2026.09.09

慢性腰痛でコルセットが手放せない。身体を「支える」とはどういうこと?

カテゴリ: 健康通信
慢性腰痛でコルセットが手放せない。身体を「支える」とはどういうこと?

腰痛が強くなると、「腰をしっかり支えた方が安心」と感じることがあります。実際にコルセットを装着すると、腰まわりが固定されることで動作への不安が軽くなったり、立ち上がったり歩いたりするときに身体を動かしやすく感じたりすることがあります。医療現場でも、症状や身体の状態に応じてコルセットが用いられることがあります。

では、コルセットで腰を支えていれば、身体は以前と同じように動き続けられるのでしょうか。ここで一度考えてみたいのが、そもそも人間の身体にとって「腰を支える」とは何なのかということです。

私たちが立ったり歩いたりするとき、腰だけで上半身を支えているわけではありません。背骨や骨盤、股関節などが連動し、周囲の筋肉がその瞬間の姿勢や動作に合わせて働いています。さらに、足が地面に接したときの感覚や関節の位置、身体の傾きといった情報を神経系が受け取りながら、姿勢や動きを絶えず調整しています。つまり本来の「身体を支える」という働きは、腰を外側から固定することだけではなく、身体自身が状況に合わせて動きながら安定性をつくり出すことでもあります。

これは、コルセットが良い、悪いという話ではありません。身体を外側から支える必要がある時期もあれば、それによって日常生活を送りやすくなることもあります。一方で、慢性的な腰痛が続き、コルセットを巻いていても歩ける距離が少しずつ短くなっているのであれば、「もっと強く腰を支えればいい」という考え方だけでは、現在の身体で何が起きているのかを十分に捉えられないことがあります。

歩行は、その違いが非常に現れやすい動作の一つです。歩くたびに左右の脚へ交互に体重が移り、それに合わせて骨盤や股関節、背骨も動きます。身体は地面から受ける力に対応しながら、次の一歩へ向けて姿勢を変え続けています。そのため歩行には、「身体を安定させること」と「身体を動かすこと」という、一見すると反対の働きを同時に成立させる能力が必要になります。

慢性的な腰痛によって歩くことまでつらくなってくると、「年齢だから仕方がない」「筋力が落ちたからもっと歩かなければ」「腰が悪いからコルセットで固定しなければ」と考えてしまうことがあります。しかし、歩くという動作を身体全体から見ていくと、単純な筋力や腰の固定だけでは説明できない仕組みがあることが分かります。

藤沢で長年の腰痛に悩んでいる方の中にも、コルセットを使用しながら生活していたり、以前より歩ける距離が短くなったことで外出を控えるようになったりしている方がいるかもしれません。そのようなときに知っていただきたいのは、「腰を守ること」と「身体が自らを支えながら動けること」は、必ずしも同じではないということです。

このコラムでは、慢性的な腰痛とコルセットの役割、歩行時に身体を支える仕組み、そして腰痛によって歩くことがつらくなった身体を考えるうえで大切な視点について解説していきます。

■歩くとき、腰は「固定」されているわけではありません

腰痛が続いていると、「なるべく腰を動かさない方がいい」「腰をしっかり固定した方が安定する」と考えることがあります。しかし、私たちが歩いているときの身体を詳しく見ると、腰や骨盤は完全に固定されているわけではありません。むしろ、身体を安定させながら必要な部分を適切に動かすことで、一歩一歩の歩行が成り立っています。

歩行では、右脚を前へ出せば次は左脚を前へ出し、左右の脚が交互に身体を支えます。そのたびに体重を支える側が入れ替わるため、身体の重心も絶えず移動しています。それでも大きく左右へ傾いたり、毎歩立ち止まってバランスを取り直したりせずに前へ進めるのは、足関節、膝、股関節、骨盤、背骨などが連動しながら姿勢を調整しているからです。

特に骨盤は、歩行中にまったく動かない土台ではありません。脚を前後へ運ぶ動きに合わせて骨盤にも回旋などの小さな動きが生じ、その上に位置する腰椎や胸椎も連動します。こうした動きによって身体全体で歩行時の力を受け止めながら、効率よく前へ進むことができます。

また、歩行には片脚だけで身体を支える瞬間があります。右脚で身体を支えている間には左脚が地面から離れ、次の一歩へ向かって前方へ運ばれます。このとき骨盤や体幹が大きく崩れないよう、股関節周囲や体幹の筋肉などが協調して働きます。つまり歩行時の安定性は、腰を固めることでつくられているのではなく、関節の動きと筋肉の働きをその瞬間ごとに調整することで保たれています。

ここで重要になるのが、「安定していること」と「動かないこと」は同じではないという点です。たとえば建物であれば、頑丈に固定することが安定につながるかもしれません。しかし人間の身体は、動くことを前提につくられています。歩く、振り向く、物を持つ、椅子から立ち上がるといった動作では、必要な部分が動きながら、それ以外の部分が支えるという役割分担が絶えず変化しています。

