります。例えば、片側の腕でパソコンや荷物を持ちながら移動する場合、身体のバランスを保つために、左右の筋肉の使い方が変わることがあります。その状態が長時間続けば、首や肩、背中の一部に疲労が蓄積し、違和感につながる可能性があります。ただし、左右どちらかの筋肉を多く使っていることだけで、痛みの原因を特定できるわけではありません。
さらに、重いものを持ち上げる動作では、背中や腰の筋肉だけでなく、股関節や体幹なども協調して働きます。持ち上げる物の重さや身体の位置、動作のタイミングなどによって、身体にかかる負担は変化します。もともと張りや違和感があった部分に負荷が加わることで、痛みが強くなる場合もあります。
背中の痛みを考えるうえで、見逃せないのが睡眠への影響です。痛みが強いと、寝返りや寝る姿勢によって不快感が生じ、眠りが妨げられることがあります。また、睡眠が十分に取れないと、翌日の疲労感が強まり、痛みをよりつらく感じることもあります。このように、痛みと睡眠は互いに影響し合う場合があるため、日中だけでなく、安静時や夜間にどのような症状があるのかを確認することも大切です。
今回の40代男性は、仕事でパソコンを持ちながら移動することが多く、左腕でパソコンを支える姿勢が続いていました。3年ほど前から左背中の張りを感じており、重いものを持った際に痛みが出てからは、症状が強くなったり和らいだりする状態を繰り返していたそうです。来院前には、寝ているときにも痛みが続き、仕事や睡眠に支障が出るほどになっていました。
ただし、長引く背中の痛みを仕事の姿勢や筋肉の疲労だけで説明することはできません。筋肉や関節の問題のほか、背骨や椎間板の状態、神経に関わる問題など、さまざまな原因が考えられます。特に、安静にしていても強い痛みが続く場合や、夜間の痛みが悪化する場合、発熱、胸痛、息苦しさ、手足のしびれや力の入りにくさなどを伴う場合には、医療機関での評価が必要です。
背中の痛みが繰り返されるときは、痛みが出る動作や時間帯、仕事中の姿勢、睡眠への影響などを振り返ることが、身体の状態を理解する手がかりになります。症状が続く場合には原因を自己判断せず、必要な検査や評価を受けながら、身体にどのような変化が起きているのかを確認することが大切です。
■ 背中・腰・股関節はそれぞれ独立しているわけではない
背中に痛みがあると、その部分の筋肉や関節に原因があると考えがちです。しかし、身体を動かすときには、背骨や骨盤、股関節などが連動して働いています。そのため、痛みを感じる場所だけでなく、身体全体の動きや機能を確認することも重要です。
背骨は、首から腰まで連なる構造で、身体を支えながら、前後や左右への動き、回旋などを可能にしています。また、骨盤は背骨と股関節の間に位置し、上半身と下半身をつなぐ役割を担っています。歩く、座る、立ち上がる、物を持ち上げるといった日常動作では、これらの部位が互いに協調しながら働いています。
例えば、長時間座ったあとに立ち上がる動作では、股関節や骨盤、背骨がそれぞれ適切に動くことで、身体をスムーズに起こすことができます。一方、痛みや動きにくさがある場合には、無意識に動作を変えたり、ほかの部位を多く使ったりすることがあります。こうした変化は、身体の動き方に影響を与える可能性がありますが、特定の部位の動きにくさが、必ず別の場所の痛みを引き起こすとは限りません。
また、背中の痛みと同時に腰や股関節にも違和感がある場合、それぞれの症状が同じ原因から生じているのか、別々の問題なのかを見極める必要があります。痛みが複数の場所に現れているからといって、骨盤の傾きや背骨の配列だけで、その関係を説明できるわけではありません。筋肉や関節の状態、神経に関わる症状、日常生活での負荷などを含めて考えることが大切です。
身体の状態を評価するときには、姿勢を観察するだけでなく、どの方向に動かしにくさがあるのか、動作によって痛みが変化するのか、左右で動き方に違いがあるのかなど、複数の視点から確認します。こうした情報を組み合わせることで、症状が現れている部位だけでは把握しにくい身体の特徴を理解する手がかりになります。
背中の痛みが長引いているときこそ、痛みのある場所だけに注目するのではなく、背骨や骨盤、股関節の動き、そして日常生活での身体の使い方を振り返ってみることが大切です。身体全体のつながりを理解することは、不調を繰り返さないために、自分の身体と向き合う第一歩にもなります。
■ カイロプラクティックから考える、身体全体の状態を知ることの大切さ
カイロプラクティックは、脳と身体をつなぐ神経系の働きに着目し、身体の構造や機能を評価するヘルスケアです。背中の痛みや腰の違和感がある場合にも、症状が現れている部分だけでなく、背骨や骨盤の動き、姿勢、日常生活での身体の使い方など、複数の視点から身体の状態を確認します。
カイロプラクティックでは、神経系の働きと関連づけて考える概念の一つに「サブラクセーション」があります。これはカイロプラクティック独自の概念であり、一般医学で診断される神経圧迫と同じ意味ではありません。身体の状態を評価する際には、この概念だけで痛みの原因を決めつけるのではなく、症状や身体の動き、必要に応じた医学的評価などを踏まえて判断することが重要です。
また、アジャストメントは、カイロプラクティックにおいて、評価に基づいて特定の関節などに加える専門的な手技です。身体の状態や症状に応じて適応を判断し、目的や期待できる変化を理解したうえで受けることが大切です。背中の痛みがある場合も、すべての症状が背骨や骨盤の状態だけで説明できるわけではなく、必要に応じて医療機関での検査や診察を優先します。
今回の40代男性は、長年続いていた左背中の張りに加え、寝ているときにも痛みを感じ、右股関節にも不調が現れていました。カイロプラクティックの評価では、背中や腰の筋肉の緊張、関節の動きなど、身体全体の状態を確認しました。その後、施術を重ねるなかで、背中の痛みや寝ているときのつらさが軽減し、右股関節の痛みも和らいでいきました。8週目頃にはジムでのトレーニングを再開できるまでに回復したと報告されています。
この経過から、背中の痛みが長引いているときには、痛みのある部分だけでなく、身体の動きや生活習慣を含めて状態を把握することが大切だと考えられます。ただし、症状の変化だけで改善の原因を一つに特定することはできません。仕事での身体の使い方や休息の取り方も振り返りながら、自分の身体にどのような変化が起きているのかを知ることが、日々の健康管理につながります。
身体の変化に気づき、自分の身体を理解すること。それは、不調を我慢し続けるのではなく、必要なときに適切なケアや医療につなげるためにも大切な視点です。背中の痛みや腰の違和感が続いている方は、症状だけで判断せず、身体全体の状態を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティックで実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。


