薬では良くならなかった高校生のうつ病と不登校

薬では良くならなかった高校生のうつ病と不登校

眠れない毎日から抜け出し、再び学校に通えるようになりました!

10代女性
来院に至った経緯
中学生の頃までは活発で、友人関係や部活動も順調に過ごしていた。特に中学時代は吹奏楽部でクラリネットを担当し、練習やコンクールを通して充実した日々を送っていた。人前で演奏することも楽しみにしており、家族も「明るく前向きな子」と感じていた。

しかし高校に進学し環境が一変すると、次第に体調面に影響が現れてきた。新しいクラスに馴染むのに時間がかかり、勉強や部活動のレベルも上がったことで、次第にストレスを抱えるようになった。

高校1年の夏休み明け頃から「朝になると体が重くて起きられない」「頭痛や腹痛で学校に行けない」と訴えることが増え、遅刻や欠席が目立つようになった。

母親は心配して内科を受診させ、血液検査や心電図などを受けさせたが「特に異常はありません。ストレスや自律神経の乱れでしょう」と言われるだけであった。原因がはっきりしないまま症状は悪化し、「食欲がない」「夜眠れない」といった不調に加え、気分の落ち込みも強まり、友人と会うことを避けるようになった。

家では「どうせ学校に行っても意味がない」「自分なんか必要ない」と口にするようになり、母親に心配をかけまいと無理に笑って過ごしていた娘の笑顔も消えていった。家庭内の会話は減り、母親は「このままでは娘の将来が閉ざされてしまうのでは」と強い不安に押し潰されそうになっていた。

内科では改善が見られず、心療内科を紹介され受診したところ「うつ病」と診断された。抗うつ薬が処方されたが、強い眠気や倦怠感といった副作用に悩まされ、本人は「余計に体が動かなくなる」と服薬を続けることに抵抗を示した。結局、高校1年の2学期からは登校できない日が増え、不登校の状態になってしまった。

母親は娘の姿に胸を痛めながらも「何とか別の方法はないか」と模索していた。インターネットで調べても情報が多すぎて迷うばかりだったが、そんなとき同じ年頃の子どもを持つ知人に相談した。すると「うちの子も体調不良で学校に行けない時期があったけれど、ここに通うようになって少しずつ元気を取り戻せた」と当院を紹介してくれた。

母親のイメージではカイロプラクティックはただ背骨尾をボキボキ鳴らすイメージしかなかったため、うつ病の娘には関係ないのではないかと思った。しかし、知人の子供が今は元気に学校に行っているということは知っていたので、そういった経緯で学校に行けるようになったのかと思い、疑い半分希望半分の半信半疑の状態で当院に来院された。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    左仙骨翼にスポンジ状の浮腫

  • 02

    第一頸椎左横突起にスポンジ状の浮腫

  • 03

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左仙骨翼と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階はそれほど慢性的なところは確認されなかったが、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、初めの頃は家から出るのも一苦労な状態だったので、無理のない範囲で週1回のケアから開始した。

2週目(2回目のアジャストメント)には、施術後に「体が少し軽くなった」との感覚を本人が口にした。まだ学校へ行くことは難しかったが、以前よりも朝の起き上がりがスムーズになり、母親からも「午前中に少しだけ家事を手伝えるようになった」との報告があった。

6週目(6回目のアジャストメント)には、夜の入眠がわずかに改善し、布団に入ってから眠りに落ちるまでの時間が短くなった。母親は「以前は一晩中眠れず泣いていたが、少し眠れる日が増えてきた」と話していた。

9週目(9回目のアジャストメント)には、朝の起床リズムが安定し、週に1〜2回は登校できるようになった。表情に明るさが見え始め、母親との会話が増えた。日中に音楽を聴いたり読書をする時間ができ、外出への抵抗感が弱まり、近所のコンビニまで母親と一緒に出かけられるようになった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

15週目(12回目のアジャストメント)には、平日のほとんどを学校に行けるまでに回復した。まだ体調の波があったため部活動はお休みをしていたが、本人が「友達に会うのが楽しみ」と話すようになり、母親からも「笑顔が戻ってきた」との声があった。

現在は、うつ病に伴う諸症状はほとんど落ち着き、放課後の部活動に参加できるまで回復したが、再発防止と身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
本症例でみられた不眠や気分の落ち込み、体のだるさといった症状は、自律神経のアンバランスが引き金となり、内分泌系の働きにも乱れを生じさせていたことが大きな要因であると考えられる。

思春期は心身ともに大きな変化が訪れる時期であり、学業や人間関係のストレスが重なることで交感神経が過剰に優位になりやすい。特に本症例では、内科検査で異常が見つからなかったにもかかわらず、強い倦怠感や睡眠障害が続いたことからも、機能的な問題が背景にあったと推察される。

セロトニンは感情や睡眠の安定に深く関わる神経伝達物質であるが、その大部分は腸から分泌されている。副交感神経が働くことで腸の活動は活発になるため、副交感神経の抑制はセロトニン産生の低下を招き、抑うつ症状や不眠を悪化させる一因となる。

また、ストレスによってHPA軸(視床下部―下垂体―副腎皮質系)が過剰に働き、コルチゾールの分泌が高まると、脳の神経機能にも負担を与え、感情の安定がさらに損なわれていく。

初診時に確認された仙骨部や上部頸椎の反応は、副交感神経支配領域の不安定さを示しており、長期間にわたって交感神経が優位な状態にあったことが推察された。この神経バランスの崩れこそが、うつ病の発症や症状の慢性化に深く関わっていたと考えられる。

アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経の働きが安定していくと、睡眠リズムが整い、日中の活動性が回復し、気分の安定が取り戻されていった。

薬物療法では副作用によってかえって動けなくなる場面もあったが、神経機能を回復させるケアは副作用の心配がなく、身体そのものの回復力を引き出す点で大きな意義を持つ。

うつ病を「心の病」と単純に捉えるのではなく、自律神経やホルモンの乱れを含めた全身的な視点で理解し、アプローチすることが重要であることを示した症例であった。
薬では良くならなかった高校生のうつ病と不登校
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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