産後の骨盤矯正で悪化した座っていられないほどの腰痛

産後の骨盤矯正で悪化した座っていられないほどの腰痛

腰の痛みを気にせず仕事も子育てもできるようになりました!

30代女性
来院に至った経緯
社会人になってから約10年間、ずっとデスクワークの仕事を続けていた。長時間パソコンに向かう日が続いても、これまで腰痛を感じたことは一度もなかった。姿勢にはそれほど気をつけていたわけではないが、特に不調もなく、腰に関してはむしろ強い方だと思っていた。

妊娠中も出産ギリギリまで仕事を続けていたが、その間も腰痛を感じることはなかった。ところが、出産を終えてから数週間後、ふとした瞬間に「なんだか腰が重たいな」と感じるようになった。最初は、慣れない育児による疲れや睡眠不足のせいだと思い、深く考えなかった。

しかし、赤ちゃんを抱っこしたり、授乳で中腰になる時間が増えるにつれて、腰の違和感は次第に強くなっていった。朝起き上がるときや、赤ちゃんをベビーベッドから抱き上げるときにズキッと痛みが走ることが増え、日常の動作にも影響が出はじめた。

産後休暇を終えて仕事に復帰したが、以前のように長時間座って作業を続けることが難しくなっていた。出産前は残業が続いても平気で仕事をこなせていたのに、今では定時内の時間でさえ腰が重く、ソワソワと落ち着かない感覚が出てくるようになった。じっと座っていると、腰の奥がジーンと熱を帯びるように痛み、集中力も続かなくなっていた。

「育児で体力が落ちただけ」「そのうち治るだろう」と思っていたが、数か月経っても改善する気配はなく、むしろ痛みが増してきた。念のため整形外科を受診すると、「出産で腰に負担が掛かる人は多いです。しばらく安静にしていれば良くなりますよ。」と言われ、湿布を処方されたが、変化は感じられなかった。

ある日、仕事帰りに「産後の骨盤矯正」というのぼりを見かけた。これまでは腰痛とは無縁だったため、整体などに通った経験は一度もなかったが、この先家事・育児と仕事を両立させていくには今の腰の状態ではダメだと思い、通ってみることにした。今となってはこの選択が決定的な間違いだった。駅前で営業しているなら流行っているのだろうと思い、特に調べもせずに予約を取り、お店を訪れた。

担当してくれた若い先生はこちらの話もほとんど聞かずにうつ伏せになるように指示し、「あぁ~、腰が痛いんですね。じゃあほぐしたあと骨盤矯正しますね。」と言われた。最初はうつ伏せでマッサージをされて気持ちいいと感じていたが、最後に横向きになるように言われ、腰を2回バキッと強く捻られた。立ち上がった瞬間、体のバランスを失ったように立つことが困難になった。

「腰が痛いんですけど、これって大丈夫なんですか?」と尋ねると、「施術直後の好転反応なので2~3日で消えますよ」と言われた。しかし、1週間経っても腰の痛みは消えず、むしろ日を追うごとに腰痛は強くなっていった。「ちゃんと調べてから行けばよかった」と後悔したが、時すでに遅く、日常生活でも痛みを感じるほど悪化してしまった。

次こそはしっかり調べてから行こうと思い、インターネットで必死に検索を重ね、当院のホームページにたどり着いた。どの整体院を見ても「骨盤矯正」「マッサージ」という言葉ばかりだった中で、「レントゲンを撮る。温度検査をする。根本原因を特定。」と書かれているのを見て、「ここなら信頼できるかもしれない」と直感的に感じた。

一度、産後の骨盤矯正の整体で失敗している経験から怖さもあったが、腰痛を本気で改善したいという思いで、当院に来院された。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    左仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    左上後腸骨棘上端内縁にくぼんだ浮腫

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は6段階中2段階のD2レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、家事や仕事に加えて育児のことも考えて、無理のない範囲で週末の週1回のケアから開始した。

