マッサージでは治らない腰痛──“気持ちよさ”が回復を遅らせる理由

「マッサージを受けるとその場は軽くなるのに、数日でまた腰が重くなる。」こうした経験をお持ちの方は少なくありません。マッサージの心地よさは否定しませんし、疲れた体にとって“気持ちいい”刺激は救いになります。ただし、“気持ちよさ=回復”ではありません。むしろ、その一時的な快感に頼り続けるほど、腰痛の根本改善が遠のくケースが少なくありません。今回は、その仕組みを神経の働きからわかりやすくお話しします。
■ なぜマッサージ後は一時的に楽になるのか
施術直後に楽に感じるのは、筋肉と神経の“一時的な静まり”が得られるからです。皮膚や筋肉に心地よい圧が加わると、血流が一時的に高まり、老廃物が流れやすくなります。同時に、脳の痛み処理に関わる回路では“痛みの信号を抑えるブレーキ”がかかり、痛みの感じ方が弱まります。いわゆる「ゲートが閉まる」状態になって、脳が危険信号を受け取りにくくなるのです。
問題は、その効果が環境依存であることです。刺激があるあいだは落ち着いても、日常の負荷に戻った瞬間、神経は再び過敏に傾きます。こうして、楽になる→戻る→また強い刺激を求める、という往復運動が起こります。
■ “気持ちよさ”がクセになる刺激依存のメカニズム
人の神経は学習する臓器です。強い刺激で一時的に痛みが弱まる経験を繰り返すと、脳は「つらくなったら強い刺激でリセットすればいい」と学習します。すると、本来は自律的に安定へ向かう回復プロセス(呼吸のリズム、睡眠の質、動きの協調など)が働く前に、「外からの強い刺激」を条件として求める回路が優位になります。これが刺激依存の正体です。
さらに、強圧や長時間の刺激は、筋・筋膜の微細な損傷や局所の炎症反応を招くことがあります。直後はスッと軽いのに、翌日に“揉み返し”のような重だるさが出るのはそのためです。結果として、神経が安全だと判断できず、緊張が再び高まり、腰は守りの姿勢に戻ってしまいます。
■ 腰痛改善のゴールは「神経機能の安定」
慢性的な腰痛では、「筋肉が硬いから痛い」という単純な図式では説明しきれません。鍵を握るのは、脳と体をつなぐ神経の働きです。神経が安定していれば、必要な筋は必要なだけ働き、関節は滑らかに動き、余計な力みは自然と抜けます。逆に、神経が過敏で不安定だと、筋は常に“待機緊張”のような状態になり、小さな負荷でも疲労や痛みを感じやすくなります。
多くの方がつまずくのは、痛みを「取り去ること」そのものを目標にしてしまう点です。痛みは結果であり、過敏な神経が“危険だ”と判断したサインにすぎません。だからこそ、目指すべきは「サインを出さなくてよい状態」、すなわち神経機能の安定です。ここが整うと、マッサージに頼らずとも、体が自力でバランスを取り戻す時間が長くなっていきます。
■ では、どうやって神経を安定させるのか
神経は電気配線のように“通ればよい”という話ではありません。呼吸、睡眠、日中の覚醒のリズム、ストレスへの反応、動きのパターンといった全体の調律が重要です。カイロプラクティックでは、その調律が乱れている要所を検査で特定し、過敏な回路を落ち着かせ、働きにくい回路を呼び覚ますように介入します。
当院では、痛みの場所そのものを強く押したり揉んだりするのではなく、神経の反応を丁寧に見極めながら、最小限の刺激で最大限の変化を引き出すことを大切にしています。強い刺激で無理に静めるのではなく、神経が「これなら安全だ」と学習し直せるような、繊細で精密なアプローチを重ねます。体表温度の変化、視診から得られる動きの癖、静的・動的触診での反応などを総合して、回復の邪魔をしている“ノイズ”を減らしていくのです。
■ 日常でできる“神経にやさしい”リセット
施術だけでなく、日常のリズムを整えることが神経の安定を後押しします。深い腹式呼吸を意識して一日の中で小さな“間”をつくると、過剰に高ぶった緊張がスッと下がります。寝る前のスマートフォンを少し早めに手放し、同じ時刻に寝起きするだけでも、睡眠の質が上がり、翌日の痛みの感じ方が変わります。長時間同じ姿勢が続く仕事であれば、30〜60分に一度、肩や股関節を大きく回すような“動きの切り替え”を挟むと、神経は安全な入力としてそれを記憶し、過敏のループから抜けやすくなります。
ここで大切なのは、“正しい姿勢を固める”ことではありません。意識で固めた姿勢は、かえって呼吸と動きの自由度を奪い、神経の柔軟な調整を妨げます。固めるのではなく、呼吸が通り、重力に対して軽やかに動ける範囲を取り戻していく考え方が、腰痛の長期的な改善には役立ちます。
■ 「揉んでも戻る」からの卒業
マッサージの気持ちよさは、一時の救済として価値があります。しかし、それだけに頼ると、神経は「強い外部刺激がなければ落ち着けない」回路を強化してしまいます。腰痛を本気で手放したいなら、目指すべきは“気持ちよさの瞬間”ではなく、“神経が安定している時間を少しずつ長くすること”です。そのための道筋は、刺激を積み上げることではなく、体が本来持つ調整機能を邪魔しないこと、そして必要なときに必要最小限の的確な介入を行うことにあります。
■ ご相談・ご予約はいつでもどうぞ
「何度も揉まないと落ち着かない…」そんな腰痛から抜け出したい方へ。
神経の働きを整えるケアを通じて、「自分の人生を取り戻す」サポートをさせていただきます。
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティック治療室に内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティック治療室で学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。
笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。