薬を飲んでも眠れない…終わりの見えないうつ病の苦しみ

薬を飲んでも眠れない…終わりの見えないうつ病の苦しみ

眠れるようになり、心も体も少しずつ軽くなってきました!

30代男性
来院に至った経緯
学生時代は誰よりも前向きで、常に笑顔を絶やさない性格だった。大学でも自分の学びたい道に進むことができ、充実したキャンパスライフを過ごしていたが、その後の社会人生活は一変した。

初めて就職した会社はいわゆるブラック企業で、毎朝のサービス出社が当たり前。始業開始の1時間前に出社しても「何時だと思っているんだ!」と上司から怒鳴られる日々が続いた。

夜は残業が常態化し、終電で帰れる日ですら少なく、タクシー代も出せない安月給では漫画喫茶で仮眠を取るしかないことも多かった。シャワーを浴びることもできず、数時間後には出社するという過酷な生活は、肉体的にも精神的にも確実に蝕んでいった。

上司からの圧力がとにかくストレスになり、社会人3年目には両親から「転職した方がいい」と心配されるほどやつれ果てていた。ようやく退職を決意して上司に申し出たが、「3か月前に言うのが常識だろ!」と罵倒され、そこからは同僚も巻き込んだ嫌がらせが始まった。辞めるまでの3か月間、心が壊れていく感覚に苛まれ、不眠、倦怠感、食欲不振、体重減少といった症状が一気に噴き出した。

退職してからも状態は改善せず、軽い運動や生活リズムの改善を試みても眠れず、食欲も戻らなかった。病院を受診したところ「うつ病」と診断され、抗うつ薬や睡眠薬を処方された。服薬を始めて最初の1週間は少し眠れる気がしたが、次第に効き目を感じなくなり、再び眠れない夜を過ごすようになった。

幸いにも新しい職場に就くことができ、そこは上司や同僚も優しく、人間関係でのストレスは一切なかった。しかし、それでも気分の落ち込みや強い無気力感は突発的に訪れ、自分ではどうにもコントロールできなかった。

体重はさらに減少し、心身の疲弊は続いていた。

病院で相談してみたが、「これ以上強い薬はありません」と医師から告げられた。そんなとき、信頼している職場の上司や同僚から「ここの先生はどんなことでも相談に乗ってくれるから一度行ってみたら?」と当院を紹介された。

「自分はうつ病ですよ?カイロプラクティックで何が変わるんですか?」と最初は半信半疑だったが、「いいから一度行ってみろ」と上司や同僚が強く勧めてくれた。信頼できる人からの紹介であったこと、そして少しでも変われるきっかけを求めていたこともあり、思い切って当院に来院された。


【神奈川県横浜市栄区から来院】
初診の状態
  • 01

    正中仙骨稜に強い浮腫感

  • 02

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    第一頸椎左横突起にスポンジ状の浮腫

経過と内容
初診時の状態では、第一頸椎には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また正中仙骨稜と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、頸部胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中4段階の慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階も6段階中4段階の慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。

7週目(7回目のアジャストメント)には、日中の強い倦怠感が少し軽くなり、午前中の仕事を以前より集中して取り組めるようになった。睡眠は依然として浅いままだったが、「少しだけ眠れる時間が増えた気がする」と本人も小さな変化を感じていた。

12週目(12回目のアジャストメント)には、起床時の極端な疲労感が和らぎ、出勤前に「体が動かない」と感じることが減ってきた。気分の落ち込みは依然として波があったが、食欲がわずかに戻り、体重の減少が止まったことに本人も安堵していた。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

20週目(16回目のアジャストメント)には、夜にまとまった睡眠が取れる日が増え、日中に頭がぼんやりする感覚が和らいできた。職場で同僚と冗談を交わせるようになり、「少しずつ昔の自分を取り戻してきた」と話す場面もあった。

32週目(22回目のアジャストメント)には、睡眠リズムが安定し、気分の大きな落ち込みも減少した。休日には外出する気力が出てきて、趣味だった読書や音楽を楽しむ余裕が戻ってきた。

現在は、うつ病が原因と思われる気分の落ち込みや睡眠の質にも改善が見られ、ほとんどの症状が落ち着いている。本人は「もう一度、自分の人生を取り戻せた気がする」と話しており、再発を防ぎ、心身の安定を維持するために、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回のうつ病による気分の落ち込みや不眠症は、自律神経の乱れによって内分泌系に異常が生じ、ホルモンバランスが崩れていたことが根本的な要因であったと考えられる。

うつ病は、脳内のセロトニンの低下とコルチゾールの増大が大きな病態の軸となる。セロトニンは睡眠、食欲、感情の安定に深く関わる神経伝達物質であり、その低下は不眠、抑うつ、意欲低下を招く。

一方、慢性的なストレスによりHPA軸(視床下部―下垂体―副腎皮質系)が過剰に働くと、コルチゾールが過剰に分泌される。コルチゾールの長期的な過剰分泌は、海馬や前頭前野の神経細胞にダメージを与え、セロトニンやドーパミンの働きを阻害するため、気分の不安定化を助長する。

つまり、セロトニンの低下とコルチゾールの増加は相互に悪循環を形成し、症状を慢性化させる要因となっていた。

検査において上部頸椎や仙骨領域に強い反応が確認された。これらの部位はどちらも副交感神経支配の領域となる。副交感神経支配領域に神経の負担が掛かっていることで、元々交感神経が優位な状態だったと推察される。

その状態での過度なストレスによって、体内のホルモンバランスが一気に乱れ、うつ病を発症させてしまったのだろう。うつ病に重要とされている「セロトニン」はその総量の90%以上が腸から分泌されている。

腸は副交感神経が優位なときに活発になるため、副交感神経が上手く機能できていなかった状態は、腸からのセロトニン分泌も低下させていた可能性がある。また、脳から出ているセロトニンは総量のたった2%程度とされているが、その2%が人間のメンタル面に大きな影響を与えることが知られている。

コルチゾールが大量に分泌されている状態では、体内では慢性的な炎症反応が持続し、筋肉や神経に負担をかけ続ける。その結果、免疫の働きは低下し、倦怠感や集中力低下、慢性疲労といった症状を強めてしまう。

アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経の働きが整った結果、ホルモンバランス異常が徐々に解消されてうつ病による気分の落ち込みや不眠症が解消されたと考えられる。

本症例は、うつ病を「精神的な問題」とだけ捉えるのではなく、神経学的・内分泌学的な視点から理解する必要性を示すものであった。

神経の安定が内分泌を調整し、結果として感情や睡眠といった心の領域までも整えるという事実は、カイロプラクティックケアの有効性を裏づける臨床的証拠となった症例であった。
薬を飲んでも眠れない…終わりの見えないうつ病の苦しみ
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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