「呼吸が浅いせいで声が出ない」舞台で思うように表現できない苦悩

「呼吸が浅いせいで声が出ない」舞台で思うように表現できない苦悩

深く息が吸えるようになり、舞台で声を響かせられるようになりました!

20代女性
来院に至った経緯
舞台俳優を志し演劇専門学校に通っていた。日々のレッスンでは、声量や発声、そして姿勢の重要性を繰り返し指導されるが、講師の先生からは「声が小さい」「姿勢が崩れている」と毎回のように指摘を受けていた。

本人も改善したいと必死に取り組むが、深く息を吸い込もうとしても胸の途中で呼吸が止まってしまい、思うように声が響かない。全身に酸素が行き渡らない感覚とともに息苦しさを覚えることもあり、舞台人として必要不可欠な呼吸の力に自信を持てずにいた。

この呼吸の浅さは幼少期から自覚があった。子供の頃から続けていたクラシックバレエでも、講師から「呼吸が浅いと身体の動きにしなやかさが出ない」と指摘され続けてきた。踊りの表現力を高めたい気持ちはあったが、思い通りに体を操れない感覚が常にあり、自分の可能性を伸ばしきれていないのではないかと感じていた。

こうした経過を経ても、健康診断や一般の医療機関では「胸や肺に異常はない」「特に病気は見当たらない」と言われるばかりであった。ある医師からは「精神的なストレスや緊張の影響で呼吸が浅くなっているのでは」と説明を受け、リラックス法や深呼吸の練習を勧められた。

しかし本人は舞台に立つ緊張感をむしろ楽しむタイプであり、自分の努力不足や性格の問題にされてしまったような印象に納得できなかった。

それでも稽古が進むにつれ、周囲の仲間が舞台上で堂々と声を響かせる中、自分だけが息切れし、声が途中で途切れてしまう現実が何度も突きつけられた。夢を追う気持ちは強いのに、呼吸の制限によって舞台で思うような表現ができないことは、大きな劣等感となって心を苦しめていった。

本人の中では「このままでは舞台俳優としての夢を諦めるしかないのではないか」という不安が日に日に大きくなっていた。

そんな姿を間近で見ていた母親は「このままでは精神的にも身体的にも追い込まれてしまう」と危機感を抱き、必死に情報を探した。その過程で当院のホームページに出会い、「呼吸の浅さは体力や精神的な問題だけでなく、神経の働きや骨格のバランスとも深く関わっている」という記述に強く共感した。

これまで受けてきた説明とは異なる視点に「根本的な改善につながるのではないか」と希望を感じ、娘に勧めた。

患者自身も「声が響かないのは単なる努力不足ではない。体の根本に原因があるならば変われるかもしれない」と前向きな気持ちになり、「本当に舞台で全力を出せる自分になりたい」との思いから、当院でのケアを受けることを決断し来院された。


【東京都新宿区から来院】
初診の状態
  • 01

    第一頸椎右横突起にスポンジ状の浮腫

  • 02

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    右仙骨翼にスポンジ状の浮腫

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節に明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎右横突起と右仙骨翼に強い浮腫が確認され、頸部胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階も6段階中3段階の慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、都内からと遠方で専門学校の多忙さから週1回のケアから開始した。

3週目(3回目のアジャストメント)には、胸の途中で呼吸が止まるような感覚は依然として残っていたものの、稽古中に声が途切れる回数が減り、「少し長く声を伸ばせるようになった」と自覚するようになった。

7週目(6回目のアジャストメント)には、胸郭周囲の緊張が和らぎ、息を吸い込んだ際の圧迫感が軽減された。レッスンでの発声練習では講師から「声が以前より通るようになった」と評価され、本人も呼吸が楽になった実感を得ていた。この段階でケアのペースを2週間に1回へと広げることができた。

12週目(9回目のアジャストメント)には、深く息を吸っても胸の途中で止まる感覚がほとんどなくなり、舞台上で動きながら発声する場面でも息切れを感じにくくなった。体幹の安定性が増したことで姿勢の崩れも減り、バレエや演技の稽古での身体表現がより自然に行えるようになった。

21週目(14回目のアジャストメント)には、呼吸の浅さはほとんど意識されなくなり、稽古中に最後まで声量を維持できるようになった。本人は「やっと舞台で全力を出せるようになった」と自信を取り戻し、将来への不安よりも期待を抱けるようになった。

現在は、呼吸の問題はほとんど落ち着いたが、舞台パフォーマンスの質を維持・向上させるための身体のメンテナンスとして、定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の呼吸が浅い問題は、副交感神経の働きが十分に発揮されていなかったことが大きな要因であったと考えられる。

呼吸は肺や横隔膜といった器官だけで完結するのではなく、神経の調整を受けながら全身の協調運動として成り立っている。特に副交感神経が優位に働くときに胸郭は柔軟に拡張し、横隔膜は深く下降して効率的な吸気が可能になる。

逆に副交感神経の働きが抑制されると、胸郭は十分に広がらず、呼吸は浅く速いものとなり、酸素を十分に取り込むことができなくなる。

検査では、上部頸椎や骨盤部といった副交感神経の働きと密接に関わる部位に強い反応が確認された。首の緊張は迷走神経の働きを妨げ、呼吸のリズムや深さを乱す原因となる。また、骨盤部に問題がある場合、下半身からの安定性が損なわれ、姿勢の崩れを通じて横隔膜や肋間筋の動きにも制約が及ぶ。

舞台上での発声や姿勢保持が難しくなる背景には、単なる努力不足や精神的要因ではなく、このような神経と骨格の連動した不具合が隠れていたと推察される。さらに、副交感神経が抑え込まれた状態では交感神経が優位となり、体は常に緊張状態に傾く。

舞台や稽古の場面で緊張感が続くと、心拍数は上がり、筋肉は固まり、さらに呼吸は浅くなってしまう。この悪循環は、声量不足や発声の不安定さを生み出すだけでなく、集中力や表現力の低下にもつながっていたと推察される。

アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれたことで、副交感神経の働きが回復し呼吸筋の協調運動が改善されたのだろう。その結果、胸郭の広がりが得られ、横隔膜が十分に動くようになり、舞台俳優として必要とされる深く安定した呼吸が可能になったと考えられる。

今回の症例は「呼吸の浅さ」を単なる体力不足や緊張のせいにするのではなく、神経と骨格の問題として捉え直すことの重要性を示すものである。サブラクセーション(根本原因)を見極めて取り除くことによって、本来持っていた呼吸の力を引き出すことができることを再確認できた症例である。
「呼吸が浅いせいで声が出ない」舞台で思うように表現できない苦悩
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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