そのため、腰を外側から支えるコルセットにも「身体を固定する」という役割だけを求めるのではなく、何のために使用しているのかを考えることが大切です。痛みが強い時期や身体を保護する必要がある状況では、コルセットによる外部からの支持が動作を助ける場合があります。一方で、コルセットを装着しているにもかかわらず歩くことがつらいのであれば、外側から腰を支えることと、身体自身が歩行を成立させる機能とは分けて考える必要があります。

さらに、歩くときに身体へ加わる力は腰だけで受け止めているわけではありません。足が地面に接すると、地面から身体へ力が伝わり、その力を足関節や膝、股関節、骨盤、背骨などが連動しながら受け止めていきます。同時に、身体は筋肉を働かせながら次の一歩を生み出します。歩行とは、身体を単に前へ運ぶ動作ではなく、地面から受ける力を処理しながら、自らも地面へ力を伝え続ける動作なのです。

こうして考えると、慢性的な腰痛によって歩くことがつらくなったとき、「腰の筋肉が弱いから」「腰をもっと固定すればいい」という一つの要素だけでは、歩行全体を十分に説明できないことが分かります。腰部だけでなく、骨盤や股関節を含めた複数の関節がどのように動き、身体全体でどのように体重を受け止め、次の一歩へつなげているのかという視点が必要になります。

そして、これほど複雑な動きを私たちは一歩ごとに意識して行っているわけではありません。どの関節をどの程度動かし、どの筋肉をいつ働かせるのかを、その都度頭で考えなくても歩くことができます。

では、身体は刻々と変わる姿勢や地面からの力をどのように把握し、「動きながら安定する」という複雑な調整を行っているのでしょうか。そこには筋力や関節の構造だけでは説明できない、神経系による身体の調整が深く関わっています。

■歩行に必要なのは筋力だけではなく、身体を瞬時に調整する機能です

歩くためには、もちろん筋力が必要です。脚で身体を支え、地面を蹴り、次の一歩へ身体を運ぶためには、下肢や体幹の筋肉が働かなければなりません。そのため、歩くことがつらくなったときに「筋力が落ちたのではないか」と考えること自体は間違いではありません。

しかし、実際の歩行では筋肉が強ければそれだけで十分というわけではありません。道路には傾斜や段差があり、階段を上るときと下りるときでも身体の使い方は変わります。歩く速さを変えたり、方向転換したり、人を避けたりするときにも、その瞬間の状況に合わせて身体の動きを変える必要があります。つまり歩行には、力を出す能力と同時に、その力をいつ、どこで、どの程度使うのかを調整する機能が必要です。

この調整に深く関わっているのが神経系です。足が地面に接している感覚、関節の位置や動き、筋肉の伸び縮み、身体の傾きなど、身体の各所からさまざまな情報が神経を介して中枢神経系へ送られています。そうした情報をもとに身体の状態が把握され、状況に応じた運動がつくられることで、私たちは一歩ごとに立ち止まって考えなくても歩き続けることができます。

たとえば、何もない平坦な道を歩いているつもりで足元に小さな段差があったとします。予想より早く足が地面に触れれば、身体はその変化に対応して姿勢を立て直そうとします。また、片脚へ体重を移したときに身体が傾けば、それに応じて複数の筋肉が働き、次の一歩へつなげます。このように歩行中の身体は、あらかじめ決められた一つの動きを繰り返しているのではなく、入ってくる情報に応じて絶えず動きを調整しています。

慢性的な腰痛がある場合にも、この「調整」という視点が大切です。腰に痛みがあれば、身体は痛みを避けながら動こうとして歩幅を変えたり、体幹の動きを小さくしたり、別の関節や筋肉を使ったりすることがあります。これは身体がその時点の状態に対応し、できるだけ日常生活を続けようとしている反応の一つです。

ところが、そのような状態が長く続けば、単純に「腰が痛い」という一つの情報だけでは身体全体の状態を捉えにくくなります。どの関節がどのように動いているのか、左右で身体の使い方に違いがあるのか、周囲の組織にはどのような変化がみられるのかなど、実際の身体機能を確認することが重要になります。

カイロプラクティックでは、身体を調整している神経機能を重要視します。前田カイロプラクティック藤沢院では、脳と身体との神経伝達を阻害している状態を「サブラクセーション(神経伝達の阻害)」と捉え、単に腰痛がある場所だけを確認してアジャストメントを行うわけではありません。

視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価など、それぞれ異なる情報を照らし合わせながら身体を評価し、サブラクセーションを見極めていきます。腰痛があり、歩くことがつらいからといって、「腰のこの場所をアジャストすればよい」と症状だけから判断するものではありません。

アジャストメントの目的も、歩行に必要な筋肉を直接強くしたり、腰痛そのものを直接取り除いたりすることではありません。サブラクセーションを取り除くことで神経伝達が適切に行われる環境を整え、その人の身体が状況に合わせて自ら調整できる状態を目指します。

