抱っこや中腰で悪化した保育士の慢性腰痛

抱っこや中腰で悪化した保育士の慢性腰痛

痛み止めに頼る日々から解放され、子どもたちを笑顔で抱き上げられるようになりました!

30代女性
来院に至った経緯
子どもが好きで大学では保育学を専攻し、卒業後に念願だった保育士として働き始めた。現在は勤務10年目を迎え、0歳から5歳までの子どもたちと毎日向き合っている。抱っこやおむつ替え、床での遊びなど、常に中腰や前かがみの姿勢が多く、腰に負担がかかることは自覚していたが、「子どもたちのため」と自分を奮い立たせ、これまで大きなケガもなく続けてきた。

しかし、ここ1年ほど前から腰の重だるさが気になるようになり、朝起き上がるときや園で子どもを抱き上げるときに「ズキッ」と痛みが走るようになった。最初のうちは「姿勢が悪いだけ」と思い、ストレッチや湿布でごまかしていたが、仕事の忙しさも重なり、次第に痛みが強くなっていった。

特に、園児を抱き上げた瞬間に腰の奥がギクッと痛み、動けなくなることもあり、同僚に助けを求める場面も出てきた。保育室では子どもたちを不安にさせないように笑顔を作っていたが、内心は痛みに耐えるのが精一杯だった。「若いのに腰がこんなに痛くなるなんて」と不安を感じつつも、痛みを理由に休むわけにはいかず、痛み止めを飲みながら仕事を続けていた。

仕事が終わる夕方には腰が鉛のように重くなり、家に帰ると動く気力も湧かず、夕食を作るのもつらい日が増えていった。週末にしっかり休んでも痛みは取れず、朝起きた瞬間から腰の奥が重く、靴下を履くのも一苦労だった。整形外科では「筋肉の使いすぎによる慢性腰痛」と診断され、湿布と鎮痛薬が処方されたが、思うような改善は見られなかった。

夜も寝返りを打つたびに痛みで目が覚めるようになり、朝から体が重く、笑顔を作るのもつらくなっていった。子どもたちの前では明るく振る舞っていたが、保育ノートを書く手が震えるほど腰が痛むこともあり、「このままでは仕事を続けられないかもしれない」という不安が強くなっていった。

そんなとき、同じ保育園で働く先輩が「私も同じような腰痛で悩んでいたけど、カイロプラクティックで良くなったよ」と当院を紹介してくれた。最初は「骨を鳴らすだけで本当に良くなるのかな」と半信半疑だったが、先輩が以前のように元気に園児を抱き上げている姿を見て、「自分も変われるかもしれない」と希望を感じた。

「このまま痛みをごまかしながら働き続けるのは限界かもしれない」「もう一度、子どもたちと全力で向き合いたい」という思いから、当院に来院された。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    左仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    左上後腸骨棘上端内縁にくぼんだ浮腫

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と下部腰椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中4段階の慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は6段階中2段階のD2レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアが必要だったが、所要から週2回の時間の確保が難しいとのことで、無理のない範囲で週1回のケアから開始した。

2週目(2回目のアジャストメント)には、朝起き上がるときの腰のこわばりがやや軽減し、「子どもを抱き上げるときの動作が少し楽になった」と話していた。痛みで力を入れづらかった腰部にも安定感が出はじめ、仕事中に無意識に腰へ手を当てる回数が減っていた。

5週目(5回目のアジャストメント)には、日中の腰の重だるさが軽減し、「保育室でしゃがんだり立ち上がったりする動作がスムーズになってきた」と話していた。仕事終わりの疲労感も減り、夜の痛みで目が覚めることも少なくなっていた。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

11週目(8回目のアジャストメント)には、腰をかばうような動作が減り、園児を抱き上げたときの腰の違和感もほとんどなくなった。「一日中動いていても腰を気にしなくなった」と話しており、職場の同僚からも「姿勢が良くなったね」と言われるようになった。腰部の筋緊張が緩み、体幹の安定が高まったことで、可動性と柔軟性の両方が回復していた。

15週目(10回目のアジャストメント)には、腰痛をほとんど感じることがなくなり、朝の動作もスムーズになった。「子どもたちを抱き上げても腰を気にせず遊べるようになった」と笑顔で話していた。仕事後の疲労感も軽く、身体全体の循環が整った印象であった。

現在は、腰痛はほとんど感じなくなり安定しているが、再発防止と身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の腰痛は、左仙腸関節の機能低下が原因であったと考えられる。保育士という職業特性上、前かがみ姿勢や片側での抱き上げ動作など、骨盤周囲に反復的なストレスが加わりやすい。

これにより仙腸関節部の固有受容器が慢性的に刺激され、脳に「この関節は不安定である」という誤った情報が送り続けられる。神経系はその情報をもとに腰部筋群を防御的に緊張させ、可動域を制限しようとする。これが長期化すると、筋肉・靭帯・関節包にまで循環障害や代謝異常が波及し、慢性的な痛みへと移行していく。

また、仙腸関節は骨盤全体のバランス維持において中枢的な役割を担っており、その可動性の低下は脊柱全体の連鎖運動にも影響する。左仙腸関節の機能低下は、対側の腰方形筋や起立筋群に代償的な緊張を生じさせ、身体全体の左右バランスを崩す。これが結果として反り腰や過前弯を助長し、腰椎椎間板への圧力を高める要因となる。

人間の身体は、動きを止めることで痛みを防ごうとするが、それは同時に神経伝達の停滞を意味する。防御的に固まった筋群は酸素供給を妨げ、痛み物質の蓄積を引き起こし、脳はその情報を「危険」と判断し続ける。この悪循環こそが慢性腰痛の本質であり、単なる筋疲労では説明できない神経機能の誤作動である。

アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が除去されると、関節の動きと固有受容器からの情報が正常化され、脳は「この関節は安全に動かせる」と再認識する。これにより防御反応は解除され、筋緊張が緩み、血流が回復したと推察される。実際に本症例でも、初期には朝のこわばりや中腰での痛みが強かったが、ケアの継続とともに動作時の恐怖心が減少し、神経と筋の協調性が戻っていった。

さらに、骨盤部は副交感神経の支配領域でもあり、この部分の神経機能が回復することで自律神経のバランスも整う。睡眠の質や集中力の向上、体全体のリズムが安定したことも、神経系の再統合が進んだ結果だと考えられる。

この症例は、構造的な歪みを整えることではなく、「神経の働きを整えることこそが腰痛の根本改善である」ことを示した好例である。痛みを単なる局所の問題としてではなく、神経系の適応反応として捉えることの重要性を再確認させる症例であった。
抱っこや中腰で悪化した保育士の慢性腰痛
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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