2026.08.26

抱っこや中腰で腰痛が悪化するのはなぜ?慢性腰痛を繰り返す原因とは

カテゴリ: 健康通信
抱っこや中腰で腰痛が悪化するのはなぜ?慢性腰痛を繰り返す原因とは

「子どもを抱き上げるたびに腰が痛い。」

「おむつ替えや床遊びで中腰になると、腰がつらくなる。」

「仕事だから避けることもできず、このまま腰痛が悪化しないか不安になる。」

このように、抱っこや中腰、前かがみの姿勢を繰り返すことで、慢性的な腰痛に悩まされている方も少なくありません。

特に子育て中の方や、保育・介護など身体をかがめる動作が多い仕事では、腰に負担がかかる場面が一日の中で何度もあります。最初は少し腰が重い程度だったものが、次第に痛みを感じる時間が長くなり、朝起きたときや仕事が終わったあとまで腰痛が残るようになることもあります。

腰痛が続けば、「抱っこのしすぎだから」「中腰になる回数が多いから」「腰の筋肉を使いすぎているから」と考えるのも自然なことです。

実際に、長時間の中腰や前かがみ、子どもを抱き上げる動作などでは腰周辺の筋肉や関節に負担がかかります。そのため、休息やストレッチ、運動、マッサージなどによって腰への負担を軽減することも大切です。

しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。

同じように毎日抱っこをしたり、中腰で仕事をしたりしていても、腰痛になる人もいれば、ほとんど腰痛を感じない人もいます。

また、休日に身体を休めたり、マッサージやストレッチで一時的に腰が楽になったりしても、仕事に戻ると再び腰痛を繰り返してしまう方もいます。

では、抱っこや中腰という「負担がかかる動作」だけが、慢性腰痛を繰り返す理由なのでしょうか。

私たちの身体は、腰だけで姿勢を支えたり、子どもを抱き上げたりしているわけではありません。腰椎の土台となる骨盤や仙骨をはじめ、関節や筋肉、そしてそれらの働きをコントロールする脳や神経が互いに連携することで、一つの動作が成り立っています。

そのため、慢性腰痛について考えるときには、「どの動作で腰が痛むのか」だけではなく、繰り返される負担に対して身体がどのように適応しているのかという視点も大切です。

今回ご紹介する症例では、保育士として働く中で、子どもの抱っこや中腰、前かがみの姿勢を繰り返すたびに腰痛が悪化し、仕事にも支障を感じる状態になっていました。

当院で身体を詳しく評価すると、左仙腸関節の可動域制限をはじめ、骨盤部から下部腰椎にかけての体表温度の左右差、浮腫、腰部の筋肉の過緊張など、複数の変化が確認されました。

腰痛があるからといって、痛みが出ている腰だけを見るのではなく、「なぜ同じ動作を繰り返すことで腰へ負担が集中しているのか」という視点から、その人の身体全体を評価することが重要です。

このコラムでは、抱っこや中腰で腰痛が悪化しやすい理由、慢性腰痛を繰り返す身体を考えるうえで大切な視点、そして実際に抱っこや中腰によって腰痛が悪化していた症例について解説していきます。

■抱っこや中腰を繰り返すと、なぜ腰痛が起こりやすくなるのでしょうか?

子どもを抱き上げる、中腰でおむつを替える、床に座った状態から立ち上がる。このような動作を一日に何度も繰り返していると、次第に腰が重くなったり、痛みを感じたりすることがあります。特に保育や子育て、介護などでは、自分の身体だけを動かすのではなく、人を支えたり抱き上げたりする動作も多くなります。

では、なぜ抱っこや中腰を繰り返すことで腰痛が起こりやすくなるのでしょうか。私たちが立っているとき、上半身の重さは腰椎や骨盤を通して下半身へ伝えられています。そこから身体を前へかがめると、上半身の重心が前方へ移動するため、腰周辺の筋肉や関節には姿勢を支えるための負担がかかります。

さらに、中腰の状態から子どもを抱き上げる場合には、自分の上半身だけではなく、子どもの体重も加わります。保育の現場では、一度抱き上げて終わりではありません。子どもの身長に合わせて身体をかがめる、抱き上げる、床に座る、立ち上がるといった動作を、一日の中で何度も繰り返します。

