腰痛と呼吸の浅さ──横隔膜の働きが腰を守る理由

腰痛と呼吸──この二つを結びつけて考える人は多くありません。しかし、呼吸は単なる酸素の出し入れではなく、体幹の安定や自律神経の働き、そして腰の健康に深く関わっています。その要の存在が横隔膜です。
この筋肉の働きが低下すると、腰の支えが失われ、慢性的な腰痛の温床となります。逆に、横隔膜が本来の動きを取り戻すと、腰は内側から守られ、全身の活力まで蘇ります。
このコラムでは、その驚くべき仕組みについて解説していきます。
■ 横隔膜──呼吸と腰の守護者
横隔膜は胸とお腹の境目にあるドーム状の大きな筋肉です。息を吸うときは縮んで下がり、肺に空気を招き入れ、吐くときはゆるんで上がり、空気を押し出します。しかし、横隔膜の役割はこれだけではありません。
吸気時に横隔膜が下がると、お腹の中の圧力──腹腔内圧が高まります。これは風船が中から均等に壁を押すように、腰椎を全方向から支える「内側のコルセット」となります。この圧が十分に保たれていると、重い物を持ち上げるときも、体をひねるときも、腰は内側から守られます。つまり横隔膜は、呼吸のリズムに合わせて常に腰を支え続けている、目立たない守護者なのです。
あなたの横隔膜は、1日におよそ2万回も動き、人生を通じて何億回という回数で腰を内側から支え続けています。この「無意識の働き」が止まらない限り、あなたの体は常に自分を守り続けているのです。
■ なぜ呼吸は浅くなるのか
現代人の多くは、横隔膜を十分に使わない浅い呼吸をしています。その背景にはいくつかの要因があります。長時間のデスクワークやスマートフォン操作で背中が丸まり、胸郭が縮んでしまうと、横隔膜は動く余地を失います。精神的ストレスが続くと交感神経が優位になり、首や肩の筋肉で息を吸う「胸式呼吸」が癖になります。運動不足も拍車をかけ、横隔膜や肋間筋といった呼吸筋全体が使われなくなって弱っていきます。
こうして姿勢・ストレス・活動量の低下が重なり、横隔膜は働く機会を失い、腹腔内圧も低下します。その結果、腰椎は内側からの支えを失い、わずかな負荷でも痛みや違和感が生じやすくなるのです。
■ 呼吸と神経の巧妙な連携
横隔膜は頸椎から出る横隔神経によって動かされますが、この神経の働きは胸椎や腰椎の安定性ともリンクしています。呼吸が浅くなると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が高ぶった状態が長引きます。交感神経が優位になると、腰回りの筋肉は常に軽く緊張し、血流が滞って疲労物質が蓄積します。
さらに、浅い呼吸は酸素の供給を減らし、脳の「痛みを抑える回路」を鈍らせます。これにより、本来なら痛みを感じない程度の刺激でも脳が危険信号として受け取り、腰痛が慢性化しやすくなります。つまり、呼吸の浅さは「構造の不安定さ」と「神経の過敏さ」という二重の問題を引き起こしているのです。
■ 横隔膜が全身に与える恩恵
横隔膜の動きが回復すると、腹腔内圧が適切に保たれ、腰は安定します。それだけでなく、この動きは内臓のマッサージにもなります。吸うたびに横隔膜が下がって腸や肝臓を優しく押し、吐くときに解放することで、血流やリンパの流れが促されます。これは消化や免疫機能にも良い影響を与えます。
また、深い呼吸は副交感神経を優位にし、体全体をリラックスモードに導きます。心拍数や血圧が落ち着き、睡眠の質が向上し、回復力そのものが底上げされます。今この瞬間も、あなたの横隔膜は静かに上下し、呼吸と共に全身を巡る生命のリズムを奏でているのです。
■ 日常でできる横隔膜の再起動
横隔膜を日常で使い直すためには、まず胸や肩で息を吸う癖を減らし、お腹がふんわり膨らむ腹式呼吸を意識します。鼻からゆっくり息を吸い、お腹の奥まで空気が届く感覚を味わいながら横隔膜を下げます。吐くときはお腹をゆっくり引き込みながら横隔膜を上げます。これを朝起きたときや夜寝る前、仕事の合間などに数回繰り返すだけでも、横隔膜は少しずつ動きを取り戻します。
姿勢も重要です。骨盤を立て、胸郭を軽く開くことで横隔膜の可動域は広がります。長時間のデスクワーク中には背伸びや肋骨を回す運動を挟み、胸郭の硬さを防ぎましょう。歩くときも、背筋を軽く伸ばし、腕を大きく振って胸を開くようにすると、自然と呼吸が深くなります。
このような小さな積み重ねが、横隔膜の働きを取り戻し、腰の安定と全身の活力を蘇らせます。呼吸を変えることは、ただ息を整えるだけではなく、自分の体を内側から再構築する行為なのです。
■ カイロプラクティックでのアプローチ
カイロプラクティックでは、呼吸の浅さが腰痛に与える影響を評価するため、胸郭や肋骨の可動域、腰椎の安定性、自律神経の状態を総合的に検査します。体表温度の変化から自律神経の左右差を確認し、胸椎や肋骨の動きを回復させる調整を行います。これにより横隔膜が自由に動ける環境を整え、腹腔内圧が自然に高まる状態をつくります。
カイロプラクティックケアの直後に「呼吸が深く入るようになった」と同時に腰の軽さを実感される方は多く、これは呼吸と腰の安定性が表裏一体であることを示しています。
■ ご相談・ご予約はいつでもどうぞ
「呼吸が浅く、腰までつらい…」そんなお悩みを抱えている方へ。
神経と呼吸の働きを整えるケアを通じて、軽やかに動ける体を取り戻すお手伝いをいたします。
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。
笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。