人間の身体には、環境の変化に適応しながら自らの状態を保ち、回復へ向かおうとする「治るチカラ」が備わっています。歩くという日常的な動作一つをとっても、身体は毎回まったく同じ条件で動いているわけではありません。変化する状況を感じ取り、その都度身体を調整できるからこそ、私たちはさまざまな場所を歩くことができます。

だからこそ、慢性腰痛によって歩くことがつらくなった身体を考えるときには、「筋力があるか」「コルセットで支えているか」だけではなく、その人自身の身体が必要な情報を受け取り、状況に合わせて適切に調整できているのかという視点も大切です。

外側から身体を支えることと、身体自身が動きながら安定性をつくり出すことは同じではありません。慢性的な腰痛と歩行の問題を考えるうえでは、この「自ら調整する機能」まで含めて身体を見ることが重要になります。

■コルセットと杖が手放せなかった70代男性の身体に起きていたこと

今回ご紹介するのは、長年慢性的な腰痛を抱え、最終的にはコルセットを巻いていても歩くことが難しくなっていた70代の男性です。現役時代から腰痛を繰り返していましたが、仕事を引退した後は、これまで家族に寂しい思いをさせてきた分、妻への恩返しとして夫婦で世界中を旅行することを楽しみにしていました。

ところが、最初の目的地として訪れたフランスで、飛行機の座席から立ち上がろうとした瞬間に、それまで経験したことのないほど強い腰痛が現れました。せっかくの旅行にもかかわらず、滞在中の多くをホテルで過ごすことになり、帰国後も歩くたびに腰痛が現れる状態が続きました。

整形外科では画像検査を受け、腰部には年齢に伴う変化が確認されましたが、手術が必要な状態ではないと説明されました。痛み止めやコルセット、リハビリなどを続け、その後は整体や鍼灸なども試しましたが、歩行時のつらさは残っていました。「筋力が落ちているから歩いた方がいい」と言われ、コルセットを巻いて毎日歩くようにしていましたが、次第に歩ける距離そのものが短くなっていきました。

やがて自宅近くへ出かけるだけでも途中で休憩が必要となり、外出時には杖を使うようになっていました。妻と楽しみにしていた海外旅行どころか、日常生活の中で歩くこと自体に不安を感じるようになり、長年通っていた理髪店の店長から前田カイロプラクティック藤沢院を紹介されたことをきっかけに来院されました。

当院では、「腰が痛い」「歩けない」という症状だけから身体の状態を判断したわけではありません。視診、静的触診、動的触診、体表温度測定、レントゲン評価などを組み合わせ、身体の構造と機能の両面から状態を確認していきました。

検査では、骨盤周辺の関節の動きや腰部の筋緊張、周囲組織の状態、体表温度などに確認すべき所見がみられ、レントゲンでも腰部には長期間にわたる構造的な変化が確認されていました。しかし、画像上の変化だけを理由に「年齢だから仕方がない」と考えるのではなく、複数の検査結果を照らし合わせながらサブラクセーションを見極め、必要と判断した箇所へアジャストメントを行っていきました。

ケアを続けていく中で、立ち上がるときの腰のつらさや歩き始めることへの不安に変化がみられ、少しずつ日常生活の中で歩ける範囲が広がっていきました。その後は杖に頼らず歩ける場面も増え、庭の手入れなど、それまで控えていた活動も再び行えるようになりました。

さらに、この男性にとって大きかったのは、「腰痛を気にせず出かけられる」という生活そのものの変化でした。以前は腰痛によって諦めざるを得なかった妻との旅行にも再び出かけられるようになり、現在はもう一度夫婦でフランスへ行くことを目標にされています。

この症例で、長年かけて生じた椎間板や椎骨の構造的な変化そのものが元の状態に戻ったわけではありません。また、カイロプラクターが腰痛や歩行困難を直接治したわけでもありません。

重要なのは、コルセットで腰を外側から支えることだけではなく、その人自身の身体が歩行中の変化を受け取り、必要に応じて姿勢や動きを調整できる環境にあるかどうかという視点です。サブラクセーションを見極め、神経機能を妨げている要因へアプローチすることで、その人自身が持つ「治るチカラ」を発揮しやすい環境を整えていきます。

この男性の身体には、実際にどのような検査所見が確認され、どのような考え方でケアを進めていったのか。そして、コルセットと杖が必要だった状態から、再び旅行を目標にできるようになるまで、身体はどのような経過をたどったのか。その詳細については、実際の症例報告でご紹介しています。

▶慢性的な腰痛でコルセットを巻いても歩けなくなった詳しい症例報告はこちら

▶その他の腰痛・坐骨神経痛などでお悩みだった方の症例報告はこちら

▶腰痛に対する前田カイロプラクティック藤沢院のアプローチはこちら

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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