2週目(2回目のアジャストメント)には、座っているときの腰の重だるさが少し軽減した。仕事中に姿勢を変える回数が減り、「座っていられる時間が少し長くなった」と本人も実感していた。抱っこの際の鋭い痛みも減少し、日常生活の動作が少し楽になった。

4週目(4回目のアジャストメント)には、朝の起き上がり時に感じていた腰の強いこわばりが和らぎ、動き始めがスムーズになった。検査では仙腸関節の可動性が改善し、腰背部の筋緊張も緩和傾向がみられた。本人からも「最近は朝の準備がだいぶ楽になりました」と笑顔で話す様子があった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

10週目(7回目のアジャストメント)には、長時間のデスクワーク中に感じていた腰の違和感がほとんど気にならなくなった。以前は仕事中、30分も座っていられずに腰がソワソワして腰痛を感じていたが、今では集中して仕事に取り組めるようになった。この段階でケアのペースを3週間に一度に広げることができた。

19週目(10回目のアジャストメント)には、日常生活で腰の痛みを意識することがほとんどなくなり、育児や家事の動作も問題なくこなせるようになった。検査では骨盤の安定性がさらに向上し、左右のバランスも整ってきた。

現在は、仕事中に腰痛を感じることはなくなり、子供を抱きかかえてもほとんど腰は気にならなくなったが、再発防止と身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の腰痛は、出産後における骨盤部の機能低下によって、神経伝達の乱れが生じ、その結果として仙腸関節の可動性が制限されていたことが主な原因であったと考えられる。

妊娠から出産にかけて分泌されるホルモン「リラキシン」によって、骨盤周囲の靭帯や関節は一時的に弛緩する。このホルモン作用は出産を助ける重要な生理反応だが、産後はホルモンの分泌が減少し、靭帯が再び緊張を取り戻す過程で、身体全体の神経調整機能が乱れやすくなる。

出産時、女性ホルモンが正しく機能していれば、骨盤は自然と開き、出産後は時間の経過とともに自然に閉じてくる。しかし、女性ホルモンの分泌異常が起こると、この生理的工程がスムーズに行われなくなる。女性ホルモンの分泌は「視床下部—下垂体—卵巣系」で制御され、この連携を調整しているのが自律神経である。

脳と卵巣が自律神経を介して正確に情報をやり取りできていれば、ホルモンバランスは正常に保たれるが、出産・ストレス・睡眠不足などによって神経系が過緊張すると、この連携が崩れ、骨盤の回復過程にも影響を及ぼす。

今回のケースでは、骨盤部における神経機能の乱れが脊髄反射を介して防御的な筋緊張を引き起こし、仙腸関節の可動域を制限していたと考えられる。身体は痛みや不安定さを感じると、神経系が「これ以上動かさない方が安全」と判断し、可動域を意図的に制限する。この状態が長期間続くことで、筋緊張・血流低下・代謝異常が二次的に起こり、慢性的な痛みを形成していく。

アジャストメントは、単に関節を動かすものではなく、固有受容器を正しく刺激することで神経の再生と情報伝達を促し、脳と脊髄に正確な情報を送り返す行為である。神経伝達が回復することで脳は「この関節はもう動かしても大丈夫だ」と再認識し、防御的な可動制限が解除される。結果として仙腸関節の動きが自然に回復し、筋・神経・循環の調和が整う。

本症例でも、アジャストメントを重ねるごとに神経機能が回復し、体幹の安定と可動域が自然に戻っていった。副交感神経の働きが整うことでホルモンバランスも正常化し、身体が本来持つ自己回復機能が再び動き始めた。

出産後の骨盤機能の回復において重要なのは、「構造を矯正すること」ではなく、「神経の正確な働きを取り戻すこと」である。サブラクセーション(根本原因)を取り除くことで、脳・神経・筋・循環のすべてが再び秩序を取り戻し、身体が本来の生命力を発揮できる状態へと導かれた象徴的な症例であった。
産後の骨盤矯正で悪化した座っていられないほどの腰痛
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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