【男性にも必要な“女性ホルモン”】エストロゲンが守る心と体の健康、その秘密と自律神経のつながりとは?

「女性ホルモン=女性のためのもの」と思っていませんか?
実は、男性の体内にも女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」が存在しており、その働きは非常に重要です。エストロゲンは女性だけのホルモンではなく、男性の健康・感情・体力・性機能にまで多面的に関わっています。
年齢を重ねるごとに体調やメンタルに変化を感じるのは、男性ホルモン(テストステロン)だけでなく、女性ホルモン(エストロゲン)の低下も関係していることが少なくありません。
今回のコラムでは、男性の体にとっても大切な女性ホルモンの働きについてお伝えしていきます。
男性の体内でのエストロゲンの生成と働き
男性の体内でエストロゲンは主に3つの経路でつくられます。まず、副腎という臓器から少量が直接分泌されます。次に、体内の脂肪組織で酵素(アロマターゼ)の働きによって生合成されます。そして最も特徴的なのは、男性ホルモンであるテストステロンがアロマターゼによってエストロゲンへと変換されるという経路です。
つまり、男性のエストロゲンはテストステロンを材料として生み出されており、テストステロンとエストロゲンは拮抗するものではなく、互いにバランスを保ち合いながら、男性の心身の健康を支えているのです。
エストロゲンが支える“男性の健康”の側面
まず、エストロゲンは骨の健康を守るうえで非常に重要な役割を果たしています。骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨密度を維持する働きがあるため、加齢とともにエストロゲンが減少すると、男性でも骨粗しょう症のリスクが高まることがわかっています。
また、血管や心臓の健康にもエストロゲンは深く関わっています。血管内皮を保護したり、血管を拡張させたりする作用があるため、動脈硬化や高血圧の進行を抑える役割があります。これにより、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患のリスクを軽減する効果が期待されています。
さらに、エストロゲンは脳内でも重要な働きを担っています。セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質のバランスを整えることで、気分の安定に貢献しています。また、脳の神経細胞の可塑性を促す働きもあるため、学習能力や記憶力を維持するうえでも欠かせない存在です。
加えて、エストロゲンは脂質代謝や血糖調整にも関与しています。適度なエストロゲン量があることで内臓脂肪がたまりにくく、インスリン感受性も保たれるため、いわゆるメタボリック症候群の予防にもつながるとされています。逆に、エストロゲンが不足すると内臓脂肪がつきやすくなり、中年以降の「太りやすさ」の原因となることもあります。
最後に、性機能やパートナーとの関係にもエストロゲンは作用しています。エストロゲン自体が性欲を高めるわけではありませんが、感情の安定や脳の性中枢に働きかけることで、より良好な精神状態と関係性を築くサポートをしています。テストステロンが“攻め”のホルモンなら、エストロゲンは“調和”のホルモンともいえるでしょう。
自律神経がホルモンに与える影響
エストロゲンをはじめとしたホルモンの分泌は、脳の視床下部・下垂体・副腎軸(HPA軸)によってコントロールされています。このホルモンの司令塔は、自律神経の中枢と深く関係しており、日常のストレスや生活習慣の乱れ、不規則な睡眠などによって、簡単にその働きが乱れてしまいます。
例えば、慢性的なストレス状態では交感神経が過剰に優位となり、ホルモン中枢の働きが鈍ります。これにより、テストステロンからエストロゲンへの変換量が減少したり、副腎の機能が低下してホルモンの合成力自体が落ちたりすることもあります。その結果、心身ともに不安定になりやすく、イライラや集中力低下、疲労感の蓄積などが起こりやすくなります。
カイロプラクティック・ケアとホルモンバランスの関係性
カイロプラクティックでは、脊柱や骨盤の神経の流れを整えることで、神経系とホルモン系のつながりを回復させることを目的としています。とくに背骨の調整を通じて、自律神経のバランスが整うと、ホルモンの司令塔である視床下部や下垂体の働きが安定しやすくなります。
交感神経が過剰に働き続けているような現代の男性にとって、副交感神経のスイッチをしっかり入れることは、ホルモンバランスの回復だけでなく、睡眠の質の向上や心の安定にもつながります。カイロプラクティックは、薬に頼らずに体を内側から整える“土台づくり”として、とても有効な選択肢のひとつです。
男性にとって、テストステロンは「攻める力」であり、エストロゲンは「支える力」と言えます。この2つのホルモンがバランス良く働くことで、体力、精神力、性機能、人間関係すべてのパフォーマンスが最大限に発揮されます。
エストロゲンは決して女性だけのホルモンではなく、男性の「しなやかさ」や「成熟」を支える見えない味方です。もし最近、疲れが取れない、やる気が出ない、気分が落ち込みやすいといった不調を感じる場合は、ホルモンと自律神経のバランスに目を向けてみることが、自分を整える第一歩になるかもしれません。
年齢を重ねても、いきいきとした毎日に。
エストロゲンと自律神経に着目したケアは、これからの男性の健康を支える“新しい常識”になりつつあります。
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執筆者中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師資格取得後、2007年から2018年まで柔道整復師として接骨院勤務。その後、勤務地を横浜に変え整骨院で勤務。
シオカワスクールの哲学教室で塩川雅士D.C.からカイロプラクティックの自然哲学を学んだことや、塩川カイロプラクティック治療室で実際の臨床現場を見学させていただいたことで、哲学・科学・芸術の重要性を知る。
現在は、前田カイロプラクティック藤沢院での診療を通じて地域社会の健康に寄与しながら、シオカワスクールでは女性初のインストラクターとして後任の育成にも力を入れている。
自分自身が女性特有の悩みで悩んでいた経験を活かし、誰にも相談できずにどこへ行っても改善されずに悩んでいる女性に寄り添えるようなカイロプラクターを目指している。