放射線治療か手術しかないと言われたバセドウ病

放射線治療か手術しかないと言われたバセドウ病

バセドウ病の数値も症状も安定し、落ち着いた生活を取り戻せました!

30代女性
来院に至った経緯
昔から暑がりで、人より汗をかきやすい体質だと自覚していた。周囲からは「汗っかきだね」と軽く言われる程度だったが、本人はそれほど気にしていなかった。

ある日、突然強い動悸と手足の震えが出て病院を受診した。血液検査や超音波検査など詳しく検査してもらい「バセドウ病」と診断された。バセドウ病の説明を受けてみると、昔から体重が増えにくかったことや、常に落ち着かない感覚があったことが腑に落ちた。

その後、しばらくすると夜の眠りが浅くなり、日中に些細なことでイライラしてしまうことが増えた。急に疲れて何もできなくなる日も出てくるなど、体調の波が激しくなった。

病院で処方された薬を飲みながら仕事を続けたが、インターネットで「バセドウ病は薬だけでは完治しにくく、寛解にとどまる場合が多い」という情報を見つけ、不安を強めた。

薬を2年間続けたが検査値が思わしくないため、担当医から「放射性ヨウ素療法か手術」を勧められた。医師は放射性ヨウ素療法の安全性を説明したが、「放射線」という言葉に強い抵抗と恐怖を感じ、手術の全身麻酔や合併症の可能性にも不安が募った。

「これ以上大きな治療を受ける勇気がない」「薬だけの生活に戻るのも嫌だ」と気持ちが行き詰まってしまった。

代替的なアプローチを探し、職場の同僚の勧めで評判の良い鍼治療院に通い始めた。半年間週1回の施術を続けたが、残念ながら症状や数値に有意な改善は見られず、期待が失われていった。

バセドウ病と診断されてから3年が経つころ、学生時代の友人に会う機会があった。バセドウ病について相談したところ、「ここの先生すごいから相談してみて」と強く当院を紹介された。

カイロプラクティックは初めてで半信半疑だったが、友人の熱心な推薦と「大きな治療に踏み切る前にできることを試したい」という気持ちから、最後の望みを託すようにして当院に来院された。


【神奈川県相模原市から来院】
初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    右仙骨翼にスポンジ状の浮腫

  • 03

    第一頸椎右横突起にスポンジ状の浮腫

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また右仙骨翼と第一頸椎右横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は6段階中4段階の慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、平日は遅くまで残業があるで週末の週1回のケアから開始した。

5週目(5回目のアジャストメント)には、夜中に目が覚める回数が少し減ったことに気づき、以前よりも朝の目覚めが軽く感じられるようになった。まだ大量の発汗や動悸は残っていたが、日中の疲労感が和らぎ、気持ちの面で少し落ち着きを取り戻せている実感があった。

9週目(9回目のアジャストメント)には、日中のイライラ感が以前よりも減り、職場でも周囲とのやり取りに余裕が出てきた。病院での血液検査においても、甲状腺ホルモン(FT4やTSH)の数値がやや安定傾向にあると説明され、患者自身も不安が和らいだ。

15週目(15回目のアジャストメント)には、手足の震えがほとんど気にならなくなり、夜もぐっすり眠れる日が増えてきた。発汗量も以前より落ち着き、体重も少しずつ増加傾向を示し始めた。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

24週目(24回目のアジャストメント)には、病院での再検査でも数値が「これまでで一番安定している」と医師から伝えられ、薬の減量が検討される段階に至った。本人も「自分の身体が内側から落ち着いてきている」という実感を持ち始め、不安感よりも安心感が勝るようになった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いた状態を維持しているが、再発予防と身体の安定を保つために、定期的なカイロプラクティックケアを継続している。

考察
今回のバセドウ病は、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働いていたことが甲状腺機能亢進の背景にあったと考えられる。

交感神経優位の状態は視床下部―下垂体―甲状腺系(HPT軸)を過剰に刺激し、甲状腺ホルモン(T3・T4)の分泌を必要以上に促進させる。このような病態が長期に持続すると、動悸、多汗、不眠、体重減少といった臨床症状が現れやすくなる。

本症例においても同様の症状が顕著であり、自律神経の偏りが甲状腺機能の異常と密接に関与していたと推察される。

バセドウ病は自己免疫反応とも関連している。交感神経の過活動はリンパ球機能やサイトカインのバランスを乱し、免疫寛容が崩れることで自己抗体(TSH受容体抗体)が過剰に産生されやすくなると報告されている。

つまり、自律神経の不安定さは単にホルモン分泌に影響を与えるだけでなく、免疫系を介して病態を持続・悪化させる一因となり得る。

検査においては、上部頸椎と骨盤部に強い反応が確認された。これらの部位は副交感神経と関連が深く、本来であれば交感神経活動を抑制し全身のバランスを保つ役割を担っている。

しかし、そこに負担が掛かることで副交感神経の働きが抑え込まれ、交感神経が過剰に優位となる状態を助長していた可能性が高い。その結果、甲状腺ホルモンの過分泌が継続し、患者の不眠や動悸といった症状を増悪させていたと考えられる。

アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経の偏りが是正されたことで、副交感神経の機能が徐々に回復した。これにより交感神経とのバランスが整い、神経系全体の安定性が高まったと推測される。

その影響は内分泌系にも波及し、HPT軸の過剰な興奮が鎮静化され、甲状腺ホルモン分泌が少しずつ安定へと向かった。

実際に、臨床経過として睡眠の改善やイライラ感の軽減といった精神的・身体的変化が現れるのと並行して、病院での血液検査においてもFT4やTSHの値が良好な方向へ変化した。

これは神経機能の安定と内分泌系の改善が相互に関連していたことを示すものであり、単なる症状緩和にとどまらず、全身的な恒常性の回復が進んでいたと考えられる。

本症例は、バセドウ病を薬物療法や外科療法のみで捉えるのではなく、自律神経・内分泌・免疫の三者が相互に連動する仕組みを理解したうえで介入することの重要性を示している。

神経の安定がホルモン分泌や免疫応答を整え、結果として患者の生活の質を改善に導く可能性を示した臨床例であった。
放射線治療か手術しかないと言われたバセドウ病
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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