こうした動作が続けば、腰周辺の筋肉や関節に負担が蓄積し、慢性的な腰痛につながることがあります。また、抱っこでは左右どちらか一方の腕や腰を使いやすくなることもあり、いつも同じ側で子どもを抱えていれば、身体の使われ方にも左右差が生じやすくなります。

一般的には、このような腰痛に対して、できるだけ腰へ負担の少ない姿勢を意識する、膝を使って抱き上げる、適度に身体を動かす、ストレッチや筋力トレーニングを行うといった対策が考えられます。痛みが強い場合には医療機関を受診し、必要に応じて薬物療法やリハビリテーションなどが行われることもあります。

もちろん、日常生活や仕事の中で腰へかかる負担を減らすことは大切です。しかし、保育士のように仕事そのものに抱っこや中腰が含まれている場合、「中腰にならない」「抱っこをしない」というわけにはいきません。

そして、もう一つ考えておきたいことがあります。同じような仕事をして、同じように一日に何度も子どもを抱き上げていても、全員が同じように慢性腰痛になるわけではありません。

休めば腰痛が落ち着く人もいれば、休日になっても腰の重さが残る人もいます。ストレッチやマッサージで楽になる人もいれば、一時的には楽になっても、仕事を始めると再び腰痛を繰り返す人もいます。

つまり、抱っこや中腰は腰へ負担をかける「きっかけ」にはなっても、それだけですべての慢性腰痛を説明できるわけではありません。では、同じような負担がかかっていても、なぜ腰痛を繰り返す人とそうでない人がいるのでしょうか。

次の章では、「腰にどれだけ負担がかかったのか」だけではなく、その負担に身体がどのように適応しているのかという視点から、慢性腰痛について考えていきます。

■同じように腰へ負担がかかっても、腰痛になる人とならない人がいるのはなぜでしょうか?

抱っこや中腰を繰り返せば、腰へ負担がかかります。しかし、それだけが慢性腰痛の原因なのであれば、同じような仕事をしている人は全員が腰痛になっても不思議ではありません。

実際には、毎日のように子どもを抱き上げても腰痛を感じない人もいれば、少し中腰になっただけで腰がつらくなる人もいます。また、同じ人であっても、以前は問題なくできていた動作が、ある時期から腰痛につながるようになることもあります。

この違いを考えるうえで大切なのが、身体に加わる「負担」だけではなく、その負担に対して身体がどのように適応しているのかという視点です。

私たちが子どもを抱き上げるときには、腰の筋肉だけが働いているわけではありません。足や股関節、骨盤、仙骨、腰椎、背中などが連動し、それぞれの関節や筋肉が適切なタイミングで働くことで、一つの動作が成り立っています。

例えば、身体の土台となる骨盤や仙骨の動きが低下していれば、本来そこで行われるはずだった動きを別の場所で補わなければならなくなることがあります。その状態で抱っこや中腰を何度も繰り返せば、特定の腰椎や筋肉へ負担が集中することも考えられます。

そして、こうした身体の動きをコントロールしているのが脳と神経です。身体の各部位からは、関節がどの位置にあるのか、筋肉がどの程度緊張しているのか、身体がどの方向へ動いているのかといった情報が、神経を通して絶えず脳へ届けられています。

脳はその情報をもとに現在の身体の状態を把握し、その状況に適した指令を再び神経を通して全身へ送り返しています。私たちが子どもの体重や動きに合わせて無意識に姿勢を変えられるのも、この脳と身体との情報交換が絶えず行われているからです。

カイロプラクティックでは、この脳と身体との情報交換を妨げる状態を「サブラクセーション」と呼んでいます。サブラクセーションによって神経伝達が阻害されれば、身体から脳へ届けられる情報にも影響が及び、身体に加わる負担へ適切に対応することが難しくなると考えます。

だからこそ当院では、「腰が痛いから腰の筋肉を緩める」「中腰が多いから姿勢だけを直す」という考え方ではなく、レントゲン評価、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定などを組み合わせながら、身体全体を詳しく評価することを大切にしています。

重要なのは、抱っこや中腰そのものを悪者にすることではありません。仕事や子育てを続けていれば、腰へ負担がかかる動作を完全になくすことはできないからです。

「何をしたから腰が痛くなったのか」だけではなく、「なぜその負担を受けたときに、特定の場所へ負担が集中してしまうのか」。そこまで身体を見ていくことが、繰り返す慢性腰痛を考えるうえで大切な視点になります。

