慢性的な腰痛でコルセットを巻いても歩けなくなった

慢性的な腰痛でコルセットを巻いても歩けなくなった

コルセットや杖なしでも歩けるようになり、妻と再び旅行に出かけることができました!

70代男性
来院に至った経緯
仕事を引退し、長年の夢だった夫婦での海外旅行を楽しもうと計画を立てた。最初の目的地はフランス。出発当日まで体調は良好で、飛行機の中でも快適に過ごしていた。ところが現地に到着し、飛行機のイスから立ち上がろうとした瞬間、激しい痛みが腰に走り、立ち上がることができなくなった。

長年の経験から「これはぎっくり腰だ」とすぐにわかった。現役時代から慢性的な腰痛を抱えており、これまでにも何度かぎっくり腰を経験していたが、今回は過去にないほど強い痛みだった。

せっかくの海外旅行だったが、フランス滞在中の1週間はほとんどホテルのベッドで過ごすことになり、予定していた観光もすべてキャンセルした。妻の落胆は大きく、「こんなことなら無理して行かなければよかった」と口にする姿を見るたびに、申し訳なさと情けなさが込み上げた。

現役時代は仕事に追われ、家族に寂しい思いをさせてきた。だからこそ、引退後は妻への恩返しとして「世界中を一緒に回ろう」と約束していた矢先の出来事だった。帰国後も家庭内の空気は重く、腰痛だけでなく心まで沈んでいった。

帰国後すぐに整形外科を受診したが、医師からは「椎間板が少し薄くなっていますが、年齢的なものですね。手術の必要はありません。痛み止めとコルセットを出しておきます。」とだけ告げられた。

リハビリも勧められ、3か月間通院したものの、歩くたびに腰に痛みが走り、改善の兆しは見られなかった。3か月経過した時点で理学療法士の先生から「もう通わなくて大丈夫です。」と言われたが、腰痛は何も変わっていなかった。「あとは自分で歩いたりストレッチをしてください。」と言われ、途方に暮れた。

その後、知人から紹介された整体院を訪ねた。最初に少し話を聞かれただけで、ベッドに横になるように指示され、いきなり腰をボキッと強く捻られた。電動ベッドの上でうつ伏せになるよう指示されドンドンと腰を叩かれ、「もう歩けるでしょ?」と言われたが、痛みはむしろ悪化していた。

それを伝えると再びベッドに横になるよう指示され、腰をボキッと捻られ、「もう大丈夫、歩けるでしょ?」と言われたものの、今度は立ち上がることさえできなくなった。最後には「これを巻いとけば動けるから」と言ってコルセットを勧められた。すでに持っていることを伝えても聞き入れられず、「うちのコルセットは病院のやつとは違うから。」と言われ、その場で購入する羽目になった。

帰宅後、痛みはさらに強まり、3日経っても治まらなかった。整体院に電話で相談すると「好転反応だから大丈夫」と言われたが、結局それをきっかけに腰痛はさらに悪化してしまった。

再び整形外科を受診してMRI検査も受けたが、「ヘルニアではないから様子を見ましょう」と言われるだけで、改善策はなかった。整体に通うのは怖かったため、自分で調べて鍼灸院にも通ったが腰痛は変わらず、「筋力が落ちているからコルセットを巻いてどんどん歩きましょう」と同じことを言われた。

整形外科のリハビリでも整体でも鍼灸でも、多くの先生から「筋力がないから歩くしかない」と指導された通り、毎日コルセットを巻いてウォーキングを続けたが、歩くほどに腰が重くなり、歩ける距離も時間もどんどん短くなっていった。

半年後には家から5分のコンビニまで歩くのにも途中で休憩が必要なほどになり、外出するときは杖が手放せなくなってしまった。妻と楽しみにしていた海外旅行どころか、日常生活さえままならなくなり、夫婦の会話も減っていった。

そんなある日、長年通っていた理髪店の店長と偶然街中で再会した。杖をついて歩く姿を見た店長が「最近来ないから心配してたよ」と声をかけてくれた。事情を話すと、「なんだ、早く言ってよ。自分も、腰痛と手のしびれで悩んでいたけど、ここに通って良くなったから行ってみてよ」と当院を紹介してくれた。

以前、整体で痛みが悪化した経験があることを伝えると、「ここの先生は全然違うから。本当に信頼できる先生だから大丈夫」と真剣な表情で勧めてくれた。

長年の付き合いのある理髪店の店長がそこまで言うなら、自分も行ってみようと思い、最後の望みをかける気持ちで当院に来院された。


【神奈川県鎌倉市から来院】
初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    右上後腸骨棘上端にくぼんだ浮腫

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容
初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と下部腰椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また右上後腸骨棘上端と下部腰椎に強い浮腫が確認され、腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中6段階の慢性的なD6レベルで重度の骨盤の傾きや激しい椎骨の変性が確認された。首の椎間板の段階は6段階中4段階の慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

さまざまな検査所見や、本人の「どうしても夫婦で海外旅行に行きたい」という強い思いから、初期集中期の段階では週3回のケアから開始した。また、腰部そのものの問題ではなく、検査所見から明らかに骨盤部の可動性低下が主因であったため、コルセットの着用は中止してもらった。

1週目(3回目のアジャストメント)には、立ち上がる動作の際に感じていた鋭い痛みがわずかに軽減した。腰を支えるときの恐怖感が薄れ、歩き始めるまでの時間が短くなった。杖をついてゆっくりとではあるが、自宅の中を自力で移動できるようになり、「痛みの波が少し穏やかになってきた気がする」と話していた。

