年齢だから仕方ないと言われた圧迫骨折の痛み

年齢だから仕方ないと言われた圧迫骨折の痛み

歩くことも家事も諦めかけていましたが、今は孫と一緒に外出できるようになりました!

70代女性
来院に至った経緯
ある日、背中の下の方に鈍い痛みを覚えるようになった。転倒や外傷などきっかけになるようなことは一切なく、ただ「最近少し動くと腰や背中が重たい」と感じていた程度であったため、当初は大したことではないと考えていた。

ところが、2週間が経過しても痛みはまったく引かず、むしろ立ち上がる動作や椅子から前かがみになる瞬間に鋭い痛みが走り、不安が募っていった。

病院で検査を受けた結果、「下部胸椎の圧迫骨折」と診断された。医師からは「骨粗しょう症の影響で骨が脆くなっているため、日常生活のわずかな負荷でも骨が潰れてしまうことがある」と説明を受けた。

治療は基本的に保存療法で、痛み止めの薬とコルセットを処方され、「とにかく安静にして様子をみましょう」と告げられた。しかし「安静にしていれば良くなる」という説明は、これからの生活に希望を持たせるにはあまりに心もとなく、再び動けるようになるのかという大きな不安が残った。

それからの日々は、今まで当たり前にできていた家事や外出が次第に困難になっていった。買い物袋を持つのも怖くなり、掃除や洗濯も娘に頼ることが増えた。

以前は孫と一緒に買い物や散歩に出かけるのが楽しみだったが、その気力さえ奪われ、外に出る回数が極端に減っていった。動かないことで体力が落ち、息切れや全身の疲労感も強まり、「このまま寝たきりになってしまうのではないか」という恐怖に押しつぶされそうになった。

心の面でも影響は大きかった。夜になると痛みで寝返りが打てず熟睡できずに朝を迎え、昼間は体も頭も重たく、やる気が湧かない。友人から誘いを受けても断ることが続き、「迷惑をかけるのではないか」と考えるようになった。

周囲には「年齢のせいだから仕方がない」と言われることが多かったが、その言葉はかえって自分を諦めに追い込むようで、孤独感と虚しさが募っていった。

そんな中、自身も体調不良に悩み、当院に通って改善した経験を持つ娘さんが強く勧めてくれた。「私も前田先生に診てもらってすごく楽になったの。お母さんもきっと力になってくれると思う」と言われ、半信半疑ながらも心が動いた。

これまで病院や薬だけでは解決できなかった現実があるのなら、違う角度からのアプローチに賭けてみても良いのではないか。

「年齢だから仕方ない」と諦めるのではなく、もう一度自分らしく歩き、生活を楽しめるようになりたい。その思いを胸に、娘さんの紹介をきっかけに当院へ来院された。


【神奈川県藤沢市から来院】
初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    右仙骨翼にスポンジ状の浮腫

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節に明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また右仙骨翼と第一頸椎右横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頸部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中6段階の慢性的なD6レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は6段階中5段階の慢性的なD5レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、ケア当初は外出するのも苦労するような状態だったため、週1回のケアから開始して症状緩和とともに徐々に集中ケアに移行することにした。

2週目(2回目のアジャストメント)には、まだ背中の強い痛みは残っていたが、寝返りや起き上がりの動作がわずかに楽になった。夜間の痛みで目を覚ます回数が減り、短い時間ではあるが熟睡できるようになったと本人も実感していた。

4週目(4回目のアジャストメント)には、日常生活での支障が少しずつ軽減され、買い物や家事を短時間であればこなせるようになった。以前は常に前かがみで動いていたが、背筋を伸ばして歩ける時間が増え、気持ちも前向きになりつつあった。外出も適度にできるようになったため、この段階から週2回の集中ケアに移行した。

9週目(14回目のアジャストメント)には、圧迫骨折部位周辺の鋭い痛みは大幅に和らぎ、背中全体のこわばりや筋肉の張りも軽減された。外出も苦痛ではなくなり、孫と散歩に出かけることができたと嬉しそうに話していた。

13週目(22回目のアジャストメント)には、慢性的に残っていた鈍い痛みもほとんど感じなくなり、睡眠の質も安定してきた。身体を動かすことへの恐怖心も薄れ、以前のように趣味や地域の活動にも少しずつ参加できるようになった。

現在は、圧迫骨折による諸症状は落ち着いたが、再発防止と体力維持のため、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

考察
今回の圧迫骨折は、外傷によるものではなく、日常生活の中で蓄積された体への負担と骨の脆弱性が重なって起きたと考えられる。特に土台である骨盤部の乱れが大きな要因の一つであった。

人間の背骨は骨盤の上に乗るように構造されているため、骨盤に歪みや不安定性が生じると、その上に位置する脊柱全体に補正作用が働く。例えば、骨盤が左に傾けば、身体は正中線を保つために背中を右へと補正する。

この補正が繰り返されることで、下部胸椎は「切り返し」のストレスを強く受けやすい部位である。今回圧迫骨折が下部胸椎で生じていたのも、この補正の負荷が集中した結果だと推察できる。

圧迫骨折が女性に多い背景には、閉経後の女性ホルモン分泌量の低下が大きく関与する。女性ホルモンには骨の代謝を調整し、骨密度を維持する役割があるが、その分泌が低下すると骨量は急激に減少し、骨粗しょう症を引き起こしやすくなる。

今回のケースも外傷がない状態で圧迫骨折が生じていることから、骨盤部の補正による力学的負担に加え、骨密度低下が拍車をかけたものと考えられる。

また、自律神経系の視点から見ても重要な示唆が得られた。検査では骨盤部と上部頸椎という、副交感神経と関わりの深い領域に強い反応が確認された。副交感神経の働きが低下すると、副甲状腺の制御が乱れ、血中カルシウム濃度を一定に保つ機能が破綻する。

その結果、骨から過剰にカルシウムが引き出され、骨密度の低下を助長する「副甲状腺機能亢進状態」を生み出す危険がある。こうした背景が、圧迫骨折を起こしやすい体内環境を形成していた可能性は否めない。

アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、骨盤部の安定性が回復したことで、背骨全体の補正作用による過剰なストレスが軽減された。加えて、自律神経のバランスが整うことで副甲状腺や骨代謝の機能も安定し、圧迫骨折後の回復や症状の改善につながったと考えられる。

この症例は、圧迫骨折を単に「骨が弱いから起きる」と片付けるのではなく、骨盤部の機能低下や自律神経系の関与といった全身的な視点から捉えることの重要性を示している。
年齢だから仕方ないと言われた圧迫骨折の痛み
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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