【腰痛と疲労感】筋肉ではなく脳が感じる疲れの正体

腰痛があると「腰が痛いから疲れる」と考える方は多いですが、その逆に「疲れているから腰痛を感じやすくなっている」という場合も少なくありません。腰の痛みと全身の疲労感は別々の不調ではなく、脳と神経の働きの中で密接に結びついています。
疲労感は単なる筋肉の問題ではなく、脳が作り出す“防御の感覚”です。そして腰痛は、その防御反応を強化するスイッチとなります。
このコラムでは、腰痛と疲労感が互いに影響し合う仕組みと、カイロプラクティックでできることについて解説します。
■ 脳が作り出す疲労感と腰痛
昔は疲労の原因を「筋肉の乳酸蓄積」や「エネルギー不足」と説明していました。しかし現在では、疲労は筋肉自体ではなく「脳が作り出す主観的な感覚」であり、安全装置として働くと考えられています。
脳は全身から送られる情報を統合し、「これ以上動くと危険」と判断したときに、だるさ・重さ・動きたくないという感覚を生み出します。この働きは視床下部、大脳皮質、脳幹といった領域が連携し、自律神経やホルモンを介して体全体を制御します。
腰痛があると、この安全装置はさらに敏感になります。腰の筋肉や靭帯から「負担がかかっている」という信号が頻繁に伝わると、脳は腰を守ろうとして行動制限モードを強化します。結果として、少し動いただけでも疲れを強く感じやすくなるのです。
■ 痛みと疲労が結びつく神経メカニズム
痛みと疲労感は別々の感覚に思えますが、実際には神経経路を一部共有しています。腰からの痛み信号と全身の疲労感を伝える信号はいずれも脊髄から視床を経由し、大脳皮質に到達します。そのため腰痛が慢性化すると、この経路が過剰に刺激され、痛みと疲労が“セット”で現れる傾向が強まります。
さらに慢性腰痛では脳の感覚野と運動野のつながりが変化します。自由に動ける状況でも「動くと危険かもしれない」という予測が先立ち、脳が筋肉を固める指令を出してしまいます。この防御的な筋緊張は常にエネルギーを消耗し、動かなくても疲れる原因になります。
交感神経が長く高ぶった状態も疲労を助長します。血流が低下し代謝が滞るため、疲労物質が体内に蓄積し、脳はさらに「休め」という強い信号を送り続けるのです。
■ 自律神経とホルモンの悪循環
腰痛と疲労感の背景には、自律神経とホルモンの乱れがあります。痛みやストレスが続くと副腎から分泌されるコルチゾールが慢性的に高まり、修復や回復が遅れます。その状態ではセロトニンやメラトニンといった神経伝達物質が不足し、睡眠の質が低下します。
睡眠が浅くなると脳の老廃物を排出する「グリンパ系」の働きが落ち、神経の回復が妨げられます。翌日以降も疲労感が残り、腰の痛みはさらに増幅されます。
加えて生活習慣も悪循環を支えます。長時間のデスクワークや浅い呼吸、夜遅くまでのスマートフォン使用、加工食品中心の食生活は、いずれも神経の疲労を慢性化させる要因です。
■ 神経資源の回復と習慣の工夫
脳と神経の疲労を回復させるには「神経資源」を効率よく補充することが欠かせません。神経資源とは、脳が処理や行動に使えるエネルギーの総量を意味します。腰痛や慢性疲労がある人は、この資源の多くを防御反応に消耗してしまい、活動に回せる余力が乏しくなっています。
深くゆっくりとした腹式呼吸は、交感神経の過活動を抑え、副交感神経を優位にします。脳が「安全」と認識することで、不要な筋緊張や疲労感が和らぎます。
ウォーキングや軽いジョギングなど一定リズムの運動は、脳への血流を増やし神経細胞の代謝を改善します。朝の自然光を浴びることは体内時計を整え、夜間のメラトニン分泌を促し、深い睡眠へとつながります。
さらに、背骨や関節の可動性を保つことも脳への安全情報となります。関節の動きが硬く制限されると、その部分に負担が集中し脳は「危険」と判断します。逆に動きのバランスが整うと、脳は「安心して活動できる」と認識しやすくなるのです。
■ カイロプラクティックができること
カイロプラクティックの本質は神経系の調整にあります。腰痛と疲労感が慢性化している場合、背骨や骨盤の可動性の低下、姿勢や呼吸パターンの乱れが神経伝達にノイズを生み出し、脳と体の情報交換を不安定にします。
当院で実践しているガンステッド・システムでは、体表温度検査・視診・静的触診・動的触診・レントゲン評価という5つの検査法を用い、神経伝達に乱れが生じている部位を正確に特定します。その結果に基づき、必要最小限の調整を行うことで、神経が本来の働きを取り戻します。
背骨の働きが改善されると、脳幹や自律神経中枢への血流が促進され、交感神経優位から副交感神経優位へと切り替わります。呼吸が深まり、腰の筋緊張が和らぐことで、疲労感そのものが軽くなるのです。
施術後に「体が軽い」「息が楽になった」と感じる方が多いのは、脳が再び安全信号を受け取り、防御モードから回復モードへ移行した結果です。
カイロプラクティックケアの価値は、腰痛を和らげるだけでなく、疲労感を引き起こす神経の過敏さや自律神経の乱れを整えることで、生活全体の質を底上げする点にあります。
■ ご相談・ご予約はいつでもどうぞ
「腰の痛みだけでなく、毎日だるくて動くのがつらい」そんな方は、神経と呼吸の働きを整えるカイロプラクティックケアを受けてみませんか。腰と全身の軽さを取り戻すお手伝いをいたします。
📍前田カイロプラクティック藤沢院
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執筆者前田 一真
神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。
笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。