3週目(8回目のアジャストメント)には、歩行距離が徐々に伸び、近所のスーパーまで休まずに歩けるようになった。これまで外出することに対して強い不安を感じていたが、「久しぶりに太陽の光を浴びるのが気持ちいい」と表情にも明るさが戻ってきた。腰部の可動性が広がり、動作の初動で感じていた硬さが和らいだ。この段階でケアのペースを週2回に広げることができた。

6週目(14回目のアジャストメント)には、杖に頼らずに歩行できる時間が増えた。以前は5分も歩くと腰に張りが出ていたが、今では15分以上の散歩を問題なく行えるようになった。腰の重だるさも軽くなり、歩行姿勢が安定してきた。夜間の痛みも軽減し、睡眠中に腰の違和感で目を覚ますことがなくなった。この頃には、「妻と一緒に近くの公園まで歩くのが楽しみになってきた」と話していた。

8週目(18回目のアジャストメント)には、長時間の歩行でも痛みの再発が見られなくなった。骨盤部の可動性が十分に回復し、仙腸関節の機能も安定していた。以前は歩き始めに前かがみになる癖があったが、背筋を伸ばして歩けるようになり、姿勢も自然に改善した。「コルセットを外した状態で、こんなに軽く動けるとは思わなかった」と本人も驚いた様子を見せていた。この段階でケアのペースを週1回に広げることができた。

14週目(24回目のアジャストメント)には、腰痛はほとんど感じられず、動作全体がスムーズになった。かつて痛みのために避けていた家事も再開し、庭の手入れを楽しむようになった。歩行距離も1時間以上に延び、坂道でも問題なく歩けるようになった。本人の希望もあり、様子を見ながら国内旅行を計画。実際に2泊3日の温泉旅行に行くことができ、「旅行中も腰の痛みを気にせず歩けたのは本当に久しぶり」と感想を語っていた。

現在は、腰痛は完全に落ち着き、再発もなく安定した状態を維持している。本人は「次は妻ともう一度フランスへ行く」と新たな目標を語っており、体のメンテナンスと再発防止を目的として、定期的なカイロプラクティックケアを継続している。

考察
今回の腰痛は、骨盤部のサブラクセーション(根本原因)によって、神経の流れと循環機能が阻害されていたことが主な原因であったと考えられる。身体の土台である骨盤が正しく機能しなくなると、そこを通過する神経伝達が滞り、筋肉や関節、さらには内臓機能にまで影響を及ぼす。

特に骨盤は仙骨神経叢を中心とした重要な神経の交差点であり、わずかな可動性の乱れが自律神経系にまで波及することが知られている。このような状態が続くと、身体の回復機能は徐々に低下し、慢性的な痛みや可動域の制限を生み出す。

仙腸関節の可動性低下は、深層筋群である多裂筋や腸腰筋、骨盤底筋群の過緊張を引き起こし、局所の血流を阻害する。これにより、筋線維内の代謝が停滞し、酸素不足と乳酸蓄積によって痛覚受容器が持続的に刺激される。結果として、痛みの閾値が低下し、わずかな動作でも強い疼痛を感じやすくなる。

こうした状態では、脳は「動く=痛い」と認識し、運動制御系の抑制が起こるため、体の動きそのものが制限されてしまう。長期間この悪循環が続くことで、神経・筋・循環のすべてが緊張状態に固定され、自己回復力が眠ってしまうのである。

アジャストメントによって骨盤部の可動性が回復すると、仙腸関節を介した運動連鎖が正常化し、深層筋群の協調的な動きが再び活性化した。固有受容器からの正確な情報が脊髄および小脳へ伝わることで、姿勢制御反射が再構築され、歩行時の安定性が高まった。

また、副交感神経系の働きが回復することで末梢血流が改善し、筋組織の酸素化が進んだ結果、痛みを生み出していた慢性炎症反応が鎮静化したと考えられる。こうして神経の伝達・筋の調和・血流の循環という生命活動の三要素が整い、身体全体が再び「治る方向」へと動き出した。

人間の身体は、正しい神経の流れが確保されれば、自ら修復し、回復へと向かう力を持っている。今回の症例では、神経伝達の正常化が脳幹から大脳皮質に至る運動制御ネットワークを再び活性化させ、失われていた身体のリズムが戻っていった。

痛みを避けるために抑制されていた神経経路が再び開放され、歩行時の安定と筋出力の回復へとつながったことは、その明確な証拠である。

当初は杖を手放すことも困難であったが、アジャストメントを重ねるごとに身体が柔軟性を取り戻し、日常動作に対する恐怖心も消えていった。やがて自分の足で歩き、国内旅行に出かけられるまでに回復したことは、神経系が統合的に機能し始めた証であり、身体そのものが「治るチカラ」を完全に取り戻した瞬間であった。

人間の身体は外から治されるものではなく、内に備わった生命の法則によって自らを再生させる。この症例は、サブラクセーションを取り除くことで神経機能が回復し、心身が本来の秩序を取り戻す過程を明確に示したものであり、生命力の偉大さを再確認させる象徴的なケースであった。
慢性的な腰痛でコルセットを巻いても歩けなくなった
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前田 一真

執筆者前田 一真

神奈川県藤沢市出身。1972年に塩川満章D.C.が開院した銀座の塩川カイロプラクティックに内弟子として入る。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。また日本で最も歴史あるカイロプラクティック学校シオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。2023年5月に地元である藤沢の地で、カイロプラクティックの最前線である塩川カイロプラクティックで学んだ本物のカイロプラクティックを提供する院を実現するため、【前田カイロプラクティック藤沢院】を開院。

笑顔溢れ、心豊かに、幸せな毎日をサポートできるようにカイロプラクターとして尽力している。またシオカワグループの一員として、感謝・感動・希望に溢れる社会を目指している。

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