では実際に、毎日の抱っこや中腰によって慢性腰痛が悪化していた保育士の方には、どのような身体の変化が確認されたのでしょうか。

次の章では、実際に当院へ来院された方の症例をご紹介します。

■抱っこや中腰で慢性腰痛が悪化していた保育士の実際の症例

今回ご紹介するのは、保育士として働く中で慢性的な腰痛に悩まされていた30代の女性です。

仕事では子どもを抱き上げたり、中腰でおむつを替えたり、床に座った状態から立ち上がったりする動作を一日の中で何度も繰り返していました。以前から腰に重さを感じることはありましたが、次第に仕事中の腰痛が強くなり、朝起きたときにも腰の違和感が残るようになっていきました。

特につらかったのが、子どもを抱き上げる動作や中腰から身体を起こす瞬間でした。仕事を休めば多少は楽になるものの、再び働き始めると腰痛を繰り返す状態が続いていました。

整形外科を受診したところ、筋肉の使いすぎによる慢性腰痛と説明され、湿布や痛み止めを使用していました。また、ストレッチやマッサージなども試していましたが、一時的に楽になっても仕事を続けると再び腰がつらくなっていました。

そこで当院では、「抱っこや中腰が多いから腰の筋肉が疲れている」とだけ考えるのではなく、レントゲン評価、視診、静的触診、動的触診、体表温度測定などを組み合わせ、身体全体の状態を詳しく評価しました。

検査では、左仙腸関節に明らかな可動域制限が確認され、骨盤部から下部腰椎にかけての体表温度にも左右差がみられました。また、骨盤周辺には浮腫が確認され、腰部の筋肉にも強い過緊張がみられました。

この症例で重要だったのは、腰痛が出ている場所だけではなく、腰椎の土台となる骨盤や仙骨まで含めて評価したことです。

私たちが抱っこや中腰をするときには、腰だけがその負担を受け止めているわけではありません。足や股関節、骨盤、仙骨、腰椎などが連動し、身体全体で負担へ適応しています。そのため、一部の関節の働きが低下していれば、別の場所がその動きを補い、特定の部位へ負担が集中することも考えられます。

複数の検査結果を照らし合わせながら身体全体を評価し、神経の働きを妨げているサブラクセーションを見極め、必要な箇所へアジャストメントを行っていきました。

ケアを続ける中で、まず朝起きたときに感じていた腰の重さに変化がみられるようになりました。その後は、仕事中に中腰になったときや子どもを抱き上げたときの腰痛も徐々に気にならなくなり、以前のように仕事が終わるまで腰をかばい続けることも減っていきました。

さらにケアを継続すると、抱っこや中腰といった仕事上避けることのできない動作を繰り返しても腰痛を感じることがほとんどなくなり、仕事に集中できる状態へ変化していきました。

この症例からも、慢性腰痛について考えるときには、「抱っこのしすぎ」「中腰のしすぎ」と負担そのものだけを見るのではなく、なぜその負担が特定の場所へ集中しているのかという視点が大切です。

当院が目的としているのは、腰痛という症状を直接取り除くことではありません。神経の働きを妨げているサブラクセーションを丁寧に評価し、その人自身が生まれながらに持っている「治るチカラ」が十分に発揮できるよう、神経の働きを整えることを大切にしています。

仕事や子育てでは、抱っこや中腰を完全に避けることはできません。だからこそ、「腰に負担をかけない生活」を目指すだけではなく、その負担に身体が適応できる状態を整えていくことも、慢性腰痛を考えるうえで重要な視点になります。

▶抱っこや中腰で悪化した保育士の慢性腰痛の詳しい症例報告はこちら

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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が銀座に開院した塩川カイロプラクティックに内弟子として入り、塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事。副院長まで務める。
また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務め、後任の育成にも力を入れている。
2023年5月、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院として、地元である藤沢の地で「前田カイロプラクティック藤沢院」を開院。

シオカワグループの一員として、インサイドアウトの健康文化を日本に根付かせるため、一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくことを使命とし、感謝・感動・希望に溢れる社会の実現を